まきやすとも・写真著作権侵害裁判資料


原告の訴状

損害賠償等請求事件

訴訟物の価格 金1040万円
貼用印紙額
金5万3000円

第1 請求の趣旨
1 被告は別紙写真目録1の写真を掲載したビラを自己または第三者をして頒布してはならない
2 被告は、別紙写真目録1の写真を掲載したビラを廃棄せよ。
3 被告は、別紙写真目録2の写真を掲載したビラを、自己または第三者をして頒布してはならない。
4 被告は、別紙写真目録2の写真を掲載したビラを廃棄せよ。
5 被告は、別紙写真目録3の写真を掲載したビラを自己または第三者をして頒布してはならない。
6 被告は、別紙写真目録3の写真を掲載したビラを廃棄せよ。
7 被告は、別紙写真目録4の写真をインターネット上のウェブサイトにおいて送信可能化してはならない。
8 被告は、原告に対し、金400万円及びこれに対する訴状到達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9 訴訟費用は被告の負担とする
 との判決並びに仮執行宣言を求める。

第2 請求の原因
1 当事者について
(1)原告
(略)
(2)被告
 被告は、昭和55年3月に東洋大学法学部を卒業し、建設会社勤務などを経た後、中古自動車の輸出・販売等を業とする大東亜物産株式会社の代表取締役に就任している。
 被告は、政治活動家でもある。被告は、「まきやすとも 政経調査会」という名称で、インターネット上のウェブサイトにブログも公開している(※URL)。また、公職の候補者として選挙に立候補したこともある。
2 本件写真について
 1.撮影及び公表の経緯
(略)
 2.本件写真の著作物性
(略)
 3.原告が著作者であること
(略)
3 侵害事実について
(略)
 被告は、高倉議員の公式ウェブサイトから本件写真のデータをダウンロードする方法を利用し、原告の許諾を得ることなく、本件写真を、以下のとおり、各種ビラ、自らが管理するインターネット上のウェブサイト、街宣カーに設置した看板にそれぞれ転載した。
 1.本件ビラ1(甲3)――複製と街頭頒布
(略)
 ウ また、被告は、被告の政治活動に協力する複数の者と、平成21年6月17日及び同月22日の両日、中野区内のJR中野駅北口ロータリー付近等で、通行人らに本件ビラ1を多数頒布した。
 1.本件ビラ2(甲4)――複製と街頭頒布
(略)
 ウ また、被告は、被告の政治活動に協力する複数の者と、平成21年6月17日、中野区内の西武新宿線野方駅前付近等で、通行人らに本件ビラ2を多数頒布した。
 1.本件ビラ3(甲5)――複製と街頭頒布
(略)
 ウ また、被告は、被告の政治活動に協力する複数の者と、平成21年6月26日に千代田区霞が関の東京地方裁判所正門前で、通行人らに本件ビラ3を多数頒布した。
 1.ウェブページ(甲6)への転載(アップロード)
(略)
 イ 被告は、平成21年6月21日ころ、別紙写真目録4の写真を、自らが管理するインターネット上のウェブページ( ※URL、以下「本件ウェブページ」という。甲6――被告ウェブページ。)に掲載できるようウェブサーバーにアップロードし、インターネットを通じて、不特定多数の者が本件ウェブページにアクセスし閲覧することが可能な状態にした。
 1.街宣カーの看板(甲7)への掲載――複製
(略)
 イ 被告は、平成21年6月中旬ころ、別紙写真目録5の写真を掲載した街宣カー(街頭宣伝活動用自動車「練馬●●●●●●」)の車体上部に設置する看板(「公明党・創価学会の犯罪者/詐欺師高倉良生都議会議員」などと大書された看板。以下「本件看板」という。甲7――看板)を作成した。
