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かまいたちの夜 2

    
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   宿に荷物を置くのもそこそこに、着替えを済ませ、スキー一式を借りる。
   「運転は、できるんだろ?」
   「はい。一応」
   「なら、悪いけど二人だけで行ってくれないかな。もうじきまたお客さんが来るはずなんでね。裏にもう一台止めてあるから。・・・・・ほら、これがキー」
   裏に止めてあったRVを表に回すとスキーを積み込み、スキー場を目指して出発した。
   太陽はほぼ真上に昇っていてそろそろ昼食時なのだが、真理は一刻も早くゲレンデに行きたくてしょうがない様子だった。
   道は所々固い雪で覆われていたが、スタッドレスを履いた4WDは、ほとんど不安を感じさせなかった。
   何度も来ているらしい真理のナビと案内標識で、迷うことなくゲレンデに到着したのは十五分後だった。
   信号もほとんどないところでの十五分だから結構な距離である。スキーペンションとしては少々不便ではないだろうか。果たしてぼく達の他に客は来るのだろうかといらぬ心配までした。
   駐車場からゲレンデまで普通なら一分もかからない距離なのだが、慣れないスキー靴を履き、重たいスキー板を担いだ状態では、永遠続くかと思われるほど時間がかかった。
   「・・・・真理・・・・先に、昼御飯食べようよ」
   「情けないわね。駄目。とりあえず一回滑ってからよ」
   真理は無情にもそう言い放った。
   仕方ない、滑るしかないか・・・・。
   ぼくは一メートル毎に転び、三十分かけてようやく初心者コースを降りきった。ハラペコで、疲れ切っていて、汗だくで、おまけに雪まみれだった。
   「・・・・お願いだ、真理・・・・昼御飯にしよう・・・・」
   昼飯の時間も惜しい、そんな様子ではあったが、彼女もお腹は空いていたのだろう、渋々スキー板を外し昼食を取りに食堂へ行く事を承諾してくれた。
   遅めの昼食の後、更なる特訓が続いた。
   何度も転ぶせいか、体の節々がぎしぎしと軋む。それでも帰る頃には何とかボーゲンでゆっくり降りてくることは出来るようになっていた。
   日が落ちるにつれ空は急に曇り始め、辺りは不穏な風が吹き始めていた。じっとしていると汗ばんだ体が凍り付きそうに寒い。
   「真理、そろそろ帰ろうよ」
   遥か上から滑り降りてきた真理を見つけると、ぼくは懇願するように言った。
   真理はゴーグルを外し、険しい顔をして空を見上げると、うなずいて言った。
   「・・・・そうね。早めに切り上げた方が良さそうね」
   「そう?予報では何にも言ってなかったけど・・・・」
   真理はゆっくり首を横に振った。
   「ううん。今夜は荒れるわよ。――急ぎましょう」
   彼女の予言めいた言葉に寒気を感じながらも駐車場へと向かった。
   「帰りは私が運転するわ。透、体ががたがたでしょ?」
   「・・・・うん。お願いするよ」
   真理は少し乱暴すぎるほどの運転でペンションへとすっ飛ばした。たかだか十分ほどのドライブだったが、その間に日はとっぷりと暮れ、雪は本降りになり始めていた。
   「こんな夜は――」
   真理が何かを言いかけた。
   「何?こんな夜は、どうしたの?」
   真理はにっこりと笑いながら首を振る。
   「ううん・・・・何でもないの」