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スタニスワフ・レム

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zgok0079

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宇宙飛行士ピルクス物語

166 名前: ◆GAcHAPiInk 投稿日:2005/08/16(火) 22:44:05
「宇宙飛行士ピルクス物語」
スタニワフ・レム(著)
深見 弾(訳)

 ・・・欲しい、この本が欲しい。図書館になんか返したくない、だってどっちゃにしても
書庫で腐らせてんだろうが。だったら、世の為人のため一重に俺のためにも、
この本は俺っちの手元にあるべきだろうが、そうだそれがいい、返す時に売ってくれって
頼んでみようそうしよう。

 スタニワフ・レムという作家はたった一人でSFのあらゆる事象をすべて再現してしまった、
という同じ国の作家からすれば悪夢のような偉業を成し遂げた人なんだが、
そんな批評読んでもイマイチピンとこなかった、この本を読むまでは。
タイトルどおり、ピルクスという宇宙飛行士が試験飛行によってパイロットとなり、
遂には熟練の宇宙船船長としての辣腕を奮うまでを、短編形式で描く傑作。
 なにが凄いって、たった一冊の小説であらゆるジャンルが網羅されてしまっていることだ。
スラップスティックコメディあり、ホラーあり(なにが怖いってテルミネスよりも”ブルースター号”という存在がいっちゃん怖い)
アクションあり、推理あり、事件捜査あり、第一次接近遭遇あり、なんと宇宙飛行士の物語だというのに山岳踏壁まである。
後半になると、自動化された機械群と人間との葛藤が主に描かれるようになるが、それでも一貫してピルクス、という主人公の
存在原理はまったく変わらず、強く、しぶとい。
こんな本はだな、本来であれば中高の学校の図書館に各一冊なけりゃならん本だと激しく思うんだが
でないと彼らはこの本と出会う機会を一生失うんだぞ、それは一重に人生における大いなる損失だと思うんだ。

とにかく、面白かった。欲しい・・・

10点

枯草熱

779 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/09/30 12:27:35
レム『枯草熱』

ストーリーは淡々として、学者との議論が蜿蜒と続き、200ページ過ぎる
辺りまで退屈きわまりないのだが、確率論にまつわるオチが決まっているので
よしとしよう。お世辞にも小説としては巧いといいがたい。
ちなみに、確率論が最終テーマの理屈っぽい議論小説という点では、SFと
いえなくもないが、表面的には、謎の解明に至るまで完全なミステリだった。

6点

完全な真空

330 名前: でへ 02/10/02 22:45
完全な真空 スタニスワフ・レム 国書刊行会
難しかった、読み終わるのに3週間かかった、面白かったけど、、、
完全には理解できなかったと思う。
今まで読んだレムの作品の中でも、一番難しかった。
レムとル・グインとゼラズニィのおかげでSFにはまった私としては、
甘めにつけて 6点

レムはもう1冊買ったけど、、当分積読だな。

虚数

269 名前: でへ 03/10/25 08:21
虚数 スタニスワフ・レム 国書刊行会

読了にほぼ3週間
最近たまっていた未読の本の中で、一番読み易いと
思って読んだのだけど、やはり難しかった。

しかし、この難しさとは、最近流行りの翻訳物のSFの
難しさとは違う。
人間の内面を主体としたSFではなくて、果てしなく外に
広がっていく(空間的に、時間的に)難解ではあるが深い、
レムの思考を書いた本だった。
この手の難しさのほうが、私には合います。

特に最後に収められた「GOLEM XIV」が素晴らしかった、
人間とは異なる異質の知性を持った思考機械「GOLEM XIV」と
人間との対話は、難解だけど、深く、広く、感動した。
(よけいな付け足しだけど、GOLEM=LEM(レム)ね)
10点

936 名前: ◆GacHaPR1Us 04/12/07 23:51:51
虚数
スタニスワフ レム (著)
長谷見 一雄 (翻訳), 西 成彦 (翻訳), 沼野 充義 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4336035938/

14号だった…orz

圧巻はむろん、ゴーレム14号のところ。
あらゆる秩序、前提などの人間の保守的な面をことごとく「大粉砕」する就任演説に、ロックンロールを感じました。
しかも、その前の「ビット文学」や「予知百科事典」のようなネタの中に、ゴーレムたち「光の巨人」の末期を予感させる
設定が隠されています、こりゃすげーわ。

でもでも、ゴーレムの必死さを読むにつけ、「おっちゃん、なに興奮してんのー?」と思う。10点

砂漠の惑星

418 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/11/15 19:24
「砂漠の惑星」スタニスワフ・レム
遭難したロケットとその乗組員を探すため
とある惑星に降り立った人間たちが出会ったもの、
それはその星で生き残るために自らを進化させ続けた無機生物であった!

