「越境通勤市議」問題:名誉毀損裁判訴状

訴状

平成20年6月4日

東京地方裁判所八王子支部民事部 御中

原  告   佐 藤 真 和
被  告   矢 野 穂 積   
被  告   朝 木 直 子
被  告   特定非営利活動法人多摩レイクサイドFM 代表者 理事長

損害賠償等請求事件
訴訟物の価額   1020万円
貼用印紙額   5万3000円

請 求 の 趣 旨

1 被告矢野穂積及び被告朝木直子は原告に対し、連帯して金800万円及び平成18年9月26日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告特定非営利活動法人多摩レイクサイドFM及び被告矢野穂積は原告に対し、連帯して金200万円及び平成18年12月6日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告矢野穂積及び被告朝木直子は原告に対し、インターネットホームページ「東村山市民新聞」トップページにおいて、別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の条件にて1週間掲示せよ。
4 被告特定非営利活動法人多摩レイクサイドFM及び被告矢野穂積は、原告に対し、別紙3記載の謝罪広告を別紙4記載の条件にて3日間放送せよ。
5 訴訟費用は被告らの負担とする。
 との判決及び上記第1項ないし第2項について仮執行宣言を求める。

請 求 の 原 因

第1 当事者
1 原告
  原告は平成15年1月17日、自らの家庭の事情と職務上の必要性から、東村山市内に単身転居した。その後、保育所関係者などの市民から推挙され、同年4月27日に執行された東村山市議会議員選挙に立候補し当選、平成19年4月22日に執行された東村山市議会議員選挙に再び立候補し2回目の当選をし、現在、東村山市議会において一人会派「希望の空」の市議会議員として活動している者である。
2 被告矢野穂積
  被告矢野穂積(以下、「被告矢野」という)は、議会内会派「草の根市民クラブ」(被告矢野及び被告朝木直子の2名で構成。以下、両名を「両被告」といい、被告朝木直子を「被告朝木」という)に所属する現職の東村山市議会議員であり、両被告の政治宣伝紙「東村山市民新聞」及びインターネット版「東村山市民新聞」の発行人である。
  なお、上記「東村山市民新聞」は東村山市内や東村山市役所内で配布されるなど不特定多数に配布されており、インターネット版「東村山市民新聞」には不特定多数がアクセスできる。
3 被告朝木直子
  被告朝木は議会内会派「草の根市民クラブ」に所属する現職の東村山市議会議員であり、上記紙版「東村山市民新聞」及びインターネット版「東村山市民新聞」の編集人である。
4 被告特定非営利活動法人多摩レイクサイドFM
  被告特定非営利活動法人多摩レイクサイドFM(旧称「特定非営利活動法人ひがしむらやまFM」・理事長岡部透=以下、「被告FM」という)は、平成16年6月に総務大臣から無線局免許を付与された不特定多数が聴取できるコミュニティFM放送局であり、東村山市を中心に周辺8市を放送エリアとしている。
  なお、被告矢野は被告FMの監事であるとともに番組「ニュースワイド多摩」のパーソナリティを務めており、被告朝木は被告FMの事務局長兼番組制作部長である。

