1.2.世界のアウトリガーカヌー
元々、太平洋の島々では宗教的な意義を持つカヌー競争が盛んに行われていました。それぞれの島や集落は屈強な若者を揃え、先祖への祈りをこめ、また豊穣を祈ってアウトリガーカヌーの競争に臨みました。しかし、キリスト教の教えによって旧来の文化は否定され、抑圧の時代がこれら伝統を消し去ってしまったのです。
一旦滅びかけた太平洋の民族の象徴とも言うべきアウトリガーカヌーの文化は、20世紀に入ってからハワイが観光地として発展するに伴い、レジャーやスポーツとして復活を遂げました。島を訪れた人々は、この素晴らしい舟に乗って海を楽しみ、その魅力にとりつかれたのでしょう。こうして、ハワイではアウトリガーカヌーのレースイベントが盛んに行われるようになりました。最も典型的なレースが、ハワイ諸島のモロカイ島からオアフ島までの海峡を横断するMolokai Hoeです。現在でもMolokai Hoeはアウトリガーカヌーの最高峰レースとして毎年世界中からチームが集まり、過酷なコンディションの下、熱戦が繰り広げられています。
ハワイで高まったアウトリガーカヌーの人気は、一気に他のエリアへも波及しました。このキッカケとなったのが、水泳競技で名を馳せたハワイアン、Duke Kahanamukuです。彼はアメリカ代表としてオリンピックで活躍しただけでなく、世界中のビーチを訪れポリネシアの文化を広めて回りました。Dukeが伝えたのはサーフィンだけでなく、その起源ともいわれるアウトリガーカヌーやポリネシアンのライフスタイルまで幅広いもの。そして、同じ文化圏であるフレンチ・ポリネシア(タヒチ等)、続いてアメリカ西海岸、さらにアオテアロア(ニュージーランド)で、アウトリガーカヌー・レースは人気スポーツへとなっていったのです。
現在ではヨーロッパ、北米、南米、そしてアジアでもアウトリガーカヌーのクラブが組織され、人気は高まる一方です。ロンドンのテムズ川、ニューヨークのハドソン川、フィレンツェのアルノ川をアウトリガーカヌーが進む光景はもはや日常的。この次は東京・大阪の出番かもしれません。
最終更新:2006年04月18日 14:29