 ウ また、被告は、6月末ないし7月初めころ、本件看板の写真部分のうち高倉議員の両目に目隠し様の白いテープのようなものを張り付けるという改変を加えた(甲8――改変看板)
4 著作権及び著作者人格権の侵害について
 1.著作権侵害
 ア 原告は、本件写真の著作権者として、本件写真につき、複製権及び譲渡権を有する。
 しかるに、被告は、原告の許諾を得ることなく、本件写真を、本件ビラ1、本件ビラ2及び本件ビラ3をいずれも街頭で多数人に頒布して譲渡した。
 よって、被告は、本件写真の複製権及び譲渡権を侵害している。
 イ 公衆送信権(送信可能化権)侵害
 また、原告は、本件写真の著作権者として、本件写真につき、公衆送信権(送信可能化権)を有する。
 しかるに、被告は、原告の許諾を得ることなく、本件写真を、本件ウェブページにおいてインターネットを通じ不特定多数の者がアクセスし閲覧することが可能な状態にした。
 よって、被告は、本件写真の公衆送信権(送信可能化権)を侵害している。
 1.著作者人格権侵害
(略)
 イ 加えて、被告は、本件ビラ1を作成するに際し、本件写真の縦と横の比率を変え、本件写真が横伸びした様な状態にした。
(略)
 ウ さらに被告は、6月末ないし7月初めころ、別紙写真目録5の写真の高倉議員の両目の部分に目隠し様の白いテープのようなものを張り付けるという改変を加えた(甲8――改変看板)。顔写真にわざわざ目隠しをするなどという行為は、あたかも犯罪者であるかのような悪印象を見る者に植え付け、増長させるような、是認し難い改変である。
 エ 被告による上記ア、イ及びウの改変行為は、著作者人格権たる同一性保持権を侵害している。
 これらの改変は、イメージ写真の出来栄えを台無しされたという意味において、到底是認できない。
 そもそも、各種ビラや看板が、一方的に高倉議員を犯罪者と決め付けた悪宣伝をしている。原告は、そのようなビラ等に、改変されたイメージ写真を用いられることで、改変に伴う一層耐え難い苦痛を被ることになる。
5 原告の請求内容について
 1.本件ビラ1、本件ビラ2及び本件ビラ3の頒布差止請求と付帯請求
(略)
 1.送信可能化の差止請求
(略)
 1.損害賠償
(略)
 ア 著作権侵害
   (略)
 1.以上のとおり、本件ビラ1、本件ビラ2、本件ビラ3、本件看板及び本件ウェブページに関し、本件写真の著作権侵害による相当な被害額の認定は、金200万円を下らない。
 イ 著作者人格権侵害
 原告は、多くの市民に高倉議員の人柄や都政への熱意が伝わるよう、写真を見た人が受けるイメージに格段の配慮と職業写真家としての執着をもって、本件写真を撮影した。
 本件写真の改変は、本件写真から受けるイメージを文字どおり台無しにするものである。被告は著作者である原告が本件写真に込めた思いなど一顧だにしていない。それどころか、悪宣伝のビラ等に、改変した写真をあえて用いたのである(甲3、同5)。
 加えて、本件看板の高倉議員の目に白いテープのようなものを張り付けて、同議員が犯罪者であるかのような悪印象を植え付けるがごとき改変に至っては、撮影した原告の思いをあざ笑うがごとき態度すら見られる(甲8)。
 以上のとおり、被告は、原告に耐え難い苦痛を与えたといわなければならない。このような、被告の行為によって踏みにじられた原告の著作者人格権侵害による非財産的損害は、金150万円を下らない。
 ウ 弁護士費用
 原告が本訴提訴を提起することによって生じた弁護士費用は、少なくとも金50万円の範囲で相当因果関係のある損害として評価すべきである。
 エ 小括
 以上のとおり、損害額の合計額は、金400万円である。
5 結語
 よって、原告は、請求の趣旨記載の判決を求め、本件訴訟を提起する。
(ソース:りゅうオピニオン