第2 本件提訴に至る事情
1 被告らは平成19年4月22日に執行された市議会議員選挙の約半年前である平成18年9月以降、ビラや放送によって原告について突然、〈公選法違反〉〈詐欺登録罪の疑惑〉などのネガティブキャンペーンを開始した。そして矢野、朝木両被告は選挙執行直後、東村山市選挙管理委員会(以下、「市選管」という)に対して「原告は東村山市内に生活実態がなく原告の当選は無効である」との異議を申し立てた。同年7月に市選管がこれを棄却したところ、両被告は東京都選挙管理委員会(以下、「都選管」という)に同様の異議を申し立てたが、都選管も同年10月にこれを棄却。両被告はこの裁決を不服として同年11月、都選管を相手取り裁決取消を求めて東京高等裁判所に提訴した。しかし平成20年4月30日、東京高裁は都選管の主張を容れ、「原告の生活の本拠は一貫して東村山市内にある」と判断し、両被告の異議申立を棄却した都選管の裁決は正当であると認定する判決を言い渡した。
2 原告の妻と2人の娘は日野市内で生活し、原告とは所謂別居という形態にあるが、原告は現在でも必要に応じ不定期(週に2日程度)に妻子のもとへ出向くことがある。この事実については、平成15年4月の初当選以来、原告の周辺のみならず多くの同僚議員や議会事務局職員も承知していたものであるし、議会においても何ら問題とされたことはない。
3 被告朝木及び訴外石田敏雄が原告の妻子が住む日野市内のマンションと原告が住む東村山市内の自宅の2箇所に対し深夜・早朝に及ぶ張り込みを行なっていることに原告が気づいたのは、平成18年9月25日午後9時頃、妻が骨折したために食事の支度に日野へ戻った原告の前に、訴外石田が突然現れたことによる。この直後から、被告らは〈前代未聞の「越境市議」!! 佐藤市議、日野市内で生活〉〈公選法違反・詐欺登録罪の疑惑〉と記載したビラを多数、東村山市内のみならず原告の妻子が住む日野市内のマンション周辺にも数回配布した。この結果、原告の妻子は被告朝木らのストーカーまがいの行動に怯え、また原告は「犯罪者の市議」のレッテルを貼られたあげく、選挙管理委員会から事情聴取を受けるなど、本来なら全く必要のないエネルギーと時間を浪費させられるなど不本意な議員活動を送ることを余儀なくされた。
4 さらに両被告は、異議申立に対する審議や裁判の途中においても、ビラ(東村山市民新聞)、インターネットホームページ、FMラジオを使い「原告が公選法の詐欺登録罪・詐欺投票罪を犯した」との虚偽事実の宣伝を執拗に続けたのみならず、平成20年4月30日の高裁判決後も、判決を無視し、両被告が運営するインターネット上のホームページ「東村山市民新聞」で「原告が公選法の詐欺登録罪・詐欺投票罪を犯した」との記事を掲載し続けている。

