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Main Story Ⅱ-3

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第二章 第三節


深い轍に車輪をとられながら、小さい荷馬車と四騎は疾走する。
「ななななななんでいそぐのっ!?……きゃんっ!!」
「今喋らないで下さいっ舌噛みますよっ!」
轍や馬の足跡を見てから、ルギネスはいつにも増して険しい目つきになり先を急がせた。
「どういうことだ?」
「……軍馬が通った跡があった。複数の人の足跡は逆向きだった。湖岸にある『パッペ』の住民があの土地から離れてるんだ」
「水が涸れたせいもあるんだろうけど。魔物とか盗賊とかのせいかも。どっちにしろ……今夜の宿が無い」
「……そっちをっ……重要視っ……してないか!?」
慣れない馬に揺さぶられながら琴菜も必死についていく。



陽が真上から少し傾いた頃、ヴェルトロの城壁に似た背の高い建物の前に辿り着いた。
城門は開けることが出来なくなっていて、すぐ脇にある衛兵の詰め所には長い間使われた形跡がない。
「……開かない?」
「中から鍵がかけてあるのか?」
カサンドラとルギネスが城門の前で立ち止まる。馬車を降り城門に近寄ってきたエレンが垂れた兎の耳を立ち上げる。
途端に城門の大きな扉から数十歩離れるとくるりと振り返った。
「若っ!手伝って下さいっ!!」
「え!?あっ……」
カサンドラが返事をする前にエレンは走りだした。馬に乗ったままのカサンドラに向かって。
一メートルほど離れた位置で地を蹴る。とっさに組んだカサンドラの手に一瞬乗ると投げ上げられる力を利用してそのまま上空へ舞い上がる。身長の三倍以上ある城壁の上に降り立つと街の中を見渡し始めた。
そんなエレンを琴菜は呆然と見上げる。
「……すご……」
「月兎族の跳躍はすごいな」
「……でも突然はやめて欲しい……」
エレンを見上げる三人を尻目に澪と春日は城門に耳をつけている。
「……悲鳴?」
「声、聞こえるよね……」
とっさに顔を見合わせると三人の元へ走り寄る。
「中から声がっ!!」
ルギネスとカサンドラの顔色が変わった。



「ここは、交易の拠点なんだ。住民が移動したのを知らなかった商人かもしれない」
焦ってルギネスは城門に手をかけるがやはり開かない。
「中に人と……王家紋章をつけた魔物兵がっ」
上空からエレンの良く通る声が響く。
「「王家紋!?」」
ルギネスとカサンドラが叫び返した。
「相当やばいな……」
カサンドラが沈痛な面持ちになる。ルギネスも片方だけの眉を寄せた瞬間、上空から短い悲鳴が聞こえた。
見上げると町の中から放たれた矢を幅の狭い壁の上で舞うように避けるエレンがいた。
「……おいおい……魔物の弓兵もいるのかよっ」
さすがに少し青ざめたカサンドラが呆然と立ちすくむ。
「オレ達だけでは……」
悔しげに軽く唇を噛んだルギネスを押しやるように、澪が城門の扉に歩み寄った。
「……どっちにしろ、これを開けないと何も出来ないんだろ?」
言い聞かせるように呟く。
「少々手荒でも良いなら、開けられると思う」
許可を求めるように、背の高いルギネスとカサンドラを見上げる。藍色の瞳に、炎の幻影が見えた気がした。
「「……あぁ」」
幻影に惑わされたような二人の返事に澪は、微かに自嘲的とも誇らしげともとれる微笑を浮かべると扉のそばにいた春日を引き離した。