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U・K・ル・グィン

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zgok0079

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帰還 ゲド戦記最後の書

6 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/04/09 20:50

「帰還 ゲド戦記最後の書」ルグィン

ゲド戦記の続編として翻訳が出ているが、前作までの冒険活劇を
期待した読者は肩透かしを食らうだろう。本作は同じ舞台、
キャラクター設定を用いてはいるが、作品のカラーは全く違っている。
魔法使いの道を否定し平凡な主婦の道を選んだテナーと、
魔法を使い果たし抜け殻のようになったゲド。
この二人が平凡な老後に積極的な意味を見い出して行く
リハビリの物語に絡めて、ルグインの人生論、ジェンダー論、
教育論等が語られて行く、「アンチ」ヒロイックファンタジー
の形をとった普通小説である。(若干の活劇もなくはないが)
ルグイン自身が年を経たことによる関心の変化や人間観の
深化を、最も馴染み深い自作の世界設定に反映させてみたくなった
のであろうか。
ただし、本作では以前の作品に比べてルグインの主張が
今一つ明確に伝わってこない気がする。
ルグィン自身本書で提示した様々な問題に、まだ答えを出し切れて
いないのではないか。そんな迷いが感じられる。
というわけで本作は
7/10点

ちなみに、内容的には「ゲド戦記」のシリーズからは外し、
普通の岩波文庫から出した方が相応しいと思う。

ともあれアースシー世界のニューシリーズ開始は嬉しい限り。
「テリング」や最新短編集の翻訳が待たれる。

ギフト 西のはての年代記

503 名前: ◆GacHAPiUUE 投稿日:2006/07/04(火) 00:03:41
アースシーではなく、ましてやハリーポッターでもない
新しい「魔法遣いの作り方」。それがこの物語。

ギフト 西のはての年代記 (1)
アーシュラ・K・ル=グウィン (著)
谷垣 暁美 (翻)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309204643/qid=1151937585/

 さる大陸の西のはて、南北に連なる山脈の北部に位置する「高地」。
そこに住む人々には特殊能力「ギフト」が一族代々に連綿の伝わっていた。
ねじり、呼びかけ、封じ、切る。そして、「作られたものを作られる前まで」もどす、など。
あいまいさを完全に排除した、これら直接的かつ強力な能力は、それでもやはり扱うのが人なので
お互いを牽制しあうことにしか使えないのだ。
そうしてお互いを、お互いの財産を、そして限りある知識すら奪い合う世界が繰り広げられていた。
 これら高地の人たちが「貧しい」のは、当然のように後ろ向きにしかギフトを使うことしか出来ない、
というギフトのギフトなのだろう、「いと高き国々」がもっと貧しく描かれているのもそのためだろうと。

こんな貧しい農村の一つ、カスプロ家に生まれたオレックはとある事情から己の目を封じる生活を強いていた。
誰のためか、何のためかもわからないまま…。

 ル=グィン母さんの「絵」のような描写力、名台詞、名シーンの連続に一読しただけでは
只ヶ圧倒されるだけだろう、それに相変わらず物語りにも隙がない。

三部作になる予定ということだけど、ル=グィン母さん、メルさまみたいに途中で投げないでよね。

それにしても、オレックは本当にギフトを…?

言の葉の樹

291 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/08/31 23:47
言の葉の樹 アーシュラKルグイン

とても長い時間をかけて読みました。その間にここに別のレビューを2つ
書かせていただけるほど自分にとってはちょっと苦手分野。寝る前に読み、
2,3ページで熟睡パターン。最後のほうにちょっとカタルシス?

3点

251 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/08/09 20:33
「言の葉の樹」アーシュラ・K・ル=グイン
現在再読中。ハイン世界もの…やっぱりイイ!
でも現実のチベットと中華人民共和国のメタファーが
ちょっと強すぎるような気がしないでもない

587 名前: ◆gacHaPIROo 02/12/27 21:40

言の葉の樹
アーシュラ・K・ル・グィン/小尾芙佐

ル・グィンの長編はひさびさでしたが、
相変わらずのストーリーテラーぶりには惚れ惚れします。

エクーメンとの接触後、いくつかの不幸な事件によって、
伝統文化「語り」を捨てて、文化大革命が進行中の惑星「アカ」。
監察官として派遣されている主人公サティ自身も、
インド系少数民族の末梢として迫害された過去からこの悲劇を見つめていた。
ある日、彼女はアカの伝統文化「語り」を色濃く残す地域、
オズカト-オクザトへの調査行に出ることになるのだが・・・。

明らかに中国の事件やグローバリゼーションとエスニック問題、
人種問題や男女問題にまでひろがる政治的な事実を
客観的にSF化することに成功している、『世界』についてのSF。

ハイリッシュ・ユニバースでなければ語れない物語がここにあります。
もっとル・グィン女史には長生きしてほしい。

9点。もっと長編よこせという意味も込めて。

941 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 03/06/01 23:32
ルグイン「言の葉の樹」

