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ジェフリー・フォード

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zgok0079

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白い果実

718 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/08/27 05:04
ジェフリー・フォード「白い果実」

面白かった。一気に読み終わったv
とにかく奇想の見本市といってよいほど、様々な奇想が
これでもかと詰め込まれており、構築された異世界の隅々まで
色彩豊かで、奇妙で美しいイメージに満ちている。
それが山尾悠子の見事な美文によって、更に磨き上げられている。
この山尾文体によって、多分原作を超えてると思う(笑)。
しかもキャラクターもやや類型だが魅力的だし、
ストーリーも面白い。
エンタテインメントに目覚めたカフカって感じか。
唯一の欠点はストーリーの流れがよすぎて、ともすると
早く読みすぎてしまい、せっかくのディテールの美しい
イメージを味わい損ねてしまいかねないこと。
が、ともあれ3部作の第1作で続きがあるらしいので、
全部読みたい。訳出きぼんぬ。
とりあえず今年の翻訳ものでは今んとこ、ベストワンは
「ケルベロス」かこれかって感じだろう。
で、点数は、10点に近い9・5点あたりで。

シャルビューク夫人の肖像

23 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/10/24(火) 01:04:46
「シャルビューク夫人の肖像」、ジェフリー・フォード、ランダムハウス講談社。

 姿を見ずに肖像を描く、というずいぶんとまた呪術的な含みのある仕事の依頼から
話が始まり、ジェニーだのドリアン・グレイだのカーミラだのを連想させる。
だが実際のところ、主人公はモンタージュ作成めいた作業をしてるように見えてしまう。

 依頼主シャルビューク夫人が語る身の上話は、いつどこで起きたか定かならない夢の
ようで美しく、シェヘラザードの伝統を汲むかと思える。
 しかし呆れたことに、主人公とその友人は物証を求めて家宅捜索なんかやっている。

 これらはカリカチュアとしてなかなか笑える。

 他方では血の涙を流しての怪死事件が立て続けに起きたりしていて、その謎解きも
並行して話が進み、読者はたぶん退屈しない。

 全体として趣向に富み、諧謔に幻想、怪奇風味も織り交ぜ上手くまとまっているが、
ふとした細部に奇妙で美しいイメージを鏤めた回想部分がとくに佳い。
しかしこの回想部分の扱いの軽さが実は気にくわないので、まあ6点弱。

どうでもいいが、これを読んで肖像画制作にまつわる話が食い足りない気がする人には
ゲゲゲの鬼太郎の陰摩羅鬼の回をお奨め。求めるものが得られるでしょう、多分。
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