佐藤まさたか市議ブログ名誉毀損裁判控訴審判決(東京高裁)


平成23年12月21日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官
平成23年(ネ)第5361号 損害賠償等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所立川支部平成21年(ワ)第3074号)
口頭弁論終結日 平成23年10月3日

判決

控訴人 矢野穂積/朝木直子
上記2名訴訟代理人弁護士 中田光一知/福間智人
被控訴人 佐藤真和
上記訴訟代理人弁護士 佐竹俊之

主文
控訴人らの控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

〔中略〕

第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。
 その理由は、後記2を加えるほかは、原判決の「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」の1項ないし3項に記載のとおりであるから、これを引用する。
2(1) 控訴人らは、争点(1)について、プロバイダ責任制限法2条3号にいう「特定電気通信役務者」は、「特定電気通信設備」を所有する必要はないが、設置する必要があり、被控訴人は「特定電気通信設備」を設置していないから「特定電気通信役務提供者」に該当しないと主張する。
 そこで判断するに、特定電気通信役務提供者とは、特定電気通信設備を他人の通信の用に使用させている者をいうものと解されるところ、控訴人のいうプロバイダ責任制限法2条3号の解釈は独自の見解によるものであり、これを採用することはできない。したがって、被控訴人は特定電気通信役務提供者に当たり、本件についてはプロバイダ責任制限法が適用されることになる。
(2)控訴人らは、争点(3)について、被控訴人が本件各書き込みを削除せずに放置していた行為は、プロバイダ責任制限法3条1項1号又は2号の要件を充足し、損害賠償責任がある旨主張する。
 そこで判断するに、本件各書き込みには、控訴人らについて「共依存」、「境界性人格障害」、「攻撃性人格障害」、「パワーゲーム」、「病気」及び「サイコパス」という指摘があるが、原判決30頁26行目ないし35頁8行目の事実に照らせば、〔1〕上記各指摘が真実でなく、又は投稿者がこれを信じるについて相当の理由がないことを被控訴人が知っていた事実(プロバイダ責任制限法3条1項1号)、〔2〕被控訴人がこれを知ることができたと認めるに足りる相当の理由がある事実(同2号)を認めることはできない。したがって、本件においては、プロバイダ責任制限法3条1項1号又は2号に該当する余地はなく、控訴人らの上記主張は失当である。
(3)控訴人らは、原判決が、本件各書き込みは事実摘示であるか論評であるかを判断していないこと、これに伴って真実性及び相当性の判断等をしていないことは誤りであると主張する。
 そこで判断するに、プロバイダ責任制限法は不法行為に係る民法の特別法であるところ、原判決は、まず本件についてプロバイダ責任制限法が適用されるか否かを判断し(争点(1)ア、イ)、同法が適用されると判断した上で、次に同法3条1項1号又は2号の要件の充足の有無(争点(3))につき要件は充足されていないと判断して、控訴人らの請求はいずれも認められないと結論付けている。このような判断過程は、プロバイダ責任制限法が民法の特別法であるという法的位置付けの観点からして、必要かつ十分というべきである。したがって、プロバイダ責任制限法3条1項の要件を充足しなかった以上、本件においては、民法に基づく不法行為の要件について判断する必要はないから、控訴人の主張は、その前提を欠くものとして失当というほかない。
(4)控訴人らは、当審において上記(1)ないし(3)以外にも縷々主張するが、いずれも独自の見解であって、認めることはできない。
3 結論
 以上によれば、控訴人らの請求は、いずれも理由がないから棄却すべきであり、これと同旨の原判決は相当である。
 よって、控訴人らの控訴はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第22民事部
裁判長裁判官 加藤新太郎
裁判官 加藤美枝子
裁判官 長谷川浩二



2011年12月23日:ページ作成。
最終更新:2011年12月23日 21:21