つまらんかった。
蜿蜒アカ人の「語り」を研究するだけという内容。
肝心のその内容も、驚くようなもんでもないし・・・
異なる文化体系の思考様式を理解するというテーマ自体は、
70年代作品とそう変わってないと思うが・・・
なんというか、ぐいぐい引き込むオーラのようなものが
消えてるね。
後半、若干ストーリーに動きがあるものの、あまりに抑揚なさ過ぎ。
これなら、レウ゛ィストロースの方が娯楽性が高い。

2点

コンパス・ローズ

424 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/02/07 23:48
ルグィン「コンパス・ローズ」

何か地味な話が多かった。半分ぐらいは普通の純文学に近くて
薄味すぎて好みじゃなかった。
2つの馬鹿SF「アカシヤの種子に……」「時間の欠乏という……」
がずば抜けて面白い。
「ニュー・アトランティス」「バラの日記」はかなり優れた作品だと
思うけど、あんまりワクワクしない。
全般に質は高いと思うんだけど、熱狂できない本。

6点

空飛び猫、帰ってきた空飛び猫

717 名前: ◆gacHaPIROo 03/04/03 19:25
空飛び猫、帰ってきた空飛び猫
(アーシュラ・K・ル=グウィン作、S・P・シンドラー絵、村上春樹訳  講談社)

眠れなくなったとき開くといいかも。
読み厭きたら、甥っ子にでもやればいいし。
巻末の村上春樹氏の翻訳小咄もいい感じ。
ちょっと難を言えば、猫は魚とったりするのかな?とか、
無理のあるところもなくはない。そんだけ。
子供向けなので一応、8点。

天のろくろ

404 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/05/29(月) 11:00:49
アーシュラ・K.ル・グィン「天のろくろ」
6点
作者名に先入観無ければ普通にバカSFとして楽しめたのに、
訳者あとがきで台無し。
正座して正しい心で読むべき本と知ってしまったので
急速に印象薄れた。

世界がどう変わっても現職に留まり続ける
アルバート・M.メルドルw

716 名前: ◆GacHAPiUUE 投稿日:2006/08/05(土) 21:34:02
天のろくろ
著)アーシュラ・K. ル=グウィン
訳)脇 明子
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4835442210/
DVDも出てるらしい
http://www.so-net.ne.jp/SF-Online/no45_20001127/rensai_dvdclub-body.html#1

 自分から見ると実にまっとうな、どんな逆境でもナチュラルなスタンスを保ちつづけてるというジョージ・オアが
西洋社会からみればまったく異質な「精神障害者」と観られる、ということが一番のショックだった。

 それにしても各ブログその他で見ると、「オアはある日、自分の夢が現実を改変することに気がつく」と
まるで冒頭の話のように描くんだけど、自分の受け取り方はちょっとちがってて、
「オアは一度、世界を救っていたときから自分の能力に気が付いていたが、その重みに遂に耐えられなくなった」と
いうのが冒頭の意味なのだと感じたんだけどな。折れたんだ、心が。
それでも、魂が潰れても、心が折れても、それでもオアという主人公のなにかは決してめげない。
まるでタンポポのように草のように、踏まれても蔑まれてもまた生えてくるような”なにか”。
 それが、イアークルに耐えられたオアと耐えられなかったヘイバー博士との大きな違いだったんだろうと。

 また、全体を朗らかなものにしてくれるヘザーと宇宙人の存在は、きっとそんながんばり屋さんなジョージ君への
作者からのプレゼントだったんだろう。最後の最後に、ミス・ルラッシュとの関係を獲直すタイミングを与えるあたりが
優しさのSF作家だなぁ、と感じ入った。いい話しだった。10点

なつかしく、謎めいて

489 名前: ◆GAcHAPiInk 本日のレス 投稿日:2005/11/14(月) 02:26:26
「なつかしく、謎めいて」
Modern&Classic
著)アーシュラ K.ル・グウィン, 訳)谷垣 暁美
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4309204503

通して読めば分かるが、非常に高度な筆致による「キノの旅」のようなものか。
自分は本を読むうちにいろんな夢想に邪魔されることが多いんだが、
特にル=グィン女史の作品には影響を受けやすい。ので、「オールウエイズカミングホーム」なんか
一回読んだだけでは簡素が書けないのだ。これも同じなので読後感だけを一気に紹介してみたい。

  • シータ・ドゥリープ式チェンジング・プレーンズ
 シータって女性が「発見」するくだり。日本人だったら多分同じ環境でも
通勤電車で座る技術なんかを見出そうとするだろう。
どうでもいいが、自分が直訳したら「カンナを取り替える」になる。

  • 玉蜀黍の髪の女
 この小説は、いくつもの短編で構成されている、その冒頭作品、ということが
よく分かる一章。遺伝子改変ネタはこの作品全体で扱われるネタである。

  • アソヌの沈黙
 「もし仮に、しゃべる機能を失う人類があれば、彼らはどんな文化を有するだろうか?」という主題。
鰯の頭にも信心を見出す人と、主人公の現実的な感覚のギャップが素敵。