作者が作者だから
すごく哲学的思弁的な内容なのだろうな、
てなことを考えていたけど
実際はそうでもナカータ(それともこちらの読み込み不足?)。
それこそ無機生物の生態とその対策の描写がほとんど。

BEM小説が隆盛を極めていた昔では画期的だったのかもしれないが
いまじゃあ、ねぇ・・・

まぁ、その歴史的価値をかんがみて、
6.5点

467 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/03/04 19:10
『砂漠の惑星』スタニスワフ・レム、ハヤカワ文庫SF
しまった、これはもっと早く読めば良かった。
雪風とか最近だと「僕らは虚空に夜を視る」とか、オマージュ(?)的作品を先に読み過ぎて肝心の敵に
あまり衝撃が感じられず……。
異星描写もクラークほどの詩情はないしなあ。

でも、いい感じに次々謎が出てくるし、レム自身が言っている通りキャラのタフさには感動したし(こういう
の、最近のSFにはないよね、ちょっと寂しいかも)、キュクロペスが格好良かったので概ね満足。
8点。


526 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/07/10(月) 07:18:03
「砂漠の惑星」(新版) スタニスワフ・レム

レムの「ソラリス」といえばオールタイムベスト第一位の名作・・・とされているが、
個人的にはどうにもノリがまったりとしすぎていて退屈な作品だった。
1作だけど作者の評価を固めてしまうのもどうかと思い、新版の発売を機会にこの作品
に手をだしてみた。
・・・いや、゛ごめんなさい。レム先生。こっちはすごくおもしろいわ。
とにかく無駄な描写を省いて未知の惑星での機械生命との死闘にページを割いている。
最初から最後までサスペンスが持続している。
最後のほうの、主人公の孤独な旅にレムの心情の全てを見た気がする。諦観にみちたひとり旅。
「ソラリス」が肌に合わなかった人もこちらを一度試してみてはどうだろう?

8点

534 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/07/14(金) 13:42:34
スタニスワフ・レム「砂漠の惑星」
6点
国書のレムコレクション既刊3冊読んで
内容の難しさよりもむしろレムの気難しさ
の方が鬱陶しかったりするんだけど、
これはなんだかマイルド。
てゅかリズムというかテンポが良いのか。

主人公の名前ロハンって
Lindsay LohanのLohanかな?
幸田露伴ってことは無いよね。

548 名前: ◆GacHAPiUUE 投稿日:2006/07/18(火) 23:26:23
砂漠の惑星「NIEWYCEZONY(無敵)」
スタニスワフ・レム(著)
飯田 規和(訳)
http://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11566.html

 作家が物語りを描く際、最初から描くか最後から描くか、という手法の違いがあるわけだが
レム氏の場合、最後の場面に目指して最初から書く、という非常に知性的な描き方をする、
特異な作家だったんだと思う。これは短編であれ、長編であれ、またはコラムであれ、
彼独特の描き方だったようだ。

 最後の章「無敵」こそがこの作品で描きたかったシチュエーションだったのだろう。

 主人公ロハンは偶然にもある必然によって、ほとんど自然現象に近い機械群体「黒雲」下に
単身、残存者の捜索に向かう。策は無に等しく、酸素すら最後には尽きる探索行に。
その過程において、人間の力強さ、人間の意志力の強さ、そして生きることへの賛歌が歌われる。
ただ黙々と…、それはクダンの「機械群体」にも言えるのだった。

 この作品が面白い、と思う人は
宇宙飛行士ピルクス物語 (海外SFノヴェルズ)
スタニスワフ・レム著
深見 弾訳
https://www.honya-town.co.jp/hst/HTdispatch?nips_cd=9830223264

