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クリストファー・プリースト

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zgok0079

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イグジステンズ

543 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/04/24(日) 01:43:31
クリストファー・プリースト「イグジステンズ」

プリースト初体験の「奇術師」を非常に楽しく読んだので、
過去作漁りの手始めとして軽く読めそうなノベライゼーションから読んでみた。
ちなみに映画は未見。
いかにもノベライゼーションらしく、ページ数も少なくてあっという間に読めてしまうが
かといって中身もスカスカというわけではない。
なによりも、クローネンバーグのいわゆる"内臓感覚"を文章で余すところなく
表現しているので、本当にクローネンバーグの映画を観ているような錯覚を
感じさせられた。
なにしろ、「奇術師」しか読んでなかったもので、どれだけこの小説に
プリースト本人の個性が反映されているのかは正直よくわからないものの、
とりあえず映画を観たい気にさせられたのでノベライゼーションとしては成功だろう。

適当に、5点。

奇術師

572 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/04/27 11:48
プリースト『奇術師』
解説でネタバレしてるんだが、作中の言葉によればネタよりやり口の方が重要なので、
別にかまわないのかもしれない。
しかしこれは文学的に書かれた馬鹿SFってことでいいんだよな? 
なんか見落としてるような気がしてならないが、めっぽう面白かったのでとりあえず8点。

573 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/04/27 21:16
プリースト『奇術師』

面白かった。前半、ちょっとディテール書き込み過ぎじゃねえの? というぐらいなかなか話が進まないのだが、中段から読むのをやめられず結局一気読みしてしまった。
初期に『逆転世界』で頂点を極めた作者の奇想派ぶりが、形を変えて依然健在なのが、何より嬉しい。
メインアイデアは、多分20ページぐらいの短編でも表現できると思われるし、科学的考証もいい加減で(というか意識的に軽視してることが明らか)、572氏言うように、『馬鹿SF』の典型なんだが、本書の眼目はそこにない。
それを本格ミステリ風に多視点から、「作中作」を織り交ぜつつ濃密にディテール構築し、独特のリアリティを現出させる技巧を楽しむべき作品と思う。
ミステリ的観点からすると、このラストには「普通もう一ひねりあるよなあ」的な食い足りなさもあるのだが、逆に「小説としての奇麗さ」を重視するプリーストらしいという気もする。

とにかく、「こんな小説、SFでもミステリでもファンタジーでもジャンルを問わず、今まで読んだことないよ!!!」という唯一無二の個性的な読書体験を提供してくれたことに敬意を表し、9点。

なお、解説でネタを一部割っているんで(これはまずいだろうよ)、今から読む人は、先に読まないように。ネタが一部割れたからって、本書はミステリ的部分が全てではないからまるで楽しめなくなるということはないが、愉しみが減ることは間違いないので。
映画化されるらしいので、それに合わせて本書が売れ、他の未訳作品も翻訳されることを激しくキボンヌ。

739 名前: でへ 04/09/05 11:05
奇術師 クリストファー・プリースト ハヤカワFT

この小説の最初のほうで、奇術師とその観客には、超自然的な
現象を奇術師が起こすのではなく、奇術を行っているという、
暗黙の了解が成り立っているという文章がありますが、
小説と、それを読む読者との間にも通常同じような関係があるのだが、
しかしプリーストは最後に裏切る。
そういう話でした。
最後のシーンは見事に裏切られ、そして鳥肌が立った、SFであり
ホラーでした。

プリーストと言うと、「逆転世界」が既読、あれは面白かった。
逆転世界とは違う面白さ 8点

451 名前:名無しは無慈悲な夜の女王[sage] 投稿日:2007/07/09(月) 00:17:28
奇術師/クリストファー・プリースト

前に立ち読みで軽く読んで未購入だったが
映画のあらすじと感想を見て内容の違いを確認したくなり購入。

魔法は既読なので作風は知ってたからか、すんなり読めた。
オチにがっかりという意見が多いけど、ぐいぐい引き込む筆力で
大変楽しんだ上に、伏線を確認する気持ちになれるほどに夢中で読めた。
オチとか投げっぱなしジャーマンは作風と思えばよし。
キングや京極もだけど、中盤ダレつつ読ませる力は
それだけで高評価に値すると思う。
SFというよりファンタジー的にとらえたからオチに文句はない。

逆転世界も注文したので楽しみ。

9点

逆転世界

121 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:05/01/30 01:44:54
クリストファー・プリースト「逆転世界」創元SF

90年代に出たSFにしちゃ珍しくカコイイ表紙なので買ってしまった。
すげえ。みずから軌道を敷設しつつ進む都市。
しかもそれをやらなくちゃだめな理由ってのがもう……
世界も人も愛情も歪む歪む。これぞSFよ。8点