被告の答弁書(平成21年8月28日付)

(略)
第3 被告の主張
 本訴訟は全く根拠のないものであり、原告は即刻訴えを取り下げることを要求する。
 本訴訟は被告の政治活動を萎縮させることを目的とした威圧行為であり、高額な金員を略取することを目的とした脅迫的な行為である。
 原告は被告を著作権法違反で警視庁に刑事告訴したと聞く。
 今般の不当なる高額損害賠償請求により、被告は精神的に深刻な打撃を受けた。
 また、刑事告訴によって、いつ逮捕されるとも分からない恐怖を感じ、平穏なる日常生活を阻害された。
 以上の被害を持って、被告としては原告に対し損害賠償請求を行う用意があることを伝えておく。
 また、虚偽の事実を以って警視庁に刑事告訴した場合は、虚偽申告罪に該当するため、原告を警視庁に刑事告訴する用意があることを伝えておく。

第4 被告が行った行為は著作権の侵害には該当しない理由
 1 原告が被告を警視庁に対し刑事告訴したことに対し、警視庁は捜査の結果、犯罪性はないと判断した。被告に対して逮捕は勿論の事、事情聴取すらしていないことが何よりの証拠である。
 2.高倉良生(訴外)は都議会議員という公人であり、本人の運営するホームページは広く一般に開放されたものである。不特定多数の人間が自由に閲覧できるものであり、これを転載することは社会通念上なんら問題ないと考えるのが正常である。
転載した内容が、高倉良生を非難するものであるか、崇め奉るものであるかは、この際関係ない。
 3.(※ガソリン代の水増し請求について説明)
 この事実を、広報宣伝するためのチラシを作成する際に高倉良生都議の顔写真を必要としたもので、顔写真の使用は適法である。
 4 原告は「各種ビラや看板が、一方的に高倉議員を犯罪者と決めつけた悪宣伝をしている」(訴状6~7ページ)、「本件写真が高倉議員の悪宣伝のために用いられるなどという事態は容認するはずがない」(訴状8頁)と、被告が作成したビラの内容を問題にしているが、高倉良生都議の行ったガソリン代金の水増し請求という犯罪行為を非難したことが、適法であるか否かは現在、東京地裁民事第9部弁論係において審理中なので、本訴訟において関知しない。
 5.原告は平成21年6月19日、「文書配布禁止当仮処分命令申立」を行っている
 この中で、「申立の趣旨」として、
  1 写真を表示したビラの頒布の禁止
  2 写真を表示したビラに対する債権者の占有を解く
  3 写真の複製・頒布を行わない
 の3点のみを申立てた。そしてこれらの申立は6月29日に決定され実行されている
 にも拘わらず、原告は本訴訟において「3 侵害事実について」で新たに
「(4)ウェブページ(甲6)への転送(アップロード)」
「(5)街宣カーの看板(甲7)への掲載――複製」
 取り上げてきた。
 以上の(4)(5)については原告が「文書配布禁止等仮処分命令申立」を行った6月19日の時点で明らかになっている事実であるが、当時は全く問題にしなかったのに本訴訟では問題にしている。
 これは単に多くの損害賠償金をせしめ取るための方便であり、原告はなんら実質的な被害を受けていないと考えるのが妥当である。
 6 6月29日発せられた「仮処分決定」は不当なものであり承服いたし難い。
(略)
 7 「4(2)著作者人格権侵害」(訴状6ページ)
  1.本体写真をモノクロームに改変した事は、ビラを印刷するに当たり、費用を抑えることが目的である。
  2.縦横の比率が改変されたのは、被告がコンピュータ技術に熟練していないために操作の過程で多少横に広がったものである。高倉良生都議を太らせて見せる事で、イメージダウンを図ろうという意思ではない。
 以上の二点に関しては6月26日に実施された審尋の際に説明し、原告(当時の債権者)は納得し、本件についてはなんら意義を差し挟まなかった。
 1.目隠し用の白いテープを貼り付けた件
 宣伝カーにおける看板上の写真についてはモノクロームに改変されておらず、また縦横比も原版のままであったため、原告は仮処分申立の対象にはしなかった。
 よって、被告は当時の状況のまま使用することを何ら制約される立場ではなかった。
 しかし、配布用ビラにおいて写真の使用を禁止する処分が発せられたので、自発的に気を使って当該写真そのものを衆人の目に晒す事を控え、原告の主張する著作権に配慮した結果、目線をいれたものである。
 尚、高倉良生議員が犯罪者であるという事をアピールするならばあえて目の部分にテープをはる必要はない。また、犯罪者でありながら微罪であったりして顔の一部を隠蔽するという意思があるならば通常は黒色のテープをはるものである。
 いずれにしても目の部分を隠されて印象が悪くなったと主張するのであれば、これは高倉良生都議が主張すべきであり原告が著作権を楯に論じる内容ではない。
 5 結論
 被告の行った行為はなんら原告の著作権を侵すものではなく、損害賠償請求の対象とはならない。原告は直ちに訴えを取り下げるべきである。
(ソース:りゅうオピニオン

原告第1準備書面(平成21年11月20日付)

