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第一章 運命の足音 2
女友達の一人にイリア出身の子がいて、その子から色々と生まれ故郷について聞かされていたので良く覚えている。
「そういう所なら強い人がたくさんいるかもね。あ、でも強い人なら傭兵として出払ってるかもしれない・・・・・・。まぁ、旅に出る前にあの子に会っておくのも良いかな」
友達の顔を思い浮かべながらリンが歩いていると、目の前に一人の人物が踊り出た。
「おおっ!これは何と美しい女性なんだ!」
「?」
いきなりの声に驚き、リンは立ち止まって前をふさいだ男に注視した。
年齢は二十代後半といった所だろうか。若い青年で、身にまとった緑色の立派な鎧と連れている鹿毛の馬から、騎士とうかがい知れた。
「待って下さい、美しい方よ!よろしければお名前を!そしてお茶などをいかがですか?」
「・・・・・・あなたどこの騎士?」
「よく聞いて下さいました!俺はリキアの者。もっとも情熱的な男が住むといわれるキアラン地方出身です!!」
「『もっともバカな男が』の間違いじゃないの?」
リンは目の前の騎士に向かって、容赦なく冷たい言葉を浴びせた。根が真面目ゆえか、リンはこういう軽薄な輩は好きになれなかった。そのため口調も自然と刺々しくなる。
「うっ・・・・・・、冷たいあなたもステキだ」
騎士はリンの辛辣な物言いにもめげず、尚も話しかけようとする。
「冗談じゃない。相手にしてられないわ」
「あ!待って・・・・・・」
不機嫌な顔で立ち去ろうとするリンを、騎士はしつこく呼び止めようとした。と、その時---。
「セイン!いい加減にしないかっ!!」
背後から聞こえた叱りつける声に、セインと呼ばれた騎士は振り向いた。
そこには真紅の鎧を身にまとった若い騎士が立っていた。軽薄そうなセインとは対照的に、実直で落ち着いた雰囲気を漂わせている。
「おお、ケント!わが相棒よ!!どうした、そんな怖い顔で」
相棒と呼ばれた騎士は、肩を怒らせてセインをにらみつける。
「貴様が真面目にしていればもっと普通の顔をしている!セイン!我々の任務はまだ終わっていないのだぞ!!」
「分かっているさ。だがこんなに美しい女性を前に声をかけないのは、礼儀に反するだろう?」
「何の礼儀だ!」
「あのっ!どうでもいいけど道を開けて。馬が邪魔で通れないわ」
これ以上つき合っていられないとばかり、リンが二人の会話に割ってはいる。
ケントという若い騎士も馬を連れていた。ゆえにリンの前には騎士二人、馬二頭が道をふさぎ、ちょっとした壁のようになっていた。
「すまない、すぐに・・・・・・」
頭を下げながら、ケントはすぐさま自分とセインとの間の道を開けた。その素直な対応に、リンは硬くした表情をやわらげた。
「ありがとう。あなたは、まともみたいね」
「!」
そこで初めて、ケントはまともにリンの顔を見た。すると何かに驚いたらしく、目を見開いてリンの顔をまじまじと見つめた。
「・・・・・・失礼だが、君とはどこかで会った気が・・・・・・」
「え?」
「おい!ずるいぞ、ケント!俺が最初に声をかけたんだぞ!!」
「・・・・・・!リキア騎士にはロクなヤツがいないわね!気分が悪いわ!!」
セインの余計な一言のせいで、ケントも同じナンパ男と誤解したリンの表情は一瞬で険しいものに変わった。
さきほど開いた二人の騎士の間の道を強引に突っ切り、早足で進む。
「待ってくれ!違うんだ・・・・・・」
後ろから引き留める声が聞こえたが、当然、リンはその歩調をゆるめる事はなかった。やがてリンの姿は、ブルガルの人混みの中に消えていった。
リンが早々に立ち去った後、ケントは相棒のセインを厳しい眼差しでにらみつけた。
「・・・・・・・・・・。セイン・・・・・・、貴様!」
「え?ちがうのか?お前もてっきり・・・・・・」
「貴様と一緒にするな!それよりも今の娘を追うぞ。彼女は多分・・・・・・」
言い終えぬうちに、ケントは自分の馬を連れリンが去った方向に駆け出した。
「まさか・・・・・・俺たちの『任務』か!?ウソだろ?おいっ!!」
セインもまた慌ててその後を追った。
