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アーヴィング・ストーン

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馬に乗った水夫

510 名前:名無しは無慈悲な夜の女王 投稿日:2006/07/07(金) 13:48:27
アーヴィング・ストーン「馬に乗った水夫」
7点
この板的にはジャンルSF成立以前の科学ロマン的諸作品の作者、
一般的には社会主義の立場からジャーナリストの視点を持った
ジョージ・オーウェルに先立つ作家、
世間的には「白い牙」とかの冒険作家ジャック・ロンドンの伝記。

なにこのノンフィクションの皮を被ったマンガ
面白すぎ。
良家の生まれながら頭のネジが外れた母。
博識で貧乏人からは授業料を取らない清廉さを持ちながら、
ジャックの母が妊娠を理由に結婚を迫ると
「インポだから」身に覚えが無いと強弁しハネつける占星術師の父。
なので私生児として出生。
母のネグレクトにより、血のつながりの無い姉
(養父ジョン・ロンドンの二人の連れ子の内年長の方、といっても
当時やっと小学校に上がるような幼さ)と黒人乳母に育てられる。

姉は乳幼児のジャックを連れて登校。
ジャックは貧乏のあまり10代になっても黒人乳母の家に
押しかけタカる。15歳のときその黒人乳母から借りた金で
牡蠣密漁船を買い取る。前船長は16歳の情婦を船に乗せていたが
もれなく船についてきた彼女をめぐって、15歳のジャックと
50男の前船長が果し合い。期待を裏切ることなく負ける50男。
密漁船を操る巧みさを買われて密漁取締官へ転進。

そのあとごく自然な流れで浮浪者生活へ(密漁取締官が?)。
貨車に潜んで鉄道ただ乗り、路上でカツアゲ、
住宅個別訪問で乞食。ある日まったく何にもありつけず、
やっと最後に新聞紙に包まれた何かをもらって開けてみると、
ぐしゃぐしゃのケーキだったので泣く。
つぶれてたからじゃ無くて、ケーキが嫌いだったから。

社会主義に目覚めてその種のサークルに入る。
そこでちょっと良い家柄の青年と知り合い
その姉にあこがれ有名作家になる見込ならと婚約。
しかし娘に粘着する姑(予定)に音を上げ投げ出す。
親友の葬儀で出会ったその未亡人と、ただ家庭が欲しい
という理由だけで結婚。男の子希望だったのに二人目も
女の子だったので夫婦して寝込む。
列車で隣り合わせたというただそれだけの子連れ女性と
関係を持ったり性的自制心まったく無し。
家族で楽しくキャンプしているその場で妻子に別居通告。
離婚が認められると日曜夜に市役所を開けさせ
判事を追いかけまわして2番目の妻との結婚式を挙行。
その結婚でも生まれて来たのは女の子しかも3日で亡くなる。
子供が恋しくなると前妻との娘に許しを請うがキッパリ拒否される。
出版社からの前借で世界一周目指して船を建造。
進水の時、進水台が割れて沈没、海底に突き刺さる。
なんとか修理したが借金のため差し押さえ。
無視して出航、メラネシアでは原住民の村を襲いドレイ狩。
労働搾取をはげしく糾弾する社会主義者であると同時に
北方金髪民族を支配者とする人種思想の持ち主。
病気と借金のためボロ船(その前に経験の無い俄か素人ジャック
の設計が…)を売り払い世界一周中止。船はその後ドレイ狩り船へ。
$70,000(100年前、現在の価値はどれぐらいか知らない)
の巨費と歳月をかけた邸宅(というよりお城)が竣工引越し当日
の未明に全焼。何者かによる放火の疑い。
当時の借金$100,000。
その年の旱魃で経営していた大農園の作物全滅。
再建をはかりつつも3年後旅行に出る当日モルヒネ自殺…。

なお、巻末の解説では作者の強引な解釈/センセーショナルな語り口/
誇張/事実関係の正確さの程度への疑問/女性蔑視等が指摘されてます。
解説でオチつけるんかいっ!しかし疑問なのは、本文452pも
あるのに養父ジョン・ロンドンの二人の連れ子のうち、妹の名前が
一度も出ないこと。結婚するまでジャックら家族と同居してたハズでは?
彼女の2番目の夫の名がジャックの秘書として登場するのみ。
息子のジョニー・ミラー(ミラーが最初の夫の名字か)をジャックの
DQN母が養子にしてジャックが扶養したりしてるのに。

それよりなお疑問なのは、これもともと文庫NFから出てたやつなのに、
新装版\2,625って何? 見栄えのするハードカヴァでも無く
文庫より重くてページ開けにくいだけの四六判並製なのに凶暴過ぎ。
ブッキングからのサンリオ文庫復刊じゃあるまいし。
文庫の値段も当時からすると(消費者物価上昇率とは
まるで関係無く一本調子で)2倍以上になってるけど、
\1800で出てたCDを紙ジャケ/リマスターで\2700
で再発するレコード会社より何のプレミアムもついて無い分悪質。
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