今日読んだSF/FT/HRの感想@SF板まとめページ
ジェフ・ライマン
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zgok0079
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AIR
585 名前:名無しは無慈悲な夜の女王[sage] 投稿日:2007/07/30(月) 01:11:25
AIR 06年 Arther C.Clark賞受賞作
Geoff Ryman(ジェフ・ライマン)
評10/10
AIR 06年 Arther C.Clark賞受賞作
Geoff Ryman(ジェフ・ライマン)
評10/10
Karzisutaniは中国、チベット、カザフスタンの国境にある国で
数々のロシア人、中国人、コミュニスト達との戦渦を2000年生き伸びてきた。
その小さな村Kizuldahは数十家庭が主に農業を営むほとんど隔離された山村。
少数民族のEloi族、中国人、ムスリム系のKarzi人などで構成。
数々のロシア人、中国人、コミュニスト達との戦渦を2000年生き伸びてきた。
その小さな村Kizuldahは数十家庭が主に農業を営むほとんど隔離された山村。
少数民族のEloi族、中国人、ムスリム系のKarzi人などで構成。
2020年最終のNET形態として脳内でセットアップされる通信手段が開発される。
それがAIR。脳内で直接TVやインターネット、メイルが操作できる。
本番のAIRの流布の前年に政府はTESTを行う。
もちろん中央アジアの田舎の山村Kizuldahでも。
そのTESTにより主人公Maeの大好きな90歳のOld Mrs Tungは命を落とすと同時に
Maeの精神に入り込んでしまう。一つの体で二人の人格が葛藤する。
それがAIR。脳内で直接TVやインターネット、メイルが操作できる。
本番のAIRの流布の前年に政府はTESTを行う。
もちろん中央アジアの田舎の山村Kizuldahでも。
そのTESTにより主人公Maeの大好きな90歳のOld Mrs Tungは命を落とすと同時に
Maeの精神に入り込んでしまう。一つの体で二人の人格が葛藤する。
そして村ではAIRにアドレスを使って接続できるのは文盲のMaeだけ。
そこからMaeはAIRを活用し自分の"Fashion Expert"としてのビジネスを拡張し村を世界的に知らしめて村に民族衣装製造の仕事をもたらす。
また来るべきAIRの席巻と自然災害"Flood"に備えてAIRをフル活用し
村の人々の教育と警告に奔走する。
この勇気あり聡明な40歳代の女性の奮闘の約1年間が描かれてる。
山村の住民像と人間関係もリアルでストーリーは波乱万丈だが心地よく展開する。
またMaeは40代の"Fashon Expert"だから当然愛憎や葛藤もあり、予期せぬ奇妙な妊娠があったり、はたまた都市部での人体実験の被験者の立場からの「喋る犬との脱走」まで起伏に飛んだ多岐なパートを駆動させる物語自体のパワーも十分。
そこからMaeはAIRを活用し自分の"Fashion Expert"としてのビジネスを拡張し村を世界的に知らしめて村に民族衣装製造の仕事をもたらす。
また来るべきAIRの席巻と自然災害"Flood"に備えてAIRをフル活用し
村の人々の教育と警告に奔走する。
この勇気あり聡明な40歳代の女性の奮闘の約1年間が描かれてる。
山村の住民像と人間関係もリアルでストーリーは波乱万丈だが心地よく展開する。
またMaeは40代の"Fashon Expert"だから当然愛憎や葛藤もあり、予期せぬ奇妙な妊娠があったり、はたまた都市部での人体実験の被験者の立場からの「喋る犬との脱走」まで起伏に飛んだ多岐なパートを駆動させる物語自体のパワーも十分。
この小説のコンセプトとなるERTH WIND FIRE.AIRが絡まった情緒表現の奥深さにも感動。
だが最後の具体的な結末は日本人にはちょっと合わないかも。
余りにも確固たるモノが余韻をそぐかもしれない。
でも、小説世界にかなり侵入しやすいプロットと語りになっており
最高に楽しい読書経験を得る事ができた。
文章は平易で一切の飾りなくそれでいて物語の隠喩性が際立っていく。
翻訳はいつか間違いなくされるだろうが、それも楽しみだ
だが最後の具体的な結末は日本人にはちょっと合わないかも。
余りにも確固たるモノが余韻をそぐかもしれない。
でも、小説世界にかなり侵入しやすいプロットと語りになっており
最高に楽しい読書経験を得る事ができた。
文章は平易で一切の飾りなくそれでいて物語の隠喩性が際立っていく。
