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第三章 小さな傭兵団 1
「これは・・・」
村のあまりにも無残な様を目の当たりにして、リンは口をつぐんだ。
「そこいらじゅう荒れ放題ですね。ここの領主は、何やってんでしょう?」
セインの言う通り、村は嵐が過ぎ去った後の様にに荒れていた。
煉瓦造りの家の壁は崩れ、壊れた家具はあちこちに転がっていた。無論、これは天災ではない。山賊たちが引き起こした人災だった。
領民を守るのが領主の役目である。
すぐにでも山賊討伐軍を編成したり、村の復興のために援助したりするのが当たり前なのだが、この村はとても領主の援助を受けてるとは思えない。
領主は何をやっているのだろうか?
セインがこぼした疑問に答えるかのように、リンが口を開いた。
「・・・この山、タラビル山には領主たちも手出しできないような、とても凶悪な山賊団が、巣食ってるの。私の部族も・・・タラビル山賊の一団に夜襲をかけられて、一晩でつぶされたわ・・・。運良く生き残ったのは、私をいれて、十人に満たなかった・・・。血も涙もないヤツラ・・・、絶対に・・・許さない・・・!!」
「・・・リンディス様」
「・・・・・・」
体を小刻みに震わせながら語るリンの言葉に、ケントはそれ以上何も言えず、セインは硬く口を閉ざし見つめていた。
「ここから逃げるんじゃない・・・、私は・・・、いつか必ず戻ってくるわ。強くなって・・・、あいつらなんか歯牙にもかけないくらい強くなって・・・、みんなの仇をとってやる。そのためには、なんだってするわ!」
澄み切った青空に向かって叫ぶリンを前に、進み出た影が。
「その時は・・・俺も連れて行ってください」
「セイン・・・」
「私も、お忘れなきよう」
「ケント・・・、二人ともありがとう・・・」
自分の仕えてるいる主君の孫娘だからか。
それともただ単にリンに同情したからか。
リンには命を危険にさらしてまで自分の仇討ちに協力をしてくれるという彼等の考えが分からなかった。だが何のためらいもなく、自分に加勢すると言ってのけた二人の言葉がとても嬉しかった。家族を亡くし、部族の皆を失い、たった一人で復讐を誓ったリンにとって、二人の優しさは心にしみた。
「!」
ケントが何かに気づいたようで、視線を村の奥に向けた。
「リンディス様、お気をつけ下さい。あちらで何か騒ぎが起きているようです」
ケントに促されリンもその方向に眼をやると、白く大きな翼を生やした、一頭の白馬の姿が映った。
「・・・あれは、・・・ペガサス?・・・まさか!!」
瞬間、リンの脳裏に一人の少女が浮かんだ。
こんな所にいるはずがない。
そう思いながらも、リンはペガサスの方へ駆け出していった。
「おう、おう、おう、おねえちゃん!この落とし前はどうしてくれんだ?ああ?」
「・・・あ、あの、私・・・その・・・」
十代半ばぐらいの年頃だろうか。
ゆるやかに波打つ髪に、雪のように白い肌が眼をひく美少女だった。少女は今にも泣き出しそうな顔で、傍らにいるペガサスにしがみついて震えていた。
「アニキ、この娘、なかなかの上玉ですぜ。連れて帰ったらボスに褒美がもらえるじゃあ?」
「そうだなぁ。このねえちゃんは俺にケガをさせたんだ。それぐらいしてもらってもバチは当たらんだろうさ?」
「・・・私、・・・私」
少女は、男たちの言葉にロクに返す事ができずにいる。その眼にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「こっちのペガサスはどうします?」
「この子にさわらないでっ!!」
弟分が汚い手でペガサスを触ろうとした時、今までおどおどするばかりだった少女が大声を上げた。びっくりした兄貴分の賊は少女を睨み、
「なんだ?このアマ!」
「・・・私はどうなってもいい・・・から、その子は・・・逃がしてあげてください。・・・お願いです」
「へっへっへ、おねえちゃん!ペガサスってのはなぁ、イリアにしかいねぇめずらしい生き物だからな。売りと飛ばしゃぁ、高い金になる。逃がすなんて、とんでもないぜ」
「そんな・・・」
少女の顔に絶望の色が浮かんだ。
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