第1 本件写真の使用は著作権法上の引用とは認められないこと
1 被告は、本件写真の使用に関して、「著作権法第32条に照らし合わせても、有権者に情報を提供するという目的において、対象者である高倉良生をイメージするための引用であり、何ら違法性はない」(6頁)と主張するが、被告による本件写真の各掲載行為はいずれも著作権法上適法な引用とは認められない。
2 著作権法32条1項は、引用が適法となる要件として、「公正な慣行に合致」し、「引用の目的上正当な範囲内で行われる」ことを要求する。
「公正な慣行に合致する」とは、引用し、引用される著作物の性質および種類、引用の目的・態様等に照らし、通常、著作物の引用行為としての実態があり、かつ、それが社会通念上妥当と認められる場合をいい、引用の必要性ないし必然性が一般的に認められることが必要であると解されている(文化庁文化部著作権課内著作権法令研究会編「著作権関係法令実務提要」538頁[第一法規]、金井重彦・小倉秀夫編「著作権法コンメンタール(上巻)」[東京布井出版]402頁・桑原雄一郎執筆)。また、「引用の目的上正当な範囲内」といえるためには、マル1引用して利用する側の著作物と、引用して引用される著作物とを明瞭に区別して認識することができること、マル2引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される著作物との間に前者が主、後者が従の関係(主従関係)があると認められること、マル3引用の範囲が引用の目的上必要最小限度の範囲内であること、が必要とされる(前掲著作権法コンメンタール404頁)。
3 ところで、本件各ビラ(甲3~5)、本件ウェブページ(甲6)及び本件看板(甲7,8)の各記述(以下「本件各記述」という)に本件写真自体への言及は一切なく、また本件写真によって本件各記述の内容が補足される等の関係性や関連性も全くない。
 本件各記述が、高倉良生の実名や公明党都議会議員との肩書きまで記載して対象人物を特定していることからすれば、本件写真を引用せずとも本件各記述の内容は読み手に十分伝えられるのであって、本件写真を用いる必要性ないし必然性は全くない。
 以上、要するに著作物の引用行為としての実態がなく、社会通念上の妥当性、引用の必要性ないし必然性のいずれもが到底認められない。
4 また、本件写真は、本件各ビラ、本件ウェブページ及び本件看板で、いずれも冒頭その他の主要な目立つ部分に、相当程度のスペースを占める大きさで用いられている。しかも、本件各記述の内容が本件写真自体に言及していることがないことから、本件写真は単に人目を引くためだけに用いられているのであって、主従関係を認め得ない。
 以上、要するに本件各記述と著作物との主従関係も到底認められない。
5 以上のとおり、被告による本件写真の各掲載行為は、「公正な慣行に合致」するものでも、「引用の目的上正当な範囲内」のものでもなく、著作権法32条1項による適法な引用とは到底認められない。
第2 その他、自己の行為の正当性を述べる被告の主張にはいずれも理由がないこと
1 原告は、本件写真の著作権を放棄した事実はないし、被告に使用許諾を与えた事実もない。
2 被告は、高倉議員のホームページは、都議会議員という公人が、広く都民または国民に対し自己宣伝を行うものであり、自らが複数の写真を掲載して、閲覧者に己の存在をアピールしていることを根拠に、あたかもそのような事実の下では著作権侵害とはならない旨を主張する。
 しかし、高倉良生がホームページに自ら写真を掲載して広く閲覧に供していることと、そこに掲載された他人の著作物である写真を勝手に使うことは全く別の次元の話である。
 被告の主張は独自の見解であって、被告による本件写真の使用を何ら正当化するものではない。
3 また、被告は、自身が何ら利益を得ていない、当該ホームページ上には著作権者名及び無断転載を禁止する表示がない、同種写真が他のホームページ上にあり使用可能であるなどとも主張する。
 しかし、被告が利益を得たか否かは著作権侵害の成立を左右する者ではない。また、他人の著作物は無断で使用してはならないのが原則であり、むしろ自由な利用・転載等を許可する旨の表示がなければ、禁止する旨の表示がなくとも、無断で用いることは法的に許されない。被告の主張は原則と例外を取り違えている。もとより、著作権者名が表示されなければ、直ちに無断で利用してよいということにはならない。
 また、都議会のホームページ上の写真(乙7)について、被告は「利用申請書」を都議会事務局に提出すれば許可されるなどと主張しているが、明らかに誤りである。原告は、都議会ホームページ上の写真について、当該ホームページ上に掲載する限りにおいて了承しているにすぎず、都議会において著作権者の了解なく他人に使用させることはできないのであって、無断で利用すれば当然に著作権侵害の問題が生ずる。
 よって、被告の上記各主張も被告の本件写真の使用を何ら正当化するものではない。
4 さらに、原告が何ら利益を失っていない、6月22日以降仮処分が決定される以前より著作物目録の写真を使用していない、ウェブサイト上のブログと広報宣伝車の写真に関しては仮処分の申立て内容に入っていなかった、いまだ刑事告訴の処分が行われていないなどの主張もしている。
 これらの主張が、本件写真の無断使用を正当化する事情になり得ないことは明らかで、個別に反論するまでもなくいずれも失当である。
第3 結論
 以上のとおり、被告には、本件写真の利用行為を正当化し適法と認定してもらうだけの理由は一切ない。被告の違法行為は明らかである。
(ソース:りゅうオピニオン