もきっと気に入るだろう、必読である。ただし、絶版だが。10点

485 :名無しは無慈悲な夜の女王 :sage :2007/02/01(木) 01:30:12
砂漠の惑星 スタニスワフ・レム

再販されていたのを再読。
内容はやっぱりサイクロプス萌えで、レムにしては娯楽性が高いのがいいんだけど、それに加えて解説が良く出来てた
のが好印象。
再販モノの解説って、「この作者はSFジャンル内でこういう位置にいるんだよ!SFの歴史的にこの小説はこう評価され
ているんだよ!」みたいなオタク知識開陳とか、「私はこの小説にこう影響を受けました!」みたいな「お前の話なんか
どうでもいいよ!」と言いたくなるのが多いんだけど(具体的に言うと栗本薫)、この解説は書かれた時代背景とか作者の
他作品をひきながら、「この小説はこう読むのじゃ!」みたいに懇切丁寧に説明しているのが良い(ハードSFだと、この
アイデアはこういう科学理論に基づいているんだよ!みたいな有益解説が結構あるけどね)。
普段はもう益体のない、心底どうでもいい後書きばっかり書いている人なので、この理性的な解説は意外だった。

8点

捜査

421 名前: トリフィド 02/11/16 01:48
『捜査』 スタニスワフ・レム

以前借りて読んで、「なんとなくいや~な感じ」が強く記憶に残っていた。
で、今回買って再び読んでみたのだが、いやはや「いや~な感じ」が頁と
いう頁から湧き出てくる。
厳然として眼の前に存在する現象、だが、その奇怪な現象の可能な評価は、
意味不明でとうてい受け入れがたいもの。そして視座を次々と変えるごとに、
事件はさまざまな様相を見せる……

いや~、ホラーとまではいかないのでしょうが、どこか、痒いところに
手が届かないようなキモチノワルイものが残る作品。視座を変えると見
えるものも変貌する。そんなSFの最重要要素のエッセンスを抽出して繰
り広げてくれるレムの傑作。

今回、さらに印象に残ったのは、各々のシーンのビジュアルな懲りよう。
光の加減や、*一見*奇怪な現象が日常的な場所を異様な空間に変える。
非常に魅惑的。いやはや、映像で見たいわさ。スバラシー!!

9.9点

ソラリスの陽のもとに

582 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/12/25 23:23
スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』

何をいまさらという感じだが、再読。
レムの作品は、小難しいテーマのわりに、エンターテイメントとして非常に優れている。
ケルビンがソラリスへ到着、ギバリャンの死が知らされる。どこかおかしいスナウト・・・と、物語はサスペンスタッチでさくさくと進む。
映画版はこの逆。高い評価をする人もいるが、自分は原作を無駄に冗長にしたとしか思えない。
終盤で少々まとまりに欠けるのが残念。

あと、邦題はあんまりだ。海の話なのに「陽のもとに」はないじゃないか。(原題は単に『ソラリス』)
確かに「ひのもとに」は慣用表現として使うが、ものはSFだ。
軽々しく、惑星の太陽を連想させる語を使うとは、翻訳者の良識を疑うな。

8点

8 名前: でへ 04/11/03 09:33:45
ソラリス スタニスワフ・レム 国書刊行会 2520円

高いし、買おうかどうか迷ったのだけど、買ってよかった
初読から25年、15年ぶり?の再読
ラブロマンスの要素があったんだ、最近リメイクされた映画の内容も、
あながち嘘ではない(ラブロマンスだけなら表層のみの理解となるけど)
内容は巻末の訳者解説(愛を超えて(藁)
に十分に解説してあります。余計な事は書きません。

10点

レム好きな人や、ソラリス読んでいない人は必読、レムの作品にしては
分かりやすい内容だと思うし、訳も良いが、ちょっと難しい
個人的には解説だけでも買う価値があった。

