ヴィルギル・ディングフェルダー(アンドリュー・スコット)


◆『犯人は○ス』ばりに唐突過ぎる黒幕

シュナイダーの秘書。上司であるシュナイダーの命令を至上とし、理不尽な業務も的確にこなす(Wikipediaより)。

物語終盤に突如正体を現した、今回の事件の黒幕にして首謀者。
実行犯3人組によるフェスティバル会場襲撃後、シュナイダーのオフィスで犯人達の真の意図についてシュナイダーやベンと話し合った後、「では、私は警察に」と警察への連絡を口実に一旦退室するが、程なくして突如メカの姿で退室の際に通った扉ごと近くにいた2名のセキュリティ要員も巻き込んで、文字通り吹き飛ばしつつ登場。

ヴィルギルによって吹き飛ばされたSP達(赤丸印)※wiki以外への転載禁止

その後、犯行の目的で積年の恨みを持つ相手であるシュナイダーを捕縛、屋外で磔にすると、
「すべてのシュテルンビルト市民に告ぐ…(中略)…その目にこの男の死を焼き付けよ!」
という類の演説をしながら、シュナイダーを機械のドリルで殺害する気満々なのを見せつつ【突如蟹メカの中から上半身裸】という姿を披露する。

◆ムダにスキルの高い復讐の化身

本名は【アンドリュー・スコット】。過去にスコットシステムという会社を設立、そこで開発(設計?)をしていた父親の功績を奪い取り破滅させた(ライジング作中でヴィルギルが「シュナイダーの不正投資をもみ消すために父は利用されたんだ」と言うシーンがある)後、死に追いやったシュナイダーに対して恨みを持ち、密かに復讐の機会を狙っていた。
(なお、ヴィルギルの父親の死因については、ライジング本編及びノベライズ版でも被害者側のヴィルギルの証言のみで明確には記されておらず、自死と他殺のどちらにも取れる)

シュテルンビルトの女神の伝説になぞらえて、フェスティバルの日にそれぞれの立場からシュナイダーに個人的恨みを持つNEXT3人と共に計画を実行。街を破壊し混乱の渦に巻き込む。

だが、本来大企業のそれもオーナーの個人秘書となったら、機密漏洩防止その他の理由から面接や採用の前に徹底した身元調査を行う(企業によっては化粧室の清掃員ですら、専任の業者以外には依頼しない程徹底している)ので、幾らヴィルギルが身元を隠して潜り込もうとしても、詳しく調査すれば容易に判明してしまうのだが。

ヴィルギルの正体を知ったシュナイダーの様子から、『獅子身中の虫』としてヴィルギルを雇っていた訳でもなさそうだし、仮にヴィルギルがそこら辺のセキュリティをかわせる程のスキルを持っているならば、事件を起こさずとも内側からシュナイダーを破滅させる事ができたのではないだろうか?

◆巨大ロボも真っ青なNEXT能力と、街中に無造作に転がる武器の数々

NEXT能力はメカを操る又は機械を引き寄せ(て再構築でき)る?
キャラクター原案者の桂氏曰く「ヴィルギルの能力は、衣服を着ていると引き寄せる能力が弱くなる」らしいが、作中終盤でのヒーローズとの戦闘シーンでは、シュテルンビルトの女神の伝説を真似たと思しきヴィルギル操るカニ型メカから様々な武器(ドリルアーム・チェーンソーカッター・ハンマー・ガトリングガン・ランチャー・高圧放水等)が登場するが、このカニ型メカに搭載された武器の数々は、いずれもすべてシュテルンビルトの街中に転がっていたものを、ヴィルギルが能力で引き寄せたものである。

ヴィルギルが引き寄せ構築したメカの数々※wiki以外への転載禁止
【上段左】比較的シンプルな歩行型メカ
【上段中央&右】ヘリ形態のメカ
【下段左】ガラクタを寄せ集めている最中。この後ライアンによって一度破壊されている
【下段中央&右】最終形態のカニ型メカ

しかし、この「機械を引き寄せて再構築する」というヴィルギルの能力が、
(1)周囲の機械を引き寄せてくっつける(機械の原型残したまま)
(2)周囲の機械を引き寄せて別の物を構築できる(機械の原型残したまま)
(3)周囲の機械を引き寄せて分解して別の物を再構築できるのか(原型留めない)
のどれに該当するのかハッキリしておらず、ご都合主義的な描写や、逆に描写不足な面も見られる。


