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「ここは、どこだ?」
 霧がかかったように、視界が全体的にぼんやりとしていた。すぐ近くでうめき声が上がる、自分以外にも人がいるらしい。
「誰かいるのか?」
 その呼びかけにしばらくしてから応答があった。
「いるよ、……誰?」
 しかし迂闊には動けなかった。足元どころか、自分の手のひらさえ見えない霧の中で動くのは危険だからだ。

 しばらくその場に座り込んでいると、やがて霧は晴れていった。そして、それにともないひとつの大きな建物が見えてきた。それはまるで学校のようだった。すぐ近くにいたらしい人物の姿も見えてきた。知らない学校の制服を着た男子生徒らしかった。彼もまたポカンとした顔で建物と私とを交互に見比べていた。
「君、そこの学校の?」
「知らない、少なくとも私の知っている学校ではないな」
 そして自分が来ているこの制服も、見覚えのないデザインだった。男子生徒がつぶやくように言う。
「目が覚めたら、いつのまにか霧の中で、それで霧が晴れたらいきなり知らない場所にいたんだ……」
「私もそんなところだ」
 私は立ちあがると謎の建物に向かって歩き出した。
「ど、どこへいくの?」
 男子生徒が慌てて私に問う。
「困っていたところで仕方ないだろう。あの建物で電話を借りてタクシーを呼んでとっとと見知った場所に帰るんだよ」
「やだよ、まってよ、独りにしないでよ!」
 情けない野郎が私の後ろについてきた。

 開きっぱなしの門から堂々と侵入し、1階を探索する。人の気配はなく建物は静まり返っている。やはり学校のつもりらしく「保健室」だの「職員室」だの部屋にはプレートがかかっている。私は1階廊下の突き当たりにある「校長室」へと向かい、部屋の扉を開けた。

「ようこそ!伺か学園へ!」
 その言葉で私たちは迎えられた。巨大な机と椅子の中に、金髪のあいつが埋もれるように鎮座していた。
「枝島ァ!! またお前か!」
 思わず私は叫んで校長机を両手で叩いた。枝島は悪びれる様子もなくニコニコしている。
「どうですか? すごくないですか? これ全部今回のゲームのために作ってもらった舞台セットなんですよ。しかも、今回はなんと制服までつけちゃいました! いやあ、比田グループ様様ですよ」
「人を誘拐しておいて言うことはそれだけか?!」
 少し離れたところで男子生徒が恐る恐る聞いた。
「今回のゲームってことは……また、何かするの?」
「はい、僕はそういう質問を求めていました。あなたは100点です。まっさきにツッコミから入るあなたは20点です」
 枝島は立ちあがり、咳払いをして言った。
「あなたたちには「学級委員」となって、これから文化祭を作ってもらいます」
「文化祭?」
「あなたたちはそれぞれA組、B組のリーダーの学級委員です、生徒を集めて、統率し、りっぱな文化的作品をつくってくださいね。作品は何をいくつ作ってくれても買いません、演劇なりカフェなり模擬店なり、好きなようにやってください。どちらのクラスが勝ちか、というのは読者の皆様の投票によって決まる予定です」
「生徒を集めるって何だよ」
「あなたたち「ユーザ」という存在は、右クリックで好きなゴーストを好きなだけ招集する能力をお持ちじゃないですか、その力をここで有効に無駄遣いしてください」
 私はなんだか頭が痛くなってきたが、どうやらここで枝島に文句を言っても仕方がないらしいと悟った。
「しばらく付き合ってやろう」
「はい、よくできました。うるさい方の学級委員さんは2年A組で赤組のリーダー、大人しい学級委員君は2年B組で白組のリーダーですよ。3年生の生徒でも自分の陣営であるかぎりちゃんとあなた方に従ってくれるのでご安心を」

我々の長い闘いはこうして始まった

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最終更新:2015年03月21日 09:27