翻訳はいつか間違いなくされるだろうが、それも楽しみだ
The Child Garden
736 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/09/03 16:52
Geoff Ryman "The Child Garden"
ダンテ「神曲」に模したとおぼしき、強烈なバイオSFで、「神曲」と同じく3部構成、内容的にも対応している。
記憶を持つウイルスによって人間が規律され、創造性が衰えているという設定で、癌が撲滅されているが、がん細胞の出す
老化防止プロテインの欠乏のため平均寿命が半分になっている。
人びとは10歳で精神/身体状態を記録(Reading)され、読み取られた人格が<コンセンサス>という議会を構成して
政治的意思決定を行うが、基本的には社会主義のようだ。人とホッキョクグマを掛け合わせた熊人間や、ガン細胞のみから
構成された不老人間なども出てくる。
また男性は腸に人工子宮をつけて胎児を育てる。
主人公は生まれつき体内にある抗体のためウイルスをはじいてしまい父母は治療のため無理なウイルス投与を受け死亡、本人も
記憶ウイルスを持たないので物覚えが悪く、孤児院で孤立して育つ。(その代わり思考力、想像力はずば抜けている)
この主人公はレスビアンで10歳の頃問題を起こし、強引なウイルスや薬品投与治療を受け、それ以前の記憶を失い自我が崩壊してしまう。
そして芸術部門の女優として職を得るが、ある日、天才的な作曲&歌唱力を持った熊人間の少女と出会ったことから、救済への道が始まる。
少女がダンテの「神曲」につけた曲をもとに、壮大なオペラの上演を企画する……
といったストーリー。
主人公の女性の記憶が救済されながら徐々に回復するといった構成のためか、時間がめまぐるしく前後し、奇抜な概念があまり
説明もなく次々と出てくる。
ストーリーよりもディテールの書き込みを重視している感じで、グロテスクで美しいイメージの積み重ねは、読み応えがあるが、
その分ややストーリーがもたつき、埋没しがちなのが欠点か。
レスビアンのネタもやや強調しすぎな感じがするが、地球という地獄に閉じ込められた抑圧された愛が解放され、
救済されるという全体のテーマから、あえてそうしたものか。
ただ、最重要サブキャラである熊少女ロルファのキャラ設定が今ひとつな感じ。
それにしても、とにかくラストは強烈。
国書向きの内容か? 翻訳期待。
Geoff Ryman "The Child Garden"
ダンテ「神曲」に模したとおぼしき、強烈なバイオSFで、「神曲」と同じく3部構成、内容的にも対応している。
記憶を持つウイルスによって人間が規律され、創造性が衰えているという設定で、癌が撲滅されているが、がん細胞の出す
老化防止プロテインの欠乏のため平均寿命が半分になっている。
人びとは10歳で精神/身体状態を記録(Reading)され、読み取られた人格が<コンセンサス>という議会を構成して
政治的意思決定を行うが、基本的には社会主義のようだ。人とホッキョクグマを掛け合わせた熊人間や、ガン細胞のみから
構成された不老人間なども出てくる。
また男性は腸に人工子宮をつけて胎児を育てる。
主人公は生まれつき体内にある抗体のためウイルスをはじいてしまい父母は治療のため無理なウイルス投与を受け死亡、本人も
記憶ウイルスを持たないので物覚えが悪く、孤児院で孤立して育つ。(その代わり思考力、想像力はずば抜けている)
この主人公はレスビアンで10歳の頃問題を起こし、強引なウイルスや薬品投与治療を受け、それ以前の記憶を失い自我が崩壊してしまう。
そして芸術部門の女優として職を得るが、ある日、天才的な作曲&歌唱力を持った熊人間の少女と出会ったことから、救済への道が始まる。
少女がダンテの「神曲」につけた曲をもとに、壮大なオペラの上演を企画する……
といったストーリー。
主人公の女性の記憶が救済されながら徐々に回復するといった構成のためか、時間がめまぐるしく前後し、奇抜な概念があまり
説明もなく次々と出てくる。
ストーリーよりもディテールの書き込みを重視している感じで、グロテスクで美しいイメージの積み重ねは、読み応えがあるが、
その分ややストーリーがもたつき、埋没しがちなのが欠点か。
レスビアンのネタもやや強調しすぎな感じがするが、地球という地獄に閉じ込められた抑圧された愛が解放され、
救済されるという全体のテーマから、あえてそうしたものか。
ただ、最重要サブキャラである熊少女ロルファのキャラ設定が今ひとつな感じ。
それにしても、とにかくラストは強烈。
国書向きの内容か? 翻訳期待。
8・5点