訳者の安田均、今ではガキ相手の駄作量産ギルドで日本ファンタジーの低質化に邁進してるけれど、
当時はこんな面白いものに目をつけて紹介していたんだね。

122 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:05/01/30 01:50:57
補足
書かれたのは1974年。
訳されたのは1983年、サンリオSF。
再刊行が1996年、創元SFね。

823 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/11/06 00:55:59
クリストファー・プリースト「逆転世界」

      • すごい。まさに、この一言に尽きる。
ひさしぶりにセンス・オブ・ワンダーな話しを読んだ。
双極線状の世界、無限、相対論的効果の世界に圧倒された。
しかもそれが結局は地球にあって“地球市”民の認識の問題に帰着するなんて。。ヤバイ。

文句なく10点満点!

559 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2005/12/06(火) 19:22:29
「逆転世界プリースト」読了

主人公が淡々と職務をこなしているだけで
何一つ能動的に行動しないのにもかかわらず読ませるのは凄い
「もし主人公がセガールだったら」とかいろいろ妄想した
ほら閉鎖空間だし

8点

537 :名無しは無慈悲な夜の女王 :2007/02/12(月) 14:53:00
<逆転世界>クリストファー・プリースト 8点

時空のゆがんだ世界をひたすら邁進していく不気味な巨大移動都市。
なぜか木造7階建てのレトロな作りにもかかわらず原子炉を積んでるらしいと噂される移動都市。
世界はなぜゆがんでいるのか? 都市は止まるとどうなってしまうのか?

冒頭からいきなり異常な状況の世界に読者自身が身を投じられることになり、引き込まれる。
実にシンプルで明快な文体で読みやすく、都市社会の描写、都市外の世界の描写がすいすい
頭に入ってきて安心して読めた。
構成が親切で、節の間隔が短めにとってあるので読み止めるタイミングもとりやすい。

実に衝撃的事実が解明されるラストだが、世界の真実を知ってしまった主人公のいちまつのさみしさを残して収束する。
大どんでん返しではあるが、文中ところどころラストを漠然を匂わす描写が入るので、おおまかなところは
中盤くらいで読めてしまった。
でもその真実が何であったのかを知る具体的なラストはインパクトあった。

伝授者

776 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/09/23 01:15:23
プリースト「伝授者」
前半は謎めいていていい感じだが、
最後はけっこう普通のSFになってしまう。
(中篇を編集者に言われて無理に長編にさせられたらしい。そのせいか)
でも書き方が巧いのでそれなりに楽しめた。
最後に飛行機に乗ったのは博士なのかそうでないのか?
結末を両方に解釈できるようにしたのかな。
7点

スペース・マシン

810 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/10/28 16:19:44
プリースト「スペース・マシン」

面白かった。ウェルズのパスティーシュのようだが、
そんな意識をせず素直に楽しんだ方がよいエンタイテインメント作品。
プリースト作品としては異色だが、最も万人向けの作品。

9点

ドリーム・マシン

808 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/10/24 04:28:24
プリースト「ドリーム・マシン」
尻上がりに面白くなった。
オチはThe Extremesと似ていた。
筋立てにあまり工夫が無いためか、
前半がかなり単調で冗長なのがマイナス。
訳文もちょっと古い感じがした。
しかしながらアイデアは見事なので、
7・5点ぐらいで。

魔法

164 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:05/02/02 01:25:04
クリストファー・プリースト「魔法」

いろいろ語りたくなるけど、何を書いてもネタバレになりそう。

ベタな恋愛小説っぽい。本当に面白くなるの?

おお、ファンタジーになってきた。でもさっきと話が全然違う?

どんどん不合理に。いったいどれが本当なんだ

    _, ._
  ( ゚ Д゚)   ガシャ
  ( つ O. __
  と_)_) (__()、;.o:。
          ゚*・:.。     そこへ落とすのかよ!
最後には信用できるものが何もなくなってしまうという、得がたい読書体験ですた。
「奇術師」も読まねば。


185 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:05/02/14 23:37:59
クリストファー・プリースト「魔法」
なんというか小説の描き方講座みたいな小説という印象。
書き手としての「わたし」が自分の頭の中から物語を生み出すプロセスが
そのまま小説になっている。
使い方が合ってるかわかんないけど、ヘーゲル用語を援用すれば、
即自的な「わたし」から、対自的な「グレイ」と「スーザン」が現象し、
それを即自かつ対自的に統合するって感じ。
主題はなんだろう?恋愛自体を描くことを目的としているわけではないと思うけど、
じゃあ他に何かテーマがあるのかといわれてもよく分からん。
良くできてるし、セクースシーンいっぱいで楽しく読めるんだけど、
技巧を労して注意力を要求する割には、読んでみていまいち得るものがないもどかしさが残る。  

