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第三章 小さな傭兵団 3
「フロリーナ、怪我はない!?」
駆けつけたリンにフロリーナは眼に涙をためて抱きついた。
「う・・・・・・うん。でも、怖かった・・・・・・、怖かったよぉ・・・・・・」
「ホラ、いまは戦闘中よ。泣かないで、ね」
「うん・・・・・・」
「あのぉ、大丈夫?」
「え?きゃあっ!」
声をかけたウィルにフロリーナが驚いて悲鳴を上げた。
驚いたのはウィルも同じである。
「え?お、おれ何かしたっけ?」
「あ、気にしないでウィル。彼女、男の人が苦手で・・・・・・。それに天馬騎士だから弓の方もね・・・・・・」
リンはウィルの持っている弓を見ながら答えた。
天馬騎士にとって弓は天敵で、当然その恐怖は刷り込まれている。おまけに男性恐怖症ときたら怖さも倍増だろう。
「あ・・・あの・・・、ご・・・・ごめんなさい。でも弓を見たらどうしても・・・・ふ、ふるえて・・・・・」
「もう、フロリーナもそんなにビクビクしないの!ウィルに失礼でしょ?それにさっきあなたを狙っていた山賊を倒してくれたのもウィルなのよ。ちゃんとお礼言って」
「う、うん・・・・・・。あ、ありがとう・・・ござい・・・ます・・・・・・」
フロリーナはおずおずとウィルの前に進み出ると、途切れ途切れのお礼を述べた。
頭では理解していても身体がどうしても拒絶する。
いまだに怯えの色を見せるフロリーナに、リンはため息をついた。
(久しぶりに会ったけど、全然変わってないわね)
「リンディス様!どうかなさいましたか!?このセインも只今お側に・・・!」
今までのフロリーナとの思い出を思い出しているとセインの声がしてふと我に帰った。
「馬鹿者!持ち場を離れるな!」
声に振り向くと、ケントとセインが二人で大勢のならず者の攻撃をしのいでいた。
うっかり話し込んでるうちに、二人の騎士は孤立奮闘していたのだ。
「ごめんなさい、すぐに行くわ!フロリーナ、あなたは上空から、ウィルは後方から援護してちょうだい!」
「う、うん!」
「ああ、まかせてくれ!」
二人に指示を飛ばすと、リンはマーニ・カティを手に疾駆した。
「やっと片付いたわね」
戦いはリンたちの勝利で終わった。
一流の剣の冴えを持つリンに正規の訓練を受けた騎士二人、それに見習いとはいえ天馬騎士のフロリーナや熟練した弓の腕を持つウィルまで加わったのだ。十人やそこらの山賊など物の数ではなかった。
「リン!」
マーニ・カティを鞘に収めたところにフロリーナが駆け寄ってきた。
「フロリーナ・・・どうして追ってきたの?あぶないじゃない」
「イリア天馬騎士が、一人前になるための儀式・・・覚えてる?」
フロリーナの言葉に、リンは以前に聞かされた言葉を思い出した。
「確か、どこかの傭兵団に所属して修行を積んでくる・・・だったわよね?じゃあ、フロリーナ。あなたも?」
「うん。・・・傭兵団を探すための旅に出ることをリンに放しておこうと思って。それで、サカに行ったらリンが見慣れない人たちと旅に出たって。・・・だから」
「心配してくれたのね?ありがとう。でも私は・・・貴方の方が心配」
「私?」
「いい?傭兵団っていうのは普通、男ばかりなのよ?フロリーナが一人でそこに入って修行だなんて・・・。むちゃだわ」
フロリーナの顔がみるみる暗くなっていく。
「・・・やっぱり、そう思うよね。・・・天馬騎士になるのは小さい頃からの夢だったから、必死で頑張れば、なんとかなると思ってたんだけど・・・。私も今日のことで自信なくなってきちゃった・・・。・・・あきらめたほうがいいのかなぁ・・・・・・・」
「フロリーナ・・・泣かないで・・・」
またも泣き出しそうなフロリーナを慰めるように、リンが励ましの言葉を言おうとした時、暗く湿りがちだった場の雰囲気を打ち破るような、明るい声が響き渡った。
「そう!あきらめる必要はありません!!」
「!?」
二人が驚いて振り向くと、そこには大仰に手を広げているセインの姿が見えた。
「俺に名案がありますっ!可憐なフロリーナさん!!」
「セイン!」
ケントが、またバカな事を言い出そうとしている相棒を止めようと叫んだが、セインは一向に気にせず話し続ける。
「あなたも、俺達と一緒に旅をすれば良いのです!我らは、このウィルを加えて今や立派な傭兵団同然!!」
「お、おれもっ!?」
出し抜けに自分の名前を言われ驚くウィルを尻目に、尚もセインは言う。
「ここで、お会いしたのも神のお導き!運命だったのです!!ささ、このリンディス傭兵団で、ともに修行を積もうではありませんか!」
「・・・セイン。この。お調子者が・・・!」
ケントが沈痛な面持ちでつぶやいた。
「ねぇ、リン・・・『傭兵団』って?」
「・・・詳しい話は、追い追いね。ちょっと乱暴な気がするけど、セインの言うとおり、一緒に来る?フロリーナ」
リンにしたらフロリーナを一人にしておくと危なくて仕方がない。だからセインの‘‘我々が傭兵団ならフロリーナと一緒に旅ができ、天馬騎士の修行もでき一石二鳥’’という考えには、リンも合致したのだ。
「・・・リンと旅が出来るの?本当に?だったら私・・・すごく嬉しい!」
思いもよらなかった提案に、花が咲いたように笑みを浮かべたフロリーナの傍ら、満面の笑みを浮かべた者がいた。
「やったー!!美しいフロリーナさん!俺はキアランの騎士、セインと申しま・・・」
「きゃあっ!ち、近寄らないで・・・ください」
「ああ・・・なんて奥ゆかしいんだ!」
さっそく仲間になったフロリーナに愛を語ろうとするセイン。一方のフロリーナは、男性恐怖症のため、近寄ってくるセインから逃げ回っていた。
その光景を横目で見つつ、ケントはリンに頭を下げた。
「すみません。『傭兵団』などとふざけたことを・・・・・・」
「ううん、私は賛成よ。フロリーナのこと、ほっとけないもの。それより、面倒かけると思うけど・・・頼んでもいい?」
「はっ!おまかせ下さい」
力強くうなずいたケントにリンは頼もしさを感じた。
彼等の使命はあくまでも自分がキアランまでの護衛なのだ。余計な仕事を背負い込むのに難色示してもいいはずなのに、ケントとセインは一も二もうなずいてくれる。リンは心の中で感謝していた。
「あの・・・。おれも、本当についていっていいのかな?」
「あ、ええ、もちろん!ウィルがイヤじゃなければ」
「いや、むしろ助かるな。実を言うと旅の途中なのに金を盗まれて途方にくれてたんだ。じゃ、おれも今日から傭兵団の一員って事で、よろしくお願いします!!」
「リンディス傭兵団、か・・・。なんだかにぎやかになってきたわねね・・・」
セインから逃れるため自分の後ろに身を潜めたフロリーナを見ながら、リンはそうつぶいた。
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