上腕部の皮膚変色痕(アザ)と司法解剖鑑定書
司法解剖鑑定書
朝木明代の遺族(朝木大統・朝木直子氏ら4名)が起こした
救急隊裁判で被告・東京都から提出されたことにより、1999年(平成11年)4月28日に矢野穂積・朝木直子両「市議」が入手したもの。
原告・遺族側は、救急隊裁判では、本件鑑定書について、「花子〔明代〕の死亡から一〇二三日間もの期間を経過してから作成されたものである上、鑑定人の署名押印さえ欠いていることからすれば、信用することができない」などと主張していた(東京地裁は、「鑑定書が花子の死亡から一〇二三日後に作成されたこと、及び鑑定人の署名押印がないことは認められるが、鑑定の前提となる花子の解剖自体は死後約半日経過時に開始されたものであり、検査データは正確なものと認められること、鑑定人は、この解剖所見と立会警察官及び本件救命センターの診療録から聴取ないし看取した臨床経過を併せ考慮したうえで結論を出したものであって、鑑定の手法も合理的であること、鑑定人の署名押印の欠落という形式的欠陥は、鑑定内容自体の信用性を直ちに左右するものではないこと等に照らすと、鑑定書に信用性がないとまでいうことはできない」として、遺族側の主張を排斥)。
矢野・朝木両「市議」はその後、本件鑑定書に上腕部内側の皮膚変色痕(アザ)についての記載があったことから、これを朝木明代市議の「他殺」を根拠づける決定的資料として利用するようになる。しかし、「自殺」と断定できないことの根拠として(後掲『月刊タイムス』事件)、または矢野「市議」らが「他殺」を疑ったことの相当性を認定する根拠として(後掲第1次ひがしむらやまFM事件・『東村山の闇』事件)認められたことはあっても、本件記載を根拠に「他殺」の真実性が認められたことはなく、逆に「創価問題新聞」事件では「他殺」の真実性が強く否定された。
乙(被告側)第19号証 鑑定書(作成日は平成10年7月21日 10月23日署名なし)
第一章 緒言
被疑者氏名不詳に対する殺人被疑事件につき、平成7年9月2日、東京地方検察庁八王子支部検察官検事小泉昭は東京地方裁判所八王子支部裁判官宮原田國男執行の鑑定 処分許可状(平成7年9月2日付)に基づいて、被害者朝木明代の死体を解剖のうえ、下記事項を鑑定するよう私に嘱託した。(略)
第二章 検査記録
住所 〔略〕
氏名 朝木明代
年齢 50歳(昭和19年9月4日生)(略)
第三章 説明
一、 創傷の部位、程度
ア、 胸腹部及び背面に以下の損傷を認める。
1)右胸部、正中の16cm、右乳頭の高さの下方10cmの部を中心に、上下に14cm、幅13cmの範囲に、淡紫青色、紫赤色及び淡赤褐色の栗粒大から4×5c mの皮膚変色部稍多数、左右方向に走る淡赤褐色線状表皮剥脱を認める。
2)右側腹部から背部にかけて、正中の右方21cm、臍部の高さの上方4cmの部を中心に、上下に7cm、幅14.5cmの範囲に、紫青色、淡赤褐色、紫赤色の蚤刺大から9×5cmの皮膚変色多数を認める。
3)胸腹部正中を縦断切 開して開検すると、前記創2)、3)の皮下脂肪織及び筋肉内に出血を認める。右胸部、正中の右方3cm、右乳頭の高さの上方4cmの部を中心に、上下に3.5cm、幅4cmの皮下脂肪織及び筋肉表層内に出血を認め、相当する外表に損傷を認めず。
イ、 頚部に以下の損傷を認める。
4)第7頚椎椎体部前面に略左右方向に向かう損傷を認め、相当する外表に明らかな損傷を認めず。
ウ、 上肢に以下の損傷を認める。
5)右〔引用者注・「左」の誤り〕上腕部後面、肘頭部の上左方4cmの部を中心に、2×2.5cmの紫青色皮膚変色部。左上腕部内側下1/3の部に、上下に7cm、幅3cmの淡赤紫色及び淡赤褐色皮膚変色部。加割すると皮下出血を認める。