第3 不法行為
1 紙版「東村山市民新聞」による名誉毀損
 (1)両被告は両被告の政治宣伝ビラ「東村山市民新聞」第147号(平成18年9月26日付)~同第160号(平成20年4月15日付)(第151号を除く=別表1~13=甲1~甲13)において、原告について、
  〈前代未聞の「越境市議」!! 佐藤市議、日野市内で生活〉
  〈公選法違反・詐欺登録罪の疑惑〉
  などとの見出しのもと(第154号は本文のみ)、
  〈長期間、調査を続けていた、清瀬市民オンブズマンと東村山市民オンブズマンは、佐藤まさたか「市議」に、公選法違反・詐欺登録罪(236条)の疑いが強いとして事実の公表に踏み切った。〉(第147号=別表1=甲1)
  〈市議会議員は、その市に生活していないと立候補することができない。この公選法の規定は誰でも知っている常識だが、佐藤真和・東村山市議に公選法違反の疑惑が発覚した。〉(第148号=別表2=甲2)
  〈野口町の保育所「空飛ぶ三輪車」の職員で日野市から通勤している佐藤真和「市議」は、……03年4月の市議選公示ぴったり3ヶ月前の1月、日野市から保育所隣のワンルームに住民登録だけは移した。〉(第149号=別表3=甲3)
  〈日野の3LDKで平然と家族4人で暮らしていましたが、ばれた後は、野口町のワンルームで暮らしているかのような偽装までして、逃げ隠れの生活です。〉(第152号=甲5)
  などとする記事を掲載した(別表1~13には、表現は異なるが同趣旨の文言が並んでいる=以下、紙版「東村山市民新聞」の記載を「本件各記事」という)
 (2)公職選挙法9条2項、10条1項5号、2項によれば、市町村議会の議員の選挙権及び被選挙権は、選挙の期日を基準として、引き続き3ヶ月以上その市町村の区域内に住所を有するもので一定の年齢以上の者がこれを取得すると規定しており、同法99条は「当選人は、その選挙の期日後において被選挙権を有しなくなったときは、当選を失う。」と定めている。したがって、本件各記事にある〈前代未聞の「越境市議」!! 佐藤市議、日野市内で生活〉〈公選法違反・詐欺登録罪の疑惑〉の見出しは、原告が〈日野市内で生活〉と断定することによって「原告は東村山市内に住んでいない=住所を有しない」(「越境市議」も同趣旨)から公選法9条が規定する地方議会議員の要件を欠く存在であると断定するものであるのみならず、〈詐欺登録罪〉の見出しと合わせ読めば、一般読者が上記見出しから「原告が東村山市に居住実体がないことを自覚していながらその事実を隠してあたかも東村山市に居住実体があるかのように偽装し、違法に東村山市議の地位を得た」との意味に理解することは明らかである。
 (3)さらに、
  〈長期間、調査を続けていた、清瀬市民オンブズマンと東村山市民オンブズマンは、佐藤まさたか「市議」に、公選法違反・詐欺登録罪(236条)の疑いが強いとして事実の公表に踏み切った。〉(147号=別表1)
  とする記載は原告に〈公選法違反・詐欺登録罪の疑惑〉があるかのように強調するものであり、また、
  〈市議会議員は、その市に生活していないと立候補することができない。この公選法の規定は誰でも知っている常識だが、佐藤真和・東村山市議に公選法違反の疑惑が発覚した。〉(第148号=別表2)
  〈野口町の保育所「空飛ぶ三輪車」の職員で日野市から通勤している佐藤真和「市議」は、……03年4月の市議選公示ぴったり3ヶ月前の1月、日野市から保育所隣のワンルームに住民登録だけは移した。〉(第149号=別表3)
  〈日野の3LDKで平然と家族4人で暮らしていましたが、ばれた後は、野口町のワンルームで暮らしているかのような偽装までして、逃げ隠れの生活です。〉(第152号 =別表5)
  など別表1~13の本件各記事は、上記(1)の〈前代未聞の「越境市議」!! 佐藤市議、日野市内で生活〉〈公選法違反・詐欺登録罪の疑惑〉との見出しの趣旨を読者に対して具体的に提示するものである。
 (4)よって本件各記事はいずれもそれぞれ、原告が公選法9条が規定する地方議会議員の要件を欠く存在であるのみならず、原告が東村山市に居住実体がないことを自覚していながらその事実を隠してあたかも東村山市に居住実体があるかのように偽装しているとの虚偽の事実を摘示し、一般読者に対して原告が違法に東村山市議の地位を得ているかのような印象を与えるものであり、原告の東村山市議としての社会的評価及び信用を著しく低下させたものである。 
2 インターネット「東村山市民新聞」による名誉毀損
 (1)両被告は平成19年2月22日、23日の両日、インターネット版「東村山市民新聞」トップページに、
  〈佐藤まさたか「越境通勤市議!!」〉
と掲示した上、
  〈地方自治など知るもんか! 前代未聞の「越境通勤市議」〉
  〈ついに発覚した公選法違反詐欺登録・詐欺投票疑惑!〉
との見出しのもと、
  〈佐藤「市議」が、公選法236条(詐欺登録罪)に違反している問題でその後、新展開があった。〉
と前置きし、
  〈この事件を長期に渡って追及している清瀬と東村山の市民オンブズマンが10月27日午前8時40分ころ、日野市多摩平の佐藤「市議」が家族4人で暮らすファミリーマンション付近で調査していたところ、佐藤「市議」は、自宅ドアを開けるや、駐車場まで、足をもつれさせながら全力疾走し、自分の車に駆け込んで、あっという間に姿を消した。
  つまり、自分がこの3LDKのマンションに家族と生活し、朝「出勤」する姿は、見られたくない、という公選法違反を自覚した行動だからだ。〉
