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ヴァーゼライン移住の薦め

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ヴァーゼライン移住のススメ


ヴァーゼライン―それは我々TRPGプレイヤーが憧れて止むことの無い、中世ヨーロッパ的な世界である。そこには剣に生きる騎士が居り、それを語る吟遊詩人が居り、権力者に一泡吹かせる無法者がおり、彼らに憧れる姫君がいる。彼らは言うなれば英雄譚の登場人物である。しかし、このヴァーゼラインに住んでいるのは彼らのような派手派手しい者だけではない。むしろ、その他大勢として物語に語られることのない様な者達こそがその住人の大半なのである。その大半を語り、ヴァーゼラインの世界が幻想的なそれではなく、人々の呼吸の音さえ聞こえてきそうな肉感的なものに感じていただければ幸いである。


第一章 都市での生活

 あなたはようやく市門を抜けて、真新しい石壁に囲まれた都市の中に入った。マグノリア帝国とべリア王国の国境付近に新たに作られた都市レンブルク、それが今あなたがいる都市だ。この都市はマグノリア帝国がベリア王国との前線に築いたばかりの真新しい都市で、人々を呼び集めるために税金が非常に安くなっており、さらに、定住を希望するものいには土地が無料で与えられている。前線である以上戦争の危険が伴うが、それでもあなたはここに住むと決めたのである。
 あなたは巨大な鉄の扉―精霊騎士用のものだ―を横目に市門を抜け、騎士の道―精霊騎士が格納庫から門に至るための大きな一本道―を横切り、中央広場へと向かった。すでに中央広場にはそれに面して市参事会の会館や中央協会が重々しいその姿を見せている。広場自体に目を向ければ野菜や魚などを並べて商売をしている人々が見受けられ、それを求める多くの人々で賑わっている。
あなたは教会で旅の無事を感謝し幾ばくかの喜捨を収めると、その足で市参事会会館へ向かい定住の手続きを済ませた。さあ、新しい生活の始まりだ。

第一節 職業案内

 都市で生活するには、なによりも先立つものが必要である。そのためには、何らかの職に就かなければならないのは当然のことである。ここでは、都市に見られる職業を紹介していこう。

  • 職人
 都市で最も多いのが職人である。彼らは自分たちの技術を糧として収入を得ている。その技術は徒弟制度によって次代に受け継がれていく。
 職人になるには、まず、どこかの親方に師事する必要がある。古くからある都市などではきちんとした身分の人物-例えば他の親方など―の紹介状が必要であるが、新しくできたばかりのこの都市では居ついたばかりの親方が徒弟を探していたりするので、紹介状など無くとも熱意と誠意さえ見せられれば、徒弟になれる機会もあるだろう。
 職人と一口に言ってもその内訳は多種多様であるが、概して言えば何かを作って糧を得る人々の総称であり、都市に住む農民もこの中に含まれる。

  • 商人
 商人は大別して2つに分けることができる。1つは遠隔地商人と呼ばれる。他の都市との交易を行う商人であり、もう一つは職人から買い上げた商品をその土地で売る小売商人である。どちらにもいえることは、一般的に職人よりも裕福であることである。そのため、都市の中で権力を持つことが多い。いわゆる都市貴族は聖職者と騎士や貴族、そして商人によって構成されており、市政には職人は関われないことがほとんどなのである。
 商人になるには元手となるまとまった財産が必要である。商品の購入資金もそうであるが、むしろ、ギルド加入にあたって様々な出費が必要だからである。

  • 聖職者
 聖職者は大別して2つに分けることができる。腹黒い聖職者とそうでない聖職者である。どちらもなり方はさほど変わらない。修道院に入るなり、大学に入り神学を学べばよいのである。修道院に入った場合は底辺から、大学からならば最初から司祭として聖職者の道を歩むことになる。どちらにしても、それなりの金銭は必要であるが、聖職者になれば社会的信用度を得られ高い地位を目指せる。平民にとっては数少ない出世の方法といえる。

  • 錬金術師
 大学を卒業しさらに院を通過したものだけがなれるエリート中のエリート、それが錬金術師である。錬金術師は教会の外部組織である錬金術師ギルドに加入しそこで魔法について研究することになる。その過程においてポーションを作成したりもする。これらの技術は教会が独占しており、それに触れるための唯一の方法が錬金術師になることである。高い地位と高い俸給、そして何よりも魔法の秘儀に触れられるという特権を求めて数多くのものが大学の門を叩くが、錬金術師になれるものはそのうちのほんの一握りだけである。
 良いこと尽くしに見える錬金術師ではあるが、そこには短所もある。一度錬金術師ギルドに籍を置いたものは脱退されることを許されず、死ぬまで教会によって管理され続けるのである。