カニ型メカとT&B※wiki以外への転載禁止
また、あれだけ大量の機械を引き寄せた後の動かす電力や操作自体に必要なエネルギーはどこから供給していたのだろうか?
作中ヴィルギルが、ヘリを引き寄せて合体、飛行しているが、
 ●ヘリを取り込む→元々ヘリの飛行能力と同等の飛行能力しかないのか
 ●ヘリを取り込む→ヘリ持つ「飛べる」機能を所持できる なのかも不明のままである。

ちなみに一般のヘリの積載量は約500キロ。(プロペラが2つついている所謂軍用ヘリなら数t~10t位)
ヴィルギルの操るカニ型メカがどのくらいの重量があるか詳細は不明だが、あのような大きな金属類の塊をヘリ1、2台の能力程度で飛行するのは無理がある。

◆たったひとりへの復讐より、数万の市民と大都市を巻き添えに伝説の体現を選んだテロリスト

ヴィルギルが秘書としてシュナイダーの会社に潜り込んでから、そしてシュテルンビルトに移動するまでどれくらいの期間があったのかは謎だが、わざわざ移動先であるシュテルンビルトの伝説を利用している所から、

●以前の街でシュナイダーに復讐するつもりが、急遽シュテルンビルトに移動が決まったので、やむなく計画を変更した。

ではなく、

●最初からシュテルンビルトの伝説を使って街を破壊し尽くした末に、シュナイダーを破滅(というよりは機械のドリルで殺害する気満々だったのが窺える)させるつもりでいた。

になる。

以上の事から、裏で手を回して個人でシュナイダーに復讐したり、以前の街で事件を起こしシュナイダーに復讐する事をせず、シュテルンビルトの街の伝説を利用する事を選んだ(むしろ、シュナイダーひとりに復讐するより、伝説を使って街を破壊する方を優先している)計画的かつ凶悪なテロリストに相当するのだが、何故かいい人扱いされているのが不思議である。

ヒーローの活躍(という名の大人の都合)で奇跡的に死者ゼロだっただけで、公式がライジング制作にあたって頻繁に口にしていた『リアル』の世界ならば、数百~千人単位の死者が出てもおかしくない事件であり、崩落した建物から落下する市民の描写からも、運よく生命は助かっても一生身体に不自由を抱えたり、楽しみにしていた祭りの日に大事件に巻き込まれた末にPTSDを患う者もいるだろう。
負傷者の中に父親がいて、その子供の恨みが将来ヴィルギル達に向く可能性も充分考えられる。

ちなみにヴィルギルについて、プロデューサーの松井千夏氏は、以下の様なツイをタイバニ公式及び個人アカウントの両方で行っている。

再生は終わってしまいましたが、ヴィルギルの平川さんのことも!舞台挨拶でしきりにヒーローになりたいとおっしゃっていました。
人を殺していなければなれるかも??? #tigerbunny
https://twitter.com/TIGERandBUNNY/status/490145157006651392 (松井氏のツイッターより)

◆捻りも何もない「私、怪しいですよ」

中の人とキャラクターのビジュアルだけで黒幕だと視聴者に期待させるのは表現者としてどうなのだろうか。
恐らく復讐に絡んだバーナビーとの「対比」のキャラクターなのだろうが、ロクな伏線も張らずに(一応、実行犯3人組にメールを送るシーンはあったが)終盤で突然真犯人である事が本人の口から明かされるのは、2時間サスペンスドラマの崖上告白並みに唐突過ぎで陳腐な展開である。

バーナビーもそんなヴィルギルを救う以前に、私怨の為だけに街を破壊したヴィルギルに罪の意識をガッツリ認めさせて諭すべきなのに、かつて己の復讐を経て成長したとは思えないセリフで応酬する三文芝居ぶりであった。

◆相当の怪我人&街を破壊しても、ひとりも殺害していないから『いい人』!

エンドロールではシュテルンビルトの刑務所に収監されているようだが、3人組も含めて今回のは単にNEXTによる犯罪ではなく、違う街(あるいは国)からきた余所者のNEXTが、シュテルンビルトの街を破壊したという大事件なのだが、両都市(両国)の首脳や、NEXTを管理する司法局その他で問題は起こらなかったのだろうか?

そのような国際?犯罪やテロ起こしたヴィルギル&3人組より、シュナイダーの方が極悪人扱いで重刑を課されている。
確かに小悪党ではあるだろうが、ヴィルギルの父親の死についても「部下にやらせた」「私は殺していない。スコットは勝手に死んだ」等の釈明や弁解の描写が一切ないまま判決というのは、少々どころかかなり理不尽である。
最終更新:2016年06月23日 00:57