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Main Story Ⅲ-1


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第三章 第一節


高い天井に子どもの笑い声が響く。
石の壁に跳ね返されたその声はどこか無機質で奇妙な違和感を与えた。
「どっかのバカが一人死んだよ。でも、なかなか面白いものもみつけてくれた。楽しくなりそうだ、ねぇ?」
装飾された椅子の肘掛に浅く腰掛けるようにもたれた少年は、その椅子に深く座った男に口元だけの笑みを向けた。
「あれに、何か影響が?」
年不相応なその笑みを見返す男の瞳はどんよりと曇っている。
「あっけなかった、と思っていたよ。でも、"あいつ"は興味深いものを遺した。見極める必要がある」
「見極める……」
「今度こそ、うまくいくと良いな」
細められた少年の瞳が鈍く光った。




くすぶっていた叛乱の火が、確かに温度を上げていくのを見て取ったルギネスは、休養をとった後の出発を告げる。
出てきた街を拠点に仲間を増やす計画を口にしていたので再びヴェルトロに戻るのだろうと澪は住民に預けられていた馬に鞍を掛けなおし始めていた。
見様見真似で同じように鞍を掛けていた琴菜の手つきをなんとなしに眺めながら湖の中州での出来事を思い返していた。



口にこそ出さなかったが、自らの内側のどこかで嫌悪していた自身の能力を頼られることに抵抗を覚えている。
燃え上がる炎も、吹き上がった水も、今回はかろうじて助けとなったが、いつ裏切られるかわからない両刃の剣であることを澪は知っていた。
だからこそ……



「……澪?どうした?」
突然声をかけられてハッと我に返ると、怪訝そうな表情の琴菜が顔を覗き込んでいた。
「眉間、しわ寄ってる」
人差し指を突きつけられて自然と険しい表情をしていたことに気づく。
「何悩んでるかは聞かない。でも、話したほうが楽なこともあることは言っとく」
困ったようにかすかな笑みを浮かべてそれだけ言うと、それ以上は何も言わずに不慣れな手つきで仕上げた馬具を指し示した。



見てみてほしい、と言う無言の頼みに澪も無言で答える。
締められたベルトに手をかけ緩み具合を感触で確かめていく。
次のベルトに手を伸ばそうとしたとき、遠くからひづめの音が聞こえた気がして顔を上げた。