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Main Story Ⅱ-4

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第二章 第四節


息を整えるように、深呼吸。感じられない風を孕んで、濃紺の髪が揺れた。
『土を生じ、木を剋す。火行發令。我が声、我が言葉、我が言の葉に応じよ。急々如律令勅、勅令である』
滑らかに紡ぎ出された言葉が言霊を宿す。絶大なる言霊はその力を具現化していく。
盛大な爆発音と共に熱風が吹き付け……目の前にそびえ立っていたはずの扉はブスブスと黒煙を上げて燃え落ちていた。

「……行くぞ」
焼け落ちた扉を呆然と見つめていたルギネス達が澪の声にはっと我に返る。
走り出した澪を追うように全員が走り出した。
それに気づいたエレンが軽やかに城門から飛び降りる。
自分の体の数倍の距離から落ちたにも関わらず、着地姿勢には一切の乱れを感じさせないまま駆け出した。
「すっげー、魔法かぁ!もっと早く言っとけよな」
ひゅうと口笛を吹いてカサンドラが賞賛する。
「……ドウモ」
澪が前を見据えたまま大して嬉しくもなさそうに、寧ろ瞳に複雑な色を湛えて答えた。
この前よりも濃い血の匂いが街に充満している。

先ほどの爆発音に驚いたであろう魔物兵達がぐったりした商人を打ち捨ててこちらへと向かってきた。
予想以上に数は少ない。5-6体だろうか?だが。
「……っ」
初めて見た魔物兵の姿に思わず琴菜と澪が眉を顰めた。
獣のような頭に王家紋のついた重厚な鎧を着込み、人とも獣ともつかない体で二足歩行している。
だらだらと口からはひっきりなしに涎が溢れ、手にもった武器にはべったりと血糊が付着していた。
そしてなによりその瞳。凄まじい敵意を湛えながらも何も見えていないような、そんな不安定さを感じさせた。
一言で言ってしまえば、醜悪だった。
「なん……だ……?」
他より一回り大きい魔物兵の一人が不快感も露にうなった。
人の声でありながら獣の声に酷似している。
「……ここ……は王家の……管轄区だ……知って……入り込んだのか……?」
「どっちでも、オナじ!ハイったら、シぬ!」
傍にいたもう一人の魔物兵が顔をゆがめながらゲギャゲギャと下品に笑った。
「……何が目的でここに来ている」
一歩前に出たルギネスが問いかけた。声こそ静かだが、激情を押し殺しているようにも聞こえた。手は剣の柄にかかっている。
魔物兵が傲慢そうに鎧を鳴らす。
「それ…は……こちらの……セリフ、」
「綺麗なお姉さんに振られっぱなしなんだよね~」
何時の間にか実体化していたジルコンが話を遮った。
突然現れた男に驚きを隠せず魔物兵達がざわめく。
「ナニ?」
魔物兵が短く吼えた。
「待て……お前、その……気配……」
ジルコンを呆然と見ていた魔物兵が何かに気づき、総毛だって構える。
血走った目がぎょろりと動いた。
「しつこい男って嫌われるんだよー?やだねぇこれだからモテナイ君は」
挑発するようにため息をつくジルコンを魔物兵が巨大な斧で指し示した。
「殺せ……!あれの同類……だ……!」
その声と同時に色めきたった魔物兵達が跳躍した。

大振りの第一撃を俊敏に避ける。
着地したときにはルギネス、カサンドラはその剣を抜いていた。
琴菜はそばにいた春日を抱えて飛び退くと、背中に春日をかばったまま腰に差していた剣に手をかけた状態で間合いを図っている。
エレンも腰のベルトに結んでいた愛用の鞭を構え、澪は自然体に近い形で立ちながらも出発時に渡された剣の鯉口を切っている。
挑発するだけしてジルコンは姿をかき消しているがその場の緊迫感に気付く者はいない。
「……一応、アレでもこちらの切り札だ。簡単に消されては困る」
切っ先と首を僅かに右に傾ける独特の構えを崩さずにルギネスは剣呑な光を帯びた瞳で三体の魔物兵を見据える。
「んで、そっちがやるならこっちも手加減出来ないよなぁ?」
危険な笑みを浮かべてカサンドラは構えた剣を揺らして挑発を重ねる。
「カンカツク、ハイった。おマエらコロすの、おれのシゴト」
醜悪な顔を歪めて嘲笑すると一体がカサンドラに斬りかかる。それを合図に乱闘になった。