  〈形だけ住民票を移して3ヶ月たったから、選挙権・被選挙権が行使できるわけではない。移した先で生活していなければダメなのだ。〉
  などと記載し、さらに〈青森でも実例があるが、これほど破廉恥ではなかった!〉と記載した(以下、平成19年2月22日付記事を「本件インターネット記事1」、同2月23日付記事を「本件インターネット記事2」という=別表14、15=甲14、甲15)。
 (2)さらに両被告は上記記載に加えて平成19年2月23日、
  〈ついに、自分で認めた公選法違反詐欺登録、詐欺投票の事実!〉
との見出しのもと、
  〈長期間、調査を続けていた、清瀬市民オンブズマンと東村山市民オンブズマンは、佐藤まさたか「市議」に、公選法違反・詐欺登録・詐欺投票罪(236条237条)の疑いが強いとして事実の公表に踏み切った。〉
  などと記載した(別表15=甲15)。
 (3)公職選挙法9条2項、10条1項5号、2項によれば、市町村議会の議員の選挙権及び被選挙権は、選挙の期日を基準として、引き続き3ヶ月以上その市町村の区域内に住所を有するもので一定の年齢以上の者がこれを取得すると規定しており、同法99条は「当選人は、その選挙の期日後において被選挙権を有しなくなったときは、当選を失う。」と定めている。したがって、本件インターネット記事1、2の〈佐藤まさたか「越境通勤市議!!」〉〈地方自治など知るもんか! 前代未聞の「越境通勤市議」〉〈ついに発覚した公選法違反詐欺登録・詐欺投票疑惑!〉との見出しは、「原告は東村山市内に居住の実体がないことを自覚しており、また東村山市内に居住の実体がなければ立候補できないことを知りながら、その事実を隠して立候補した上、現在も東村山市内に居住の実体がない」と主張するものであり、一般読者に対し「原告が東村山市議の資格を有しない違法な存在である」と印象づけるものである。
 (4)また本件インターネット記事1、2は、本文において〈公選法違反を自覚した行動〉〈形だけ住民票を移して3ヶ月たったから、選挙権・被選挙権が行使できるわけではない。移した先で生活していなければダメなのだ。〉と、あたかも原告が、原告の住所が東村山にはないことを自覚しているかのように記載し、本件インターネット記事2において〈ついに、自分で認めた公選法違反詐欺登録、詐欺投票の事実!〉〈長期間、調査を続けていた、清瀬市民オンブズマンと東村山市民オンブズマンは、佐藤まさたか「市議」に、公選法違反・詐欺登録・詐欺投票罪(236条237条)の疑いが強いとして事実の公表に踏み切った。〉と付け加えることによって、読者に対し両被告の調査及び主張に信頼性と正当性があるかのように印象づけている。
 (5)さらに本件インターネット記事2は、青森で起きた住所をめぐる公選法違反の実例を挙げつつ〈これほど破廉恥ではありません〉(青森の例は佐藤市議ほどには破廉恥ではないとの趣旨)などと記載し、実際に公選法違反に問われた例よりも原告の方が悪質であると断定した上、あたかも原告が公選法違反の事実を認めたかのように記載している。
 (6)よって本件インターネット記事1、2はそれぞれ、原告が東村山市に居住実体がないにもかかわらず違法に立候補した上、現在も東村山市内に居住の実体がないにもかかわらず違法に東村山市議として活動しているとの虚偽の事実を摘示し、一般読者に対し原告が違法な存在であるかのような印象を与えるものであり、原告の東村山市議としての社会的評価及び信用を著しく低下させるものである。
 (7)なお、本件インターネット記事2は平成19年2月23日以降、現在に至ってもなお両被告のホームページ上に掲示されており、現在もなお原告の名誉を毀損し続けているものである(甲23)。
3 FM放送「多摩レイクサイドFM」による名誉毀損
 (1)被告FM及び被告矢野は平成18年12月6日から同年12月21日にかけて、被告矢野がパーソナリティを務める番組「ニュースワイド多摩」において、原告について、
  〈公選法違反、詐欺登録罪などの容疑が深まっている問題の佐藤真和市議〉
   と紹介し、また続くニュースで原告について、
  〈公選法違反、詐欺登録、詐欺投票罪の容疑が深まっている佐藤真和市議が、関係者に対して自分の犯罪容疑を事実上認める発言をしていたことがわかりました。〉
  〈佐藤市議は東村山市内で生活していなければ、公選法違反となることを知りながら、日野市内に生活したまま東村山市議会議員の選挙に立候補したことがわかりました。〉
  〈公選法違反、詐欺登録、詐欺投票罪で問題となっている佐藤真和市議〉
   などと放送した(別表16、17、19、21、22=甲16、17、18、19、21、22)。
 (2)さらに上記放送に対して被告矢野は原告について、
  〈佐藤真和市議が、公選法違反となることを知りながらですね、……東村山市からですね、の市議会議員に立候補したという、まさに公選法違反そのものにあたると思います〉
  〈早く辞職することを潔い態度をとることをおすすめしたいと思います。〉(以上、別表16=甲16)
  〈この佐藤真和さん、まあ、東村山の市議会議員ということになってるんですが、えー、今もってですねえ、……逃げ隠れする生活を今もって続けてるんですねえ。〉
  〈カッコだけは東村山に生活しているフリをしなきゃいけませんから、えー、逃げ隠れする生活なんですけれども〉
  〈問題になっている公選法違反の、236条、237条の詐欺登録、詐欺投票罪の、こういうことについてもですねえ、まったく説明責任を果たしてませんよね。〉