第一章 運命の足音 2
女友達の一人にイリア出身の子がいて、その子から色々と生まれ故郷について聞かされていたので良く覚えている。
「そういう所なら強い人がたくさんいるかもね。あ、でも強い人なら傭兵として出払ってるかもしれない・・・・・・。まぁ、旅に出る前にあの子に会っておくのも良いかな」
友達の顔を思い浮かべながらリンが歩いていると、目の前に一人の人物が踊り出た。
「おおっ!これは何と美しい女性なんだ!」
「?」
いきなりの声に驚き、リンは立ち止まって前をふさいだ男に注視した。
年齢は二十代後半といった所だろうか。若い青年で、身にまとった緑色の立派な鎧と連れている鹿毛の馬から、騎士とうかがい知れた。
「待って下さい、美しい方よ!よろしければお名前を!そしてお茶などをいかがですか?」
「・・・・・・あなたどこの騎士?」
「よく聞いて下さいました!俺はリキアの者。もっとも情熱的な男が住むといわれるキアラン地方出身です!!」
「『もっともバカな男が』の間違いじゃないの?」
リンは目の前の騎士に向かって、容赦なく冷たい言葉を浴びせた。根が真面目ゆえか、リンはこういう軽薄な輩は好きになれなかった。そのため口調も自然と刺々しくなる。
「うっ・・・・・・、冷たいあなたもステキだ」
騎士はリンの辛辣な物言いにもめげず、尚も話しかけようとする。
「冗談じゃない。相手にしてられないわ」
「あ!待って・・・・・・」
不機嫌な顔で立ち去ろうとするリンを、騎士はしつこく呼び止めようとした。と、その時---。
「セイン!いい加減にしないかっ!!」
背後から聞こえた叱りつける声に、セインと呼ばれた騎士は振り向いた。
そこには真紅の鎧を身にまとった若い騎士が立っていた。軽薄そうなセインとは対照的に、実直で落ち着いた雰囲気を漂わせている。
「おお、ケント!わが相棒よ!!どうした、そんな怖い顔で」
相棒と呼ばれた騎士は、肩を怒らせてセインをにらみつける。
「貴様が真面目にしていればもっと普通の顔をしている!セイン!我々の任務はまだ終わっていないのだぞ!!」
「分かっているさ。だがこんなに美しい女性を前に声をかけないのは、礼儀に反するだろう?」
「何の礼儀だ!」
「あのっ!どうでもいいけど道を開けて。馬が邪魔で通れないわ」
これ以上つき合っていられないとばかり、リンが二人の会話に割ってはいる。
ケントという若い騎士も馬を連れていた。ゆえにリンの前には騎士二人、馬二頭が道をふさぎ、ちょっとした壁のようになっていた。
「すまない、すぐに・・・・・・」
頭を下げながら、ケントはすぐさま自分とセインとの間の道を開けた。その素直な対応に、リンは硬くした表情をやわらげた。
「ありがとう。あなたは、まともみたいね」
「!」
そこで初めて、ケントはまともにリンの顔を見た。すると何かに驚いたらしく、目を見開いてリンの顔をまじまじと見つめた。
「・・・・・・失礼だが、君とはどこかで会った気が・・・・・・」
「え?」
「おい!ずるいぞ、ケント!俺が最初に声をかけたんだぞ!!」
「・・・・・・!リキア騎士にはロクなヤツがいないわね!気分が悪いわ!!」
セインの余計な一言のせいで、ケントも同じナンパ男と誤解したリンの表情は一瞬で険しいものに変わった。
さきほど開いた二人の騎士の間の道を強引に突っ切り、早足で進む。
「待ってくれ!違うんだ・・・・・・」
後ろから引き留める声が聞こえたが、当然、リンはその歩調をゆるめる事はなかった。やがてリンの姿は、ブルガルの人混みの中に消えていった。
リンが早々に立ち去った後、ケントは相棒のセインを厳しい眼差しでにらみつけた。
「・・・・・・・・・・。セイン・・・・・・、貴様!」
「え?ちがうのか?お前もてっきり・・・・・・」
「貴様と一緒にするな!それよりも今の娘を追うぞ。彼女は多分・・・・・・」
言い終えぬうちに、ケントは自分の馬を連れリンが去った方向に駆け出した。
「まさか・・・・・・俺たちの『任務』か!?ウソだろ?おいっ!!」
セインもまた慌ててその後を追った。
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