6)左手背部、拇指側に小豆大から小指頭大の淡赤褐色皮膚変色部3個、小指側に2×1.5cmの淡赤褐色皮膚変色部を認める。
7)左第1指中央部手背側、1.5×1cmの淡赤褐色皮膚変色部。左第2指末節部手背側、1×0.5cmと0.7×1.2cmの淡赤褐色皮膚変色部夫々1個。左第2指中節関節部手背側、半米粒大淡赤褐色表皮剥脱。左第3指末節関節部手背側、0.7×0.5cmの淡赤褐色皮膚変色部。加割すると皮下出血を認める。
8)右上腕部内部、腋窩の高さの下方11cmの部を中心に、上下に5cm、幅9. 5cmの皮膚変色部を認める。加割すると皮下出血を認める。
9)右前腕部内側、肘頭部の高さの下方9cmの部を中心に、上下に5.5cm、幅6.5cmの範囲に栗粒大以下の紫赤色皮膚変色部及び1×1.6cm以下の 紫青色皮膚変色部多数を認める。加割すると皮下出血を認める。
〔後略〕
- 顔面
- 胸腹部
- 背面
- 右胸腹部
- 右腰部、右臀部、及び右大腿部の損傷
- 頚椎の損傷
- 右肋骨前面の骨折の状態
- 左肋骨骨折の状態
- 右肋骨背面の骨折の状態
- 肺損傷の状態
- 下肢の状態
- 左足部内側の損傷
- 左脛骨及び腓骨の骨折
- 左下腿部の縫合創
- 右足背部の損傷
- 右腓骨骨折
(上腕部内側の皮膚変色痕の写真はなし)
鈴木庸夫名誉教授の意見書・鑑定書
倒れていて、救急隊などにより担架に乗せられる際、両腕を掴まれた可能性の他、他人と揉み合って上腕を強く掴まれた可能性が推認できる。
……
転落現場で救急隊により担架に乗せられる際、両腕を掴まれた可能性の他、他人と揉み合って上腕を強く掴まれた可能性も推認できる。仮に、救急隊が現着して、担架に乗せる際、両腕を掴んだ事実がないと、或いは、救急隊現着、既に心肺停止状態であったとすると、後者の可能性が高くなる。
以上、鑑定資料、検査記録、並びに考察に述べた理由により、次のように鑑定する。
1.皮下出血を伴う左上腕部内側の皮膚変色部の形状は、長径7cm、短径3cmの楕円形のもので、右上腕部内側の皮膚変色部の形状は、長径9.5cm、幅5cmの楕円形のものと考えるのが妥当である。
2.皮下出血を伴う上腕部内側の皮膚変色部が生じた原因は、自分で強く掴むとか、救急隊員が搬送する際に強く掴むとか、落下の際、手すりにより生じたことも、落下の途中で排水縦パイプに衝突して生じたこととか、落下して地面のフェンスとか、排気口との衝突で生じたこともあり得ず、従って、他人と揉み合った際に生じたことが最も考え易い。
3.皮下出血を伴う左右上腕内側の皮膚変色部は、死亡にごく近い時期か、それより少し前に生じたと見るのが妥当である。
- 鑑定補充書抜粋(作成日不明、エアフォース〈「創価問題新聞事件」最高裁判決〉第2回より)
上腕内側に皮下出血がある場合は、まず第一に他人との揉み合いなど、争った跡を推定するのが「法医学の常識」である。個々の例では、他人と争った原因以外の原因で、上腕内側に皮下出血が生じ得る可能性を検討し、それらのすべてが否定されれば、この例の上腕内側の皮下出血は他人と争った際に生じたと言えるのである。
ところで、亡朝木明代殿の左右上腕内側の皮下出血の成因として「他人と争った」以外の成因はすべて否定されるのであって、従って、亡朝木明代殿の左右上腕内側の皮下出血は、他人と揉み合った際に生じたこと以外は考えられず、他人と争った際に生じたと考えるのが妥当と認められる。
「東村山市民新聞」関連ページ
司法解剖鑑定書 第1章 緒 言
「 被疑者氏名不詳に対する殺人被疑事件につき、平成7年9月2日、東京地方検察庁八王子支部検察官は東京地方裁判所八王子支部裁判官発行の鑑定処分許可状(平成7年9月2日付)に基づいて、被害者朝木明代の死体を解剖の上、下記事項を鑑定するように私に嘱託した。」
(2)「殺害」の決定的証拠に対する恣意的素人判断
