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Main Story Ⅱ-1

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第二章 第一節


見えていること、見えていないこと。
気付く、新しい世界。
何も変わってはいないのに。
今すぐ君に、会いたくなった。

それでも、今は。

あそこではないどこかへ。
大事なものの無いどこかへ。
せめて、何かが変わるまで。

『閉ざされた水の街』


穏やかな気候の中、軽やかな足取りで馬は進む。緑の多い景色と暖かな日差しに包まれていれば自然と心も弾んだ。
特に春日は何を見ても興味をもつらしくいちいち馬車を降りたがり、エレンを少々困らせていた。
「ねぇ今何かそこで動いたよー!」
「あら、本当ですね。一体なんでしょう?って……あぁっあまり乗り出したら危ないです!」
「あっあっちも!」
騒がしい馬車を微笑ましさ半分、呆れ半分で見やりながら琴菜が笑う。
「こら春日、あんまり迷惑かけるな……子供じゃあるまいし」
澪が溜息をつきながらたしなめた。
「はぁーい」
一応大人しくなったものの未だに目は景色に釘付けのまま、春日が頷いた。

「山越えというからには道がないようなところを進むんだと思ってたんだがそうでもないんだな」
綺麗に整備された……とは言いがたいが、それなりに道幅のある道を見て琴菜が意外そうに呟いた。
所々に草が生え、現在頻繁に使われている道ではなさそうだ。
「道無かったら馬車じゃ無理だろー。ヴェルギリウスの近くに結構大きな街があって昔は結構行き来もあったんだけどなぁ」
「今は無いのか?」
ぼやくカサンドラに澪が尋ねる。
「いやそうでもないけど……この前連絡とったのが二月前だったかな」
「えらく間隔が開いてるんだな」
「こっちもちょっとゴタゴタしてるからなかなか……きちんと連絡は取り合わないとやばいんだけど」
はぁ、とカサンドラが息をつく。
「そのヴェルギリウスというところもお前達の味方なのか?」
「うーん味方もいる、ってとこかなぁ。やりたいことは一緒でも方法は変えたいやつもいるし、もちろん国王派もなんでかいるから」
「前途多難だな」
僅かに眉を顰める澪に、カサンドラが面白そうに口の端をあげる。
「まぁそれをかえてくれるらしいのも来たし、なんとかなるんじゃない?」
澪と琴菜がなんとも言えない表情で顔を見合わせる。
「……俺達にできることなんてたかがしれてるんじゃないか?」
僅かに困ったように返す澪の言葉を受けて、カサンドラが黙々先をいくルギネス……の荷物に声をかけた。
「こんなこといってますよージルコン先生ーやる気ないですよー」
『あははもっと気合入れてもらわないとだめだよねー』
どこからともなくジルコンの声が響く。

陽が傾き始めた頃、
「今日は、ここで休もう」
ルギネスが声をかけたのは山頂の少し木々の拓けた場所だった。
周りを囲む木々の根本に何カ所か火を焚いた跡が残っている。
その一つにエレンが慣れた手付きで火をつけ直し、軽い食事の準備を始めた。
「……腰が痛い……」
「だろうな、まだ慣れてないし」
馬に乗っている間は気付かなかったが地上に降りると鈍い痛みが走る。
へたり込んでしまった琴菜の隣に座った澪は、夕焼けの眩しさに目を細めた。
「おっかしいなぁ~……」
「何がおかしいの?」
いつの間にか木に登っていたジルコンが首を傾げる。同じようにあとをついて登っていた春日が逆方向に首を傾げた。
「ん~?ここからなら見えるはずなんだけどなぁ、ヴェルギリウス~」
言いながらジルコンは軽やかに木の枝を伝って地上に降り立つ。その真上に手を滑らせた春日が転がり落ちてきた。
「「ぎゃんっ!!」」
悲鳴を上げた二人をほとんど無視してルギネスがジルコンに訊く。
「見えなかったのか?」
春日に潰されたままジルコンは頷いた。
「見えなかった。茶色い地面だけ」
「……連絡をしなかった間に、何かあったらしいな……」
「……その前から、何かあったかもね」
意味深な言葉を呟きながらようやく起き上がった春日の下から這い出す。
「水、見えなかったのか?」
「あの湖に、水が見えないから『おかしい』と言ってるんだ」
なぜか明るい表情で聞き直すカサンドラにルギネスが呆れたように言った。
「それって……湖が枯れてるってことか?」
「……だろうな……大きい湖なんだろ?」
動けない琴菜を気使ってか隣に座ったまま澪は半身を捻るようにしてルギネスに訊く。
「この国で一番大きい湖だ。この辺り一帯の水源にもなってる。確かにここ数ヶ月、井戸の水が減ってきているのはわかっていたんだがここまでとは……」
ルギネスは片方だけの眉根を寄せる。
「そばに街があるんだよね?とりあえず、行ってみよ?」
木から落ちたときこすったのか鼻の頭を赤くした春日がにっこり笑って言う。
みなさん、少しですけど食事にしましょう、と言うエレンの声に全員が振り返った。