  • 整備士
 大学をでたものの院まではいけなかったものたちにも、教会はその秘儀を知るための門戸を開いている。それが整備士である。整備士は錬金術師と同じく教会の秘儀に触れるものであるが、その中身が異なっている。彼らが使うのは精霊騎士に関する秘儀である。精霊騎士の整備に必要な技能を学ぶことができるのである。それは一般の人間からすれば魔法にしか見えない技術もあるが、整備士と金床に住むドワーフだけはそれが科学的な技術であることを知っているのだ。
 彼らは錬金術師が錬金術師ギルドに管理されるように、整備士ギルドに加入し管理される。整備士ギルドは各国にその支部を置いており、各国の精霊騎士を整備している。このため、整備士ギルドは権力者との結びつきが強く教会本部から離れれば離れるほど強い権力を持っているが、彼らもその死まで教会に管理されることに変わりは無い。
 ここの都市は前線にあるため、当然整備士ギルドの支部が存在している。

  • 乞食
 生きていくための糧を得るための行為を労働と呼び、その方法を職業と呼ぶならば乞食もまた職業の一つである。彼らは教会の付近に居り、祈りを捧げるものが来ると服や食料、あるいは金銭を請う。教会の教えにおいて貧者の救済は天国へ行くための美徳であり、富裕な人々は彼らに物を与えることによって死後の救済を得ようとする。
 普段はそうではないが、戦時になると乞食も登録制となることがある。これは他国のスパイなどが入り込まないための措置であり、前線の都市であるこの都市では常に乞食は登録制である。

第二節 都市巡り

 割り当てられた土地に簡素な小屋を建てたあなたは、この都市に来るときにもって来ていた食料も底をつきかけたこともあって、食料の買出しをするついでにこれから暮らす都市の中を探索することにした。教会の場所、中央広場、職人街。都市で生活するのに知っておかなければならない場所はいくつもあるものだ。さてまず向かうのは・・・

  • 中央広場
 都市にはいくつもの広場が存在し、そこは様々なものを売り買いする人々で賑わっている。それらの広場の中でも都市の中で最も大きなもの、それが中央広場である。最も大きいと言っても、大きな都市になれば複数存在することもある。そこでは定期的に市が開かれており、その度に近隣の農民や遠隔地商人の露店が立ち並び商品を買い求める人々で賑わうことになる。
中央広場が賑わうのは市が立つときともう一つある。それは罪人の処刑が行われるときである。罪人の処刑を見るのは数少ない娯楽の一つであり、人々はこぞってこれを見物に来る。罪人の処刑は中央広場で行われるのが一般的であり、そのため中央広場には処刑用の絞首台が置かれている。この都市も例外ではなく、新品の絞首台が置かれている。
 この都市には中央広場が西と北に一つずつあるが、西の広場には市参事会の建物が、北の広場には中央教会がそれぞれ隣接されているため、西の広場は「市参事会広場」と「呼ばれ、北の広場は「教会広場」と呼ばれている。

  • 職人街
 職人街といっても、あらゆる職人が一箇所に軒を連ねているわけではない。およそ職人たちは、自分たちの作るものによって分かれている。これは都市の政策として側面を持っているが、むしろ職人たちの都合によるもののほうが先に来ている。職人たちはたいていの場合、その作業に何らかの材料を必要としている。例えばパン職人であれば麦が必要だし、刃物鍛冶なら鉄が必要である。そのため、それらを売っている市場の付近に集まることとなったのである。麦市場の近くにはパン職人が、鉄市場の近くには刃物鍛冶が住むのである。
 職人達は親方の家の一階にある作業場で様々なものを作っている。作ったものは自分の家で直接客に売ったり、あるいは小売商人に売ったりしている。小売商人たちはこれを広場で売るのである。

  • 教区教会
 都市の内部は「教区」という単位で区切られている。1つの教区には必ず1つの教会がある。この教会は教区教会と呼ばれ、その教区に属している人々の冠婚葬祭を取り仕切り、また、その教区の人々のための共同浴場を管理している。また、10教区に1つの割合で施療院の付属した教区教会があり、これは教区教会の中でも特別に施療教会と呼ばれている。これらの教区教会は司祭が管理しており中央教会が統括している。
 1つの教区にはおよそ40世帯200人の人々が住んでいる。この都市にはおよそ1万人ほどの住人がいるので、50個ほどの教区教会がある。

  • 市参事会
 市参事会とは都市を動かす現代で言うところの市議会のようなもので、その構成員には騎士や聖職者、豪商がみられる。その権力の強さは都市ごとに異なるが、この都市は前線に新たに作られた都市であるため領主の下部組織に過ぎない。裁判権や徴税権などのあらゆる権利は領主が保有しており、市参事会はその実行組織でしかないのである。
 現在、移民を募っているこの都市では、市参事会に定住の意思を伝えれば一定の大きさの土地を与えられる。さらに定住したものは1年間の免税が認められている。
 市参事会は西の中央広場に面した土地に居を構えている。