803 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/10/19 21:53:59
プリースト「魔法」読みますた。これも凄かった。
ロンドンの爆撃テロ事件である一定時期の記憶を喪失した男。
それを訪ねてくる一人の女。男は女と恋仲にあったらしいが、男には女の記憶はない。
他方で、男は催眠術の実験を受けるが、催眠術の最中に、目前の女性が消滅するのを見た。
その最中に、男は、本人が記憶していないはずの記憶を書き記していた。
男が徐々に記憶を取り戻す現在のパートと、この男の取り戻した?過去の記憶、
女性の語る過去の事実が、様々な人称で交互に語られながら、一つであるはずの現実に、
さまざまなゆらぎ、食い違いが生じていく。そして、結末の真相(?)へ……。
いちおう「メ******ン」的な結末ではあるのだが、ほどよく曖昧化しており、
必ずしも単一解釈で割り切れないようにしてあるし、視点の相違によっていかに
世界が違って見えるか、終始興味深く読めた。
目立たないマイノリティの人々の苦悩の物語をSF的アイデアで明確化した話としても
読み応えがあるし、作中で展開される二重のレベルでのフィクション論も、決して陳腐ではなく、
特に記憶と認識に関する考察は面白かった。
最後までだれることがなく、完成度という点ではいちばんだと思うが、やや地味なのと、
結末が少し難解で、若干「一般受け」という点で難がありそうだと思うので、
9・95点ぐらいで。
ここで使われた一部のモチーフが、「奇術師」やThe Separationでも使われているので、
あわせて読むと面白いかも。
しかし、地味な叢書から地味な装丁で出たことで損をしていますね、この本……。
プラチナファンタシイかepi文庫で出し直せばいいのに。

The Extremes

789 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/10/09 01:36:21

クリストファー・プリースト "The Extremes"

主人公はFBIの女性職員だが、同僚の夫を連続射殺魔に
射殺され、失意の日々を送る。
ところが同日に、英国の田舎町で全く同じような連続射殺事件が
あったことを知り、事件から8ヵ月後、休暇をとって訪ねて行く。
また、主人公は、FBI研修生時代に、頸のバルブにチップを
差し込んで行うVR体験による訓練を受けていたが、
この技術は、Extreme Experience(ExEx)
として商業化され、殺人事件やポルノなどのソフトが氾濫し、
世界各地に体験施設が設けられ、一大エンターテインメントとして
巨大市場を形成するに至っていた。
夫の殺された事件の真相に疑問を持つ主人公は、よく似た英国
田舎町の事件を取材しながら、近所のExEx施設に通いつめ、
様々なExExソフトを体験するうちに、ExEx産業と、
連続射殺魔事件との奇妙な関係に気づき始める……
といったストーリイ。
謎また謎のミステリアスな展開と、時々
効果的に挟まれる、リアリティのあるVR世界の描写で
ぐいぐい読ませる。
が、このオチはいったい何なんだ……といいたくなる、
唖然とするような終わり方。
「魔術師」でも思ったけど、こんな変な小説を書くのは
世界中にプリースト以外いないのでは?
ただ、この結末の是非を別とすれば、少なくとも
べらぼうに面白いことだけは間違いないので、8・5点で。

The Separation

800 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/10/17 09:14:34
クリストファー・プリースト"The Separation"読みますた。

1941年5月10日英独停戦が実現した歴史と、実現しなかった歴史、
その分岐点に深くかかわった双子の兄弟……
前者のオルタネートヒストリーの住人である歴史学者(しかも自分
自身が1941年5月10日生まれ)が、上記の停戦交渉に深く関与した
とされるソウヤーという人物の調査を進める。
この学者の下に寄せられた手記や資料の数々は、それぞれ整合するようで
いながら、細かい矛盾や曖昧さをはらんだ複数の異なった歴史と人物像を
浮かび上がらせる……。
作品の大部分が、この双子の兄弟のそれぞれが書いた全く異なる
歴史上の手記と、その他の各種資料の引用から構成されている。

とにかく、面白かった。架空の歴史のディテールの緻密さと面白さ、
戦争時の生活の迫力とリアリティ、キャラの魅力。
後半の、記憶錯乱を生じたとされる双子の兄の手記の<明瞭な幻覚>
描写の強烈さ。
最後は、プリーストらしく明確な説明を与えず、解釈に委ねて終わるが、
他の作品と違い本作は、ディテールをある程度まで整合するように
緻密に構築した上で、部分的にわざと曖昧化させるため破綻・矛盾
させている感じなので、いろいろな妄想をかき立てられる。
前のほうを再度読み返したら、また違う解釈を思いつきそうな感じ。
「ケルベロス第五の首」の第三部に近いかも。

個人的に、今まで読んだプリースト作品中では、ずば抜けていて、
ほとんど欠点が見当たらず、最高傑作だとおもう。

10点
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