浴槽で発見された手記

918 名前:感想1 投稿日:2006/03/14(火) 06:49:35
浴槽で発見された手記 スタニスワフ・レム

サンリオSF文庫のなかでも結構な値段の小説。5千円した。
まあそれはさておき、レムの小説の中では一番楽しめたよ。
レムの過剰なディティールが今まで俺は気に食わなかった。ソラリス学とか、GOLEM14とか、高い城とか。
現場検証にいたっては異世界の文明描写が確か100pぐらいだ。
俺にとってはどれもこれも読む気を削ぐ要素でしかない。
だけど浴槽にいたってはそういったリアリティのための虚構はどちらかといえば、薄い。
リアリティのための虚構、というのはもちろんまえがきのことだ。遥か未来の知性が見つめる過去。
それは異化された現実であって、未来知性たちと俺たちの認識の齟齬がまず面白い。
アメリカ、ペンタゴン、キリスト教… 彼らにはどう映っているのか? 
こういう見せ方でも一つの物語ができそうだけど、それは「星からの帰還」を読めばいい。
浴槽のメインはそんなところにはないのだ。俺たちの延長、つまり想像できるような未来は
あらゆる紙の崩壊、つまり情報だな、それが失われるとともに消滅した。その経緯がまえがきによって
明かされる。では本文は? ペンタゴンの「浴槽で発見された手記」の内容はいかに?
ほとんどの読者はカタストロフィ寸前の時代にて、一人の人間がその時代の様子をを克明に記した
ものと思うだろう。違うのかって? 全然違う。本文には文明の崩壊をもたらした原因など書かれていないし
それを食い止めようとする人類などかけらも出てこない。

では何が描かれているか。暗号である。何の暗号? それを追求するのが俺たち読者なんだ。
手記の内容は錯綜している。時系列や文面といったことではなくて、手記を書いた(と推測される)<わたし>
のペンタゴン、本文の中では「本庁」における立場がページを繰るごとに錯綜していくのだ。
<わたし>はある指令書に基づき上官のもとへ出頭する。そこで任務を得るはずだったが、なぜか上官は
任務をはっきりさせず、指令書を隠匿し、そんな指令は無かったと言い張る。
<わたし>は自分の任務をはっきりさせるため、仕方なく本庁の部署という部署をたずねるが無駄骨に終わる。
しかも会う人物全てが自分に何かを隠しているようで、その上、本庁へのスパイ行為を臭わせるているのだ。
ようやっと自分の指令書を手に入れた<わたし>だが、そこに書かれていたのは<わたし>が体験したこと行動
の詳細な描写であった。困惑する<わたし>にある人物が告げる。
「あらゆるものは暗号なのです」
例としてシェイクスピアの文をデコーダにかける。するとまったく違う意味の言葉が吐き出されてくる。
このあたりは「完全な真空」に収録されている「ギガメシュ」を読んでいると理解が早いだろう。
「あらゆるものは暗号なのです」
この時点で読者はこう思うのではないか。この手記というのは、<わたし>による手記ではなくて、
指令書そのものではないのか? さあここからがレムとの戦いだ。手記が暗号だとしたら?
書かれている内容は全く意味の無いものであり、本当の意味をつかもうとするなら、解読しなくてはならない。
しかしどうやって? 俺は無限の淵に立たされてるようだったよ。盲目で海を渡るようなものだ。

仕方が無いので先を読み進める。<わたし>の任務はいっこうにわからない。そして会う人物はスパイ、
二重スパイ、三重スパイ、四重、五重……そんなやつらばかりだ。<わたし>はこんなことを想像する、
本庁はすべてスパイによって構成されているのでは? そして敵側は味方で構成されているとしたら…
だとしたら任務を知らない<わたし>自身はいったいなんなんだろう? いまだつかめない任務に関係があるのか?
読んでいると疑問符ばかりが沸いてくる。一向に休まる気配を見せない不条理な世界だ。
確かなものは何だろう。いつしか意識は小説から離れ、答えを探し続ける。答えが見つからないので
手記を読む。そしてまた新たな疑問が沸いてくる… そんなことの繰り返しだったよ。
<わたし>は最終的に真実をつかみかかる、が、その真実は彼の元を離れていく。手記は終わっている。
そうして読者だけが取り残されて呆然とするんだ。どうやってこの小説を扱えばいいのか俺にはまったくわからん。
メタフィクションとして? スラップスティックとして? 寓話として? 文明批評として?
まえがきをいれた意味はなんだろう? 未来の知性が崩壊した文明を色々と勘違いしていたように、
この手記の読み方も、彼らにはどこか違った角度から読めるのかもしれない。
すると俺の読み方はどうなんだってことになる。正しいのか間違っているのか。そんなことは問うべきじゃないのか。
俺こそが未来知性であり、本質は永遠にわからないのかも。
ジーン・ウルフが好きな人は読んでみるといいだろう。
ああしかし面白かった。たぶん読書の楽しみっていうのはこういうのをいうのだろう。
しばらく小説はいいや、って気分だ。

10点 
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