  〈こういう無責任な人がですねえ、えー、選挙でえー、当選しました、えー、こうやるべきだ、東村山の町づくりはおかしいとかですねえ、そんなよけいなことをいう前に自分の頭のハエを追わなきゃいけませんよね。というような意味で無責任きわまりないなということだけは言っておきたいと思います。〉(以上、別表17=甲17) 
  〈議員の場合には、その自治体の、おー、区域内に、えー、住所を持って、住所を持ってるだけじゃだめで、えー、住民票を、住民登録をするだけじゃなくて、そこで生活をしているっていうことが最低の条件になります。だからこれが、満たされてないとですねえ、間違って当選してもですねえ、これは失格になりますから、えー、公選法の236条、237条、236条というのは詐欺登録罪、それから237条というのは詐欺投票罪ということになります〉
  〈佐藤真和市議はですね、いさぎよく、うー、この東村山での政治活動を、おー、もう辞めてですね、辞職をされて、いさぎよくですね、日野にお帰りになって、家族4人でですね、静かに平和な暮らしを送っていただきたいと思いますね。〉(以上、別表19=甲19)
  〈この佐藤真和さんという人の問題ですが、えー、公選法の236条詐欺登録罪、住民投票を、嘘をいって登録した、住民登録、住民票を移した。それから237条というのは、えー、その選挙権が本来ないのにですねえ、えー、投票をしたということで、詐欺投票罪ということが決められているんですが、えーっと、この佐藤真和さん、これまー、事実上認めているということが、ま、次々に明るみになっているんですが、〉
  〈佐藤真和市議が立候補したとき、問題のですね、住民登録を偽ってしたんじゃないかという疑惑が深まってるわけですが、〉(別表21=甲21)
  〈問題の佐藤真和市議はですねえ、公選法違反という、うー、詐欺登録罪、詐欺投票罪ということで、えー、容疑があるというふうに、えー、お伝えしてるんですが、〉
  〈行政境、いー、市と市の境を越えて、えー、日野在住、日野市の在住の佐藤真和市議が出稼ぎで、えー、東村山の市議会議員をやってる〉(以上、別表22=甲21)
   などと発言した(以下、上記放送を一括して「本件各放送」という)。
 (3)また、被告FM及び被告矢野は平成18年12月14日、被告矢野がパーソナリティを務める番組「ニュースワイド多摩」において、町田市長が政治資金規正法違反に問われたことを報じたのち、続けて原告について被告矢野は、
  〈えー、東村山の、公選法違反、詐欺登録罪の、あるいは詐欺投票罪の佐藤真和市議についてもですね、同じようなことがいえると思いますので、潔い態度が必要だと思います。〉(別表20=甲20)
   と発言した。   
 (4)公職選挙法9条2項、10条1項5号、2項によれば、市町村議会の議員の選挙権及び被選挙権は、選挙の期日を基準として、引き続き3ヶ月以上その市町村の区域内に住所を有するもので一定の年齢以上の者がこれを取得すると規定しており、同法99条は「当選人は、その選挙の期日後において被選挙権を有しなくなったときは、当選を失う。」と定めている。したがって、本件各放送の〈公選法違反、詐欺登録、詐欺投票罪で問題となっている佐藤真和市議〉〈公選法違反、詐欺登録、詐欺投票罪の容疑が深まっている佐藤真和市議が、関係者に対して自分の犯罪容疑を事実上認める発言をしていたことがわかりました。〉〈佐藤市議は東村山市内で生活していなければ、公選法違反となることを知りながら、日野市内に生活したまま東村山市議会議員の選挙に立候補したことがわかりました。〉との放送部分は、「原告は東村山市内に居住の実体がないにもかかわらず立候補した上、現在も東村山市内に居住の実体がない」と主張するものであり、聴取者に対し「原告が東村山市議の資格を有しない違法な存在である」と印象付けるものである。また、上記(2)の被告矢野の発言部分は上記(1)の放送内容を具体的に述べるものであり、上記(3)の矢野の発言部分は、町田市長が政治資金規正法違反に問われたことを引き合いに出すことによって、原告もまた違法行為を犯していると聴取者に印象付けるものである。  
 (5)よって本件各放送及び上記(3)の被告矢野の発言部分はそれぞれ、原告が東村山市に居住実体がないにもかかわらず違法に立候補した上、現在も東村山市内に居住の実体がないにもかかわらず違法に東村山市議として活動しているとの虚偽の事実を摘示し、一般読者に対し原告が違法な存在であるかのような印象を与えるものであり、原告の東村山市議としての社会的評価及び信用を著しく低下させるものである。 
4 上記のとおり、被告矢野及び被告朝木はあらゆるメディアを駆使し、原告があたかも公選法違反を犯しながら、その事実を隠蔽し、立候補および市議会議員の資格がないことを知りながら平然と東村山市議として議員報酬を得ているかのような宣伝を続けてきた。しかし、原告は平成15年1月以後、一貫して東村山市に生活の本拠を置いているのであり、原告の生活の本拠が日野にあり東村山市に生活実体がないという事実は存在しない。被告らの宣伝こそ平成19年4月に迫った市議選を前に、原告の東村山市民に対する信用を意図的に低下させようとしたものであり、極めて計画的かつ悪質な信用毀損行為にほかならない。
5 実際に当該市議選に際し、原告のもとには被告らの宣伝を目にしたと思われる市民から「東村山市民でもないのにおかしい」「市民をだますつもりなのか」といった批判の声が寄せられ、きわめて厳しい選挙戦を余儀なくされた。