原告第2準備書面(平成21年12月10日付)

第1 本件各ビラの複製枚数
 被告は、自らが作成した本件各ビラの複製枚数につき、本来ならば容易に明らかにすることができるのに、あえてこの点を明らかにしていない。
 しかし、被告は自信のブログ(平成21年7月5日)において、「政経調査会 まきやすとも」の名称を付したビラを「ン万枚」配布する予定であった旨記述している(甲11)。
 このように被告は、本件ビラ3と同様に「政経調査会 まきやすとも」の名称を付したビラを数万枚も準備して配布しようとしていたというのであるから、本件各ビラの合計の複製枚数についても、少なくとも1万枚は下らないことが容易に推認できる。
第2 著作権の行使につき受けるべき金額
1 原告は、被告が本件写真を無断で、本件各ビラ、本件ウェブページ、本件看板に掲載したことに関して、次のとおり、著作権法114条3項に基づき、著作権の行使につき受けるべき金額に相当する額を損害として請求する。
2 一般的な写真の使用料金としては、例えば、自然・生物に関する写真・映像等の作品を提供する「Nature Production」が公開している写真国内使用標準料金表(甲12)においては、チラシ(半面まで)で4万円、インターネット(トップページ、3か月)で5万円、ポスター(店頭・車内吊り・車額、B3以上)で20万円となっている。また、写真撮影、写真貸し出し等の業務を行う宝泉堂(縄田頼信写真家事務所)が公開している写真貸し出し(著作権使用)料金表(甲13)では、チラシ(1/2以下)で4万円、インターネット(3か月以内)で3万円、ポスター(1枚物、A2-B2)で22万5000円となっている。
 これらに従い、本件各ビラをチラシ、本件ウェブページをインターネット、本件看板をポスターに使用するものと考え、通常の使用料を計算すると、Nature Productionで29万円、宝泉堂で29万5000円となる。
3 しかるところ、被告は高倉議員を誹謗中傷する目的で、見る者をして一見して高倉議員に対する悪印象を抱かせるように、「犯罪者」「詐取」「詐欺罪」「詐欺師」などという高倉議員を犯罪者扱いする言葉を並べて、無断で本件写真を本件各ビラ、本件ウェブページ及び本件看板にそれぞれ掲載し、高倉議員の人物像や都政にかける情熱を表現しようとした原告の本件写真の制作意図、創意工夫を台無しにした。
 そして、本件各ビラを前記のとおり大量に複製したうえで公衆の往来の激しい場所で頒布し(甲11,14,15)、本件写真をインターネット上にアップロードして無限に複製が可能な状態を作出し、さらに本件看板を掲げた街宣車を往来の人の目を引くように街宣テープを流しながら市中で走行させたり、街宣車の前で街頭演説を行うなどした(甲14)。
 このように、被告は、本件写真を無断で使用しただけでなく、著作者である原告の制作意思に著しく反し、原告が絶対に許諾を与えることがないような態様で原告の著作権を侵害している。
4 このような、被告のきわめて悪質で違法性の強い著作権侵害行為についての著作権の行使につき受けるべき金額に相当する額としては、常識的な範囲内での写真の利用行為を想定した一般の使用料金を基準に算定した金額とすべきではなく、通常の許諾の場合の約10倍とするのが相当である〔Nature Productionの利用規約では「無断使用、目的外使用につきましては、当該使用料の10倍を申し受けます。」とされ(甲12の2)、宝泉堂の料金表でも無断使用の場合「当該使用料金10倍以上」と定められている(甲13)〕。
 したがって、本件においても、著作権の行使につき受けるべき金額に相当する額としては、少なくとも200万円を下ることはない。
(ソース:りゅうオピニオン

被告第2準備書面(平成22年2月5日付)


2009年10月10日:ページ作成。
2009年12月17日:原告第1・第2準備書面を追加。
2010年2月17日:被告第2準備書面に関するリンクを追加。
最終更新:2009年12月17日 04:36