  • 中央教会
 この都市の教区教会を統括する教会、それが中央教会である。本来、中央教会は領主と同等かそれ以上の権力を持っているものであるが、しかし、この都市は教会と不仲なマグノリアの都市であり、一般的な中央教会に比べてその権力は弱いものとなっている。とはいえ、全ての教区教会を統括していることには替わりは無く、その責任者たる司教は領主に次ぐ権力を持っているといえる。
 中央教会では錬金術師ギルドの製作したポーションを買うことができたり、彩術による治療を受けたりできる。

 この都市の領主であるブルーノ・マンシュタインの住む城。堅固な石造りで、天然の川と人口の堀の囲まれた平地城である。都市の北西にあり、西側に作られた精霊騎士格納庫と橋で繋がっている。

  • 市門
 都市の北と西、そして南に1つずつある。このうち南と北には「騎士の門」と呼ばれる精霊騎士のための鉄製の大きな門がすぐ脇にある。この「騎士の門」は基本的に普段は開かれず、精霊騎士が通過するときのみ開かれる。
 市門では通行税や通商税が徴収される。この税はレンブルクの都市民とレンブルク周辺の農民からは徴収されず、もっぱら遠隔地商人や遍歴職人などの遠くからの訪問者から徴収される。
 市門で税を徴収するのは専門の人間が雇われるか、住人の持ち回りである。この都市では専門の人間が雇われている。この税徴収係とは他に市門にいる者たちがいる。教会の聖遺物管理局員である。彼らは市門を通過する人々が聖遺物を持っていないかどうか確認するために市門にいる。確認作業は怪しいと思われた人物を市門の脇に作られた小屋につれていく、という形で行われる。通過する人々全てを調べるのは仕事量的に不可能なのである。

第三節 都市法

 都市で生活するものが守らなければならない規則、それが都市法である。現代の様に広い地域に均等な情報を与えうるメディアの無いヴァーゼラインではあるが、その都市法は個々の都市・国家の間でそれほどの違いは無い。何故ならば、ヴァーゼラインの都市法は教会法を真似たもの、あるいはそのまま引用したものだからである。そうすることが教会の機嫌を損ねない最良の方法だと、一般的な為政者たちは考えているからである。
 都市法は非常に細々したものである。とてもではないが、それら全てを語りつくすことは出来ない。ここで触れるのはあくまでも都市法の大まかな方向性と、重要な項目についてのみである。

  • 聖遺物関連法
 聖遺物に関する法は単純明快なものである。
1、 教会の許可を得ないものは、何人たりとも聖遺物を所持してはならない。
2、 教会の許可を得ないものは、何人たりとも聖遺物を使用してはならない。
3、 聖遺物らしきものを発見したものは、必ず教会にその旨を報告しなければならない。
以上3つである。

  • 慣習法
 いわゆる常識というやつである。人を傷つけたり殺してはいけないとか、盗みはしてはいけないとか、市門を通らずに市壁を越えてはいけないとか、都市の規律を守るための法。

  • 罪と罰
以下のような刑罰が行われる。刑罰は重い順に書かれている。
死刑
 絞首刑、斬首刑、車轢きの刑など。斬首刑は貴族や騎士などの名誉ある地位にあるものにのみ行われる。死刑に限らず、刑罰全般にわたって神明裁判的性格を持っており、絞首刑を実行したところ縄が切れて助かったなどの場合、その罪は許されてしまう。犯罪者は縄職人とは懇意にしておくべきなのである。

肉体切断
 指から始まり、腕や足を切断してしまうという非常に恐ろしい刑罰である。盗みの常習犯の腕を切り落とすなど、起こした犯罪にかかわる部位を切断するのが一般的である。

鞭打ち
 呼んで字の如し、鞭で打つのである。罪の重さによって回数が増減される。一般的に女性は回数が減らされる。妊婦はさらに軽減される。

追放
 都市から追放する。都市の外はモンスターと犯罪者、さらに自然の驚異にさらされていることを考えれば、この刑は実に恐ろしいものであろう。

投獄
 牢獄に数ヶ月~数年入れる。現代のような数十年はめったに無い。それほどの罪であれば、もっと重い刑が科せられることになる。
 この刑の最も恐ろしいことは、牢獄がとんでもなく不潔であるということである。屈強な肉体を持ったものでも、投獄されたことで衰弱死や病死してしまうことは多い。

刺青
 犯罪者である印の刺青を額や頬などにほどこされる。

名誉剥奪
 名誉ある市民としての地位を剥奪され、いわゆる賤民になる。賤民は名誉ある市民とはっきり区別され、基本的に席を同じくすることを許されない。職業も皮剥ぎ職人や汚物の汲み取り人などに限定されてしまう。
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