第4 被告らの責任
1 被告矢野及び被告朝木は、紙版「東村山市民新聞」、インターネット版「東村山市民新聞」の発行人・編集人として、上記第3の1ないし2の記事を掲載、発行した者として、原告が被った損害を賠償すべき責任がある。
2 被告特定非営利活動法人多摩レイクサイドFMは上記放送を監督する者として、また被告矢野は上記放送の直接行為者として、原告が被った損害を賠償すべき責任がある。

第5 原告の損害
1 紙版「東村山市民新聞」による名誉毀損
   被告矢野及び被告朝木が編集・発行する政治宣伝ビラ「東村山市民新聞」は東村山市内に毎号4万5000部発行されており、同ビラが平成18年9月から平成20年4月までの間に少なくとも12回にわたって東村山市内全域に配布されたことにより原告が被った損害は甚大であり、これを金銭に換算すれば金400万円を下らない。
2 インターネット版「東村山市民新聞」による名誉毀損
   被告矢野及び被告朝木は、彼らが編集・発信するインターネット版「東村山市民新聞」において、あたかも原告が公選法違反の違法行為を犯しているかのような虚偽宣伝を平成19年2月22以降現在に至るまで継続して続けてきた。それによって原告が被った損害は甚大であり、これを金銭に換算すれば金400万円を下らない。
3 多摩レイクサイドFMによる名誉毀損
   多摩レイクサイドFMの「ニュースワイド多摩」は1日に6回放送されている。したがって、被告FM及び被告矢野はあたかも原告が公選法違反の違法行為を犯しているかのような虚偽宣伝を原告が確認しただけで少なくとも42回にわたって繰り返してきたことになる。この虚偽宣伝放送によって原告が被った損害は甚大であり、これを金銭に換算すれば金200万円を下らない。

