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カート・ヴォネガット(・ジュニア)

最終更新:

zgok0079

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青ひげ

649 名前:名無しは無慈悲な夜の女王[] 投稿日:2007/08/15(水) 22:38:35
「青ひげ」カート・ヴォネガット 早川SF文庫

おそらく氏の中で最も完成度の高い作品。
とある隠遁した画家の侘びしい生活と、それまでの一生を振り返る形で話は進行する。
いわゆる人生総括小説。

ここで描かれる主人公の前半生は実のところかなり厳しく悲惨の一言。
でも主人公自身はそんなことない、私はまともにやっていけている、と思い込もうとしている。
実際ににはその精神はひび割れ、今にも壊れそうなほどボロボロ。
リベラルを気取るも融通はきかないという典型的合衆国戦中派クソ爺い
そこに物凄い熟女ヒロインが登場して画家の生活をしっちゃかめっちゃかに引っ掻き回す。
結果、主人公は自身が可哀相な人であることを知り、トラウマを消化し、老い先短い中で成長する。
人生総括と思いきや、ジジイビルディングロマンスでした。

よくできたビルディングロマンスを関係性の相互作用と見なすなら、
画家がヒロインに与える影響の小ささゆえに人によっては点数を下げるかもしれない。

いいお話である。読み終わった後はなにがしかの感動を覚えるだろう。
ところが、である


ちょっと気になる所がある。本筋とは関係ない。
物語のなか、画家はヒロインに一枚の絵を見せる。
第二次世界大戦で画家の出逢った人々が描かれている。
その中には何故か日本人が一人いる。回想では出てこない。
当然ヒロインに突っ込まれる。何でと。
画家は答える。合衆国がこんなひどい国になってしまった責任の一端が日本人にはあると答える。
正直思った。戦争に勝っておいてなおそんなことが言えるのかと。
ドラえもん風に言うなら「そこまで面倒見きれるか!」だ。

「パームサンデー」に当時の事情が書いてある。
戦争が始まるや、彼らドイツ系合衆国市民の立場は微妙なものとなった。
彼らは家庭内ですらドイツ語の使用を止め、子供たちにあらゆるドイツを教育しなくなり、
国家へ忠誠を示すため、こぞって志願した。
洋の東西に限らず同調圧力は存在することがわかる。
その後、ヴォネガットは捕虜となり、友軍の空襲を食らう。万単位の死者が出た。殆どは非戦闘員だった。
彼の受けた衝撃は余りあるものだった。
しかし、「母なる夜」あたりに詳しいのだが、それでも彼は国家への忠誠を失わない。
あんな目に遭ってまでなおかつ彼はFDRへの信頼を失わない。
当時の若年層が受けた洗脳教育の恐ろしさが垣間見える。
スターリンを「おじさん」と呼び、彼らの体制を民主主義の前段階と吹聴したようなものを。


ヴォネガットは知っていたのだろうか?
FDRの側近で戦後、ソ連の間諜として逮捕された者が一人や二人ではないということを。
彼の祖国は欺瞞に満ちているということを。
知っていたとしても受け入れられなかったのだろう。
だからこそ彼は言う
「そういうものだ」と。

そんなわけはない。
間違っているものは間違っているのだ。
彼は自分の見たものを信じてよかった。
そういうものだなんて諦める必要などなかった。

無論、彼の苦労は察して余りある。
ルーディ・ラッカーだってルドルフ・フォン・ルッカー名義では本を出さない。


いささかとりとめのない話になってしまったので、これで終わりにする。
ともあれ「青ひげ」はおすすめである。
老い先短い人もそうでない人にも。
幾つだろうと人は成長できるということを訴えている。
嫌いだけど10点満点だ。
さようなら、そしてありがとうカート・ヴォネガット
あなたの本が大好きでした。

タイタンの妖女

661 名前:♂読者 本日のレス 投稿日:2006/01/08(日) 02:54:24
「タイタンの妖女」 カート・ヴォネガット・ジュニア  1959年

8点。
ストーリー構成が巧みで楽しめた。作品の主題について、フレドリック・
ブラウンの 「さあ、気ちがいに」 が想起された。

ただ、古い作品にはよく見られるのだが、本作にも
   “淫売”
などの言葉が散見され、
   “強姦”
もあることから、女性には嫌悪感を催す人のほうが多数と思われ、
おすすめできない。

デッド・アイ・ディック

268 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/08/15 20:30
デッド・アイ・ディック/カート・ヴォネガット/ハヤカワ文庫SF

やられた。どんなに頑張ってもSFにならない。何時SFになるんだ、とやきもきしながら読んでたら
そのまま終了。
いいお話だったような気がするけど、SFじゃなかったというショックでよく憶えていない。
早川書房の罠か?

猫のゆりかご

71 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:05/01/10 10:53:08
ヴォネガット「猫のゆりかご」

この年になって初ヴォネガット。軽く黒い笑いの中に
悲しみとぬくもりと含蓄を込めた、独特の味。
ふーんなるほどね、という程度の感想しかないが、
10代の頃に読んでいたら熱狂していたかも知れない。

7点
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