大谷裁判長(高裁7民判決)は、司法解剖鑑定書に関する法医学者の見解に対して、異論を唱えているが、いずれもこどもじみたケチつけにすぎず、論評するに値しない。
鈴木鑑定意見書に対して、仮に、大谷裁判長(高裁7民判決)が異論を唱えたいのなら、法医学には素人の裁判官であるから、すくなくとも、チバ側に鈴木鑑定意見書とは見解を異にする他の法医学者の鑑定意見書を提出させるべきであったのに、これをしなかったのであるから、大谷裁判長の高裁7民判決が失当で説得力がゼロであることは、議論の余地がない。
(2)「殺害」の決定的証拠に対する恣意的素人判断
東京高裁第7民事部(大谷禎男裁判長)は、司法解剖鑑定書に関する法医学者の見解に対して、異論を唱えているが、いずれもこどもじみたケチつけにすぎず、論評するに値しない。
鈴木鑑定意見書に対して、仮に、東京高裁第7民事部(大谷禎男裁判長)が異論を唱えたいのなら、法医学には素人の裁判官であるから、すくなくとも、チバ側に鈴木鑑定意見書とは見解を異にする他の法医学者の鑑定意見書を提出させるべきであったのに、これをしなかったのであるから、東京高裁第7民事部(大谷禎男裁判長)が失当で説得力がゼロであることは、議論の余地がない。
しかも、東京高裁第7民事部(大谷禎男裁判長)は、前記判決の中で、「相当性」に対する極めて恣意的解釈を前提として、他判決を勝手に批評するなどしている。
「創価問題新聞」事件における矢野・朝木両「市議」の上告受理申立理由書(抜粋)
(エアフォース〈「創価問題新聞事件」最高裁判決〉
第2回より。上告は不受理とされた)
(法医学者の鑑定意見が証拠となっている場合における、裁判所の判断の在り方に関する最高裁判例)
最高裁判例は「責任能力判断の前提となる精神障害の有無及び程度等について、専門家たる精神医学者の鑑定意見等が証拠となっている場合には、これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、裁判所は、その意見を十分に尊重して認定すべきである」(最高裁判例)
とし、「専門家の鑑定意見等を採用し得ない合理的な事情が認められる」場合というのは、「専門家たる精神医学者の鑑定意見等が証拠となっている場合には、これを採用し得ない合理的な事情が認められる」場合であるとしている。
……本件司法解剖鑑定書の記載事実及び「上腕内側部に皮下出血を伴う皮膚変色痕の存在」に関する判断についても、臨床経験のある法医学者の意見が鑑定等として証拠となっている場合には、同様に「これを採用し得ない合理的な事情が認められるのでない限り、裁判所は、その意見を十分に尊重して認定すべきである。」
申立人ら(矢野、朝木)が鑑定を委嘱した鈴木庸夫名誉教授は、各鑑定書末尾に記載されている通り、学識、経歴、業績に照らしても申し分がなく、鑑定において採用されている前提資料の検討も十分であって、結論を導く過程にも、重大な破たん、遺脱、欠落は見当たらない基本的に高い信用性を備えているというべきである。
然るに、原判決は、「司法解剖鑑定書には、本件損傷が他人と争ってできた可能性があることをうかがわせる記載はなく」とした点で、すでに「法医学の常識」を踏まえない恣意的解釈により初歩的な誤りをおかしていて、むしろ「朝木明代議員の上腕内側部に存在する皮下出血を伴う皮膚変色痕は他人と揉み合いなど、争った跡であることが推認できる」とした鈴木鑑定が基本的に信用するに足りるものであるにもかかわらず、これを採用できないものとした原判決の証拠評価は失当であって、……原判決を破棄しなければ著しく正義に反する。
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最終更新:2011年01月21日 05:58