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かまいたちの夜 2 - (2006/03/11 (土) 02:26:53) のソース
宿に荷物を置くのもそこそこに、着替えを済ませ、スキー一式を借りる。 「運転は、できるんだろ?」 「はい。一応」 「なら、悪いけど二人だけで行ってくれないかな。もうじきまたお客さんが来るはずなんでね。裏にもう一台止めてあるから。・・・・・ほら、これがキー」 裏に止めてあったRVを表に回すとスキーを積み込み、スキー場を目指して出発した。 太陽はほぼ真上に昇っていてそろそろ昼食時なのだが、真理は一刻も早くゲレンデに行きたくてしょうがない様子だった。 道は所々固い雪で覆われていたが、スタッドレスを履いた4WDは、ほとんど不安を感じさせなかった。 何度も来ているらしい真理のナビと案内標識で、迷うことなくゲレンデに到着したのは十五分後だった。 信号もほとんどないところでの十五分だから結構な距離である。スキーペンションとしては少々不便ではないだろうか。果たしてぼく達の他に客は来るのだろうかといらぬ心配までした。 駐車場からゲレンデまで普通なら一分もかからない距離なのだが、慣れないスキー靴を履き、重たいスキー板を担いだ状態では、永遠続くかと思われるほど時間がかかった。 「・・・・真理・・・・先に、昼御飯食べようよ」 「情けないわね。駄目。とりあえず一回滑ってからよ」 真理は無情にもそう言い放った。 仕方ない、滑るしかないか・・・・。 ぼくは一メートル毎に転び、三十分かけてようやく初心者コースを降りきった。ハラペコで、疲れ切っていて、汗だくで、おまけに雪まみれだった。 「・・・・お願いだ、真理・・・・昼御飯にしよう・・・・」 昼飯の時間も惜しい、そんな様子ではあったが、彼女もお腹は空いていたのだろう、渋々スキー板を外し昼食を取りに食堂へ行く事を承諾してくれた。 遅めの昼食の後、更なる特訓が続いた。 何度も転ぶせいか、体の節々がぎしぎしと軋む。それでも帰る頃には何とかボーゲンでゆっくり降りてくることは出来るようになっていた。 日が落ちるにつれ空は急に曇り始め、辺りは不穏な風が吹き始めていた。じっとしていると汗ばんだ体が凍り付きそうに寒い。 「真理、そろそろ帰ろうよ」 遥か上から滑り降りてきた真理を見つけると、ぼくは懇願するように言った。 真理はゴーグルを外し、険しい顔をして空を見上げると、うなずいて言った。 「・・・・そうね。早めに切り上げた方が良さそうね」 「そう?予報では何にも言ってなかったけど・・・・」 真理はゆっくり首を横に振った。 「ううん。今夜は荒れるわよ。――急ぎましょう」 彼女の予言めいた言葉に寒気を感じながらも駐車場へと向かった。 「帰りは私が運転するわ。透、体ががたがたでしょ?」 「・・・・うん。お願いするよ」 真理は少し乱暴すぎるほどの運転でペンションへとすっ飛ばした。たかだか十分ほどのドライブだったが、その間に日はとっぷりと暮れ、雪は本降りになり始めていた。 「こんな夜は――」 真理が何かを言いかけた。 「何?こんな夜は、どうしたの?」 真理はにっこりと笑いながら首を振る。 「ううん・・・・何でもないの」