  • その人たちもここにいる
 自分に似た人たちが自分とまったく異なる者である、とはどうあるべきか?という主題。
魂ではなく、情報としての多重人格なんだな、と拙い読者は感じた。

  • ヴェクシの怒り
 怒りそのものの衝動によって大局的な破壊行動を伴わない世界について。
一人一人が世界を滅ぼすスイッチを持った世界を描いた漫画が昔あったが、そんなのを思い出した。
ヴェクシ人の異形の創造にも唸った。

  • 渡りをする人々
 これはもう文字通り。自分的にはマイフェイバリットのひとつ。せつなさ、悲しみ、そして喜びが
語りの中に漂うさまに浸るべきだろう。

  • 夜を通る道
 これはネタバレになりかねんので主題については説明できないが、まあサトラレか。
ただし、あっちは主に言語に極限した機能だったが、これは…。ひとつの現象に対して
様々な立場の人の意見を描く、という女史の特徴がよく現れてると思う。

  • ヘーニャの王族たち
 笑うところですよ、奥さん。でもさ、この章読んでひとしきり大笑いしたあと、ふと気づいた。
日本の皇族って…。まあそれはともかく、あちらでも語尾に「にょ」だとか「へーちょ」だとか「ポン酢」とかの
音に面白さを感じるんだな。

  • 四つの悲惨な物語
 マイフェイバリットのひとつ。特にブルトとターヴの夫婦神のやり取りは絶妙。無論、大笑いするところです。

  • グレート・ジョイ
 「シリの海」思い出した。

  • 眠らない島
 この辺から文化人類学的な考察が増えてくる。哲学者とイモリの違い。

  • 海星のような言語
 言語学ではどうしてもレムには適わないだろうに…なんて斜交いな見方をしながら読んでたんだが
どうしてどうして、レムは言語に情報理論的な構造を目指したのに対して、あくまでも女史はコミュニケーションツールとして
言語を構築していて、実に驚いた。それにしてもどうしても分からないのは、日本語で
「星明りの下でコオロギが鳴いている」と「交差点でタクシーが渋滞に陥っている」をひとつの語でどう表すのか?ということで。

  • 謎の建築物
 「ヴェクシの怒り」「渡り~」そして「夜を通る道」と基本的に同じスタンスで別の衝動を描く。世界観構築技術は凄い。

  • 翼人間の選択
 マイフェイバリットNO.1。っていうかこれを読みたいがためにこんな夜中までぶっ通しで読んでたんですはい。
自分も人間が飛ぶためのどんな設定が必要かかなり考えた時期がありましたよ…。

  • 不死の人の島
 この作品群のなかではもしかしたら一番普通の作品かもしれない。昔のホラーなんかでありがちなオチだった。

  • しっちゃかめっちゃか
 途中から女史がマジブチ切れるわけだけど、その辺踏まえてこれは大阪弁に翻訳すると面白かったと思う、残念。

 全体的に訳者の頑張りにエールを送りたくなった。よくよく読むと、この訳者、女性で”まだ”40代だというのに
脳医学関係の翻訳かなりこなしてるわけね、納得。総じて思うにこのタイトルで正しかったようです。

SF作家というのはどうにもいい加減な輩が多くって、大局的なエクソダスだとかハルマゲドンだとかを描くだけ描いておいて
そのあとその世界がどうなったかってーと、一様に「皆滅んだ」か「助かった」か「めでたしめでたし」で終わりがちなんだけど、
ル=グィン女史は、その後のその世界を描くことにしたんだと思う。他の作者たちの無責任を引き取って。
その姿勢は大人だと思う。
ユートピアの限界点を常に突破しようとする姿勢は「オールウェイズ~~」にも通じるものがあるけど、時々失敗してる世界にも
優しい視点で見つめる彼女が素敵だ。決して彼女はあきらめないんだな。

無論10点

闇の左手

434 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 02/11/22 15:35
アーシェラ・K・ル・グィン 「闇の左手」

古本屋で見つけたので。
まだ途中だけど、冒頭、ファンタジー小説かと思いました。自然描写や話の構成がとてもイイッ。
テンポ遅いけど。結末が楽しみです。


ちなみに主人公、途中まで女性かと思ってた(w

ロカノンの世界

593 名前: ◆GacHaPR1Us 04/05/08 23:32
ロカノンの世界
アーシュラ・K・ル・グィン(著),小尾 芙佐 (訳),
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4150108234

 言の葉の樹から比べると、そりゃもー瑞々しさ溢れてる、
あんまりハイリッシュを意識しないでただただ、
「あたしゃー ファンタジーが描きたいのよ!なにさ!」って感じで
ぐいぐい話進めていく。
本って、その人が書いていたその年齢をそのまま残しておくタイムカプセルみたいだ。

最後にレンズマンっぽい設定で敵を倒すってのが戴けないけど、
この設定はその後のハイリッシュユニバースでも時々顔を出してるよね、
だから許そう、


9点
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