第6 結語
   よって原告は被告らに対し、民法709条、同705条1項及び同2項、同719条、同723条に基づき、請求の趣旨1項及び2項の金員の支払い並びに同3項及び4項のとおり、謝罪広告の掲載及び謝罪放送を求めるものである。

以 上

証 拠 方 法
甲第1号証     東村山市民新聞第147号
甲第2号証     東村山市民新聞第148号
甲第3号証     東村山市民新聞第149号
甲第4号証     東村山市民新聞第150号
甲第5号証     東村山市民新聞第152号
甲第6号証     東村山市民新聞第153号
甲第7号証     東村山市民新聞第154号
甲第8号証     東村山市民新聞第155号
甲第9号証     東村山市民新聞号外(平成19年3月9日付け)
甲第10号証    東村山市民新聞第157号
甲第11号証    東村山市民新聞第158号
甲第12号証    東村山市民新聞第159号
甲第13号証    東村山市民新聞第160号
甲第14号証    インターネット東村山市民新聞(平成19年2月22日付)
甲第15号証    インターネット東村山市民新聞(平成19年2月23日付)
甲第16号証    多摩レイクサイドFM反訳(平成18年12月6日放送分)
甲第17号証    多摩レイクサイドFM反訳(平成18年12月7日放送分)
甲第18号証    多摩レイクサイドFM反訳(平成18年12月12日放送分)
甲第19号証    多摩レイクサイドFM反訳(平成18年12月13日放送分)
甲第20号証    多摩レイクサイドFM反訳(平成18年12月14日放送分)
甲第21号証    多摩レイクサイドFM反訳(平成18年12月18日放送分)
甲第22号証    多摩レイクサイドFM反訳(平成18年12月21日放送分)
甲第23号証    インターネット東村山市民新聞(平成20年6月3日付)

その他必要に応じ、口頭弁論において提出する。

付 属 書 類
1 訴状副本  3通
2 証拠説明書 3通
3 甲号証   各3通

別紙1
謝 罪 広 告
 東村山市民新聞は平成18年9月以降これまで、東村山市議会議員の佐藤真和氏に対し、同氏が「越境通勤市議」で「公職選挙法違反」をしたなどとの記事を掲載してきました。
 しかし、同氏が「越境通勤市議」で「公職選挙法違反」をしたとの事実はいっさい存在せず、記事は佐藤氏の名誉を著しく傷つけるものでありました。よって佐藤氏に関する「越境通勤市議」、「公職選挙法違反」をしたなどとの部分をすべて削除するとともに、佐藤氏に対し心よりお詫び申し上げるものです。

 平成  年  月  日
            東村山市民新聞発行人  東村山市議会議員 矢野穂積
            東村山市民新聞編集人  東村山市議会議員 朝木直子

別紙2
「謝罪広告」の4文字は20ポイント、その他は14ポイントで、「東村山市民新聞」の題字の下の蘭の写真の真下に掲載すること。

別紙3
謝 罪 放 送
「ニューワイド多摩」では平成18年12月13日東村山市議会議員の佐藤真和氏に対し、同氏が「越境通勤市議」で「公職選挙法違反」をしたなどとの放送を行いました。
 しかし、同氏が「越境通勤市議」で「公職選挙法違反」をしたとの事実はいっさい存在せず、この番組での放送内容は佐藤氏の名誉を著しく傷つけるものでありました。よって佐藤氏に関する「越境通勤市議」、「公職選挙法違反」をしたなどとの放送部分をすべて取り消すとともに、佐藤氏に対し心よりお詫び申し上げるものです。
 平成  年  月  日
            多摩レイクサイドFM理事長    
            パーソナリティ 東村山市議会議員 矢野穂積

別紙4
「謝罪放送」は3日間、「ニュースワイド多摩」の放送ごとに、放送の冒頭で被告矢野自身により「まずお詫びを申し上げます」と聴取者に告知した上、被告矢野が聴取者に明確に聞き取れる状態でゆっくり読み上げること。

(了)


2009年9月26日:ページ作成。
最終更新:2009年09月26日 10:31