アリーシャ「わ……私は残る!」
スレイ「え?」
中略
アリーシャ「もちろんもっと一緒に旅をしたい。だが……」
ライラ「スレイさ――」
スレイ「そんなのダメだ!」
アリーシャ「え?」
エドナ「スレイ、言ったはずよ。下手したら死んでいたと」
アリーシャ「私は……君に迷惑をかけてしまうから……」
スレイ「そんなの別れる理由になんてならない! それに迷惑なんて俺もたくさんかけてるよ。だけどアリーシャはいつも俺を助けてくれたじゃないか!」
ミクリオ「スレイ……」
スレイ「それにこのまま君を残していったら、きっと一人でずっと無理する。泣きたくても泣けなくて、弱音を吐きたくても吐けなくて。アリーシャがそんなふうになるなんて絶対に嫌だ」
アリーシャ「しかし……君は導師なんだ。世界の希望なんだ。私なんかよりも世界を優先するべきだろう!」
スレイ「俺の目指す導師は、大切な仲間を絶対に見捨てたりしない!」
アリーシャ「……っ!」
スレイ「ライラ。俺に答えを出してほしいって言ったよね?」
ライラ「はい」
スレイ「俺は仲間を見捨てるなんて答えは出さない。俺の力不足で仲間が悲しむなら、なんとかして悲しまずにするようにする!」
エドナ「……どうやってなんとかするのよ?」
スレイ「……きっと何とかする! 絶対に何とかなる!」
エ「……どうやってなんとかするのよ?」
ス「方法はある!」
ア「え?」
ス「アリーシャと契約したときに従士契約には本来鍵が必要なんだって事をライラに聞いたんだ」
ミ「鍵?」
ラ「はい。導師と従士が従士契約を結ぶさいの鍵です。ですがアリーシャさんとの契約の時はそれがなかったため、鍵抜きで契約を行ったのです」
ラ「それにより起こってしまったのが
従士反動なのですわ」
エ「なにそれめんどくさ」
ミ「その鍵はどこにあるんだい?」
ス「それは……」
エ「……見つからないわけね」
ラ「…………」
ス「でも、絶対に見つける!」
ス「まだひどくなるまで時間があるはずなんだ! そうだよねライラ?」
ラ「はい。それにスレイさんの霊能力の成長に比例して、限界までの時間は延びるはずです」
ア「で、ですが……」
ミ「……アリーシャ」
ミ「スレイの霊能力がなくなった時、僕は何もできなかった」
ミ「ずっと近くにいたのに、声を届ける事もできなかった」
ミ「スレイが自分を見失っていくような気がして、それをただ見ているのが怖かったよ」
ス「ミクリオ……」
ミ「だけど、君がスレイの隣にいてくれた」
ミ「君はあの状況で、スレイのことを第一に考えて、必死で励ましてくれていた。声をかけてくれていた」
ス「うん……」
ス「あの時アリーシャがいてくれなかったら、俺は自分を見失っていたと思う」
ス「もうみんなには会えないんじゃないかって……」
ア「スレイ・・・」
ミ「それを見て僕も勇気付けられたよ」
ミ「だからスレイには……いや」
ミ「僕達には君が必要なんだ!」
ス「そうだよアリーシャ!」
ア「………………」
ア「そのお言葉だけで、十分です」
ア「私が、少しでもみんなの力になる事ができたのなら、それは騎士として……」
ア「一人の人間として、とても嬉しい」
アリーシャが笑うが、それはとても悲しい笑顔
ア「……けど、やはりダメだ」
ス「どうして!」
ア「そんな見つかるかどうかもわからないものに頼って、君に迷惑をかけるわけには行かない」
ス「でも、見つかる可能性はゼロじゃない!」
ア「でも、見つからないかもしれない!」
ア「だから……だから……」
ミ「アリーシャ……」
エ「………………」
ア「だから……私はここで――」
ラ「……っ!」
ラ「鍵なら存在します!」
ス「……え?」
ミ「本当かいライラ!?」
ラ「はい。ローランス帝国の皇都ペンドラゴ。そこにあるペンドラゴ教会神殿にいけば、今も従士契約の鍵が残っているはずです」
ス「それって……天異見聞録に乗ってた」
ミ「なるほど、じゃあそこにいけば」
エ「………………」
ス「どの道ローランスには行くつもりだったんだ。そこに鍵があるって言うのなら」
ミ「ああ、今すぐにでも向かおう!」
ア「だ、だけど……それまで君は……」
ス「きっと何とかなるよ! いや、絶対に何とかする!」
ミ「やれやれ……なんて無茶苦茶な。だけど……」
ラ「はい。とてもスレイさんらしいですわ」
ス「だからアリーシャ!」
ミ「アリーシャ!」
エ「…………好きにすれば? アナタの好きなようにね」
ラ「スレイさんの従士反動はまだ軽い段階です。限界が来る前に鍵を手に入れる事がきっとできます」
ラ「きっと……きっとです……ですから……アリーシャさん!」
ア「どうして……私なんて、足手まといになってしまうだけなのに」
ス「だからそんなこと思ってないって。それにさ、アリーシャと一緒だと俺は楽しいし嬉しいよ。だからこれからも一緒にいたいって思ったんだ」
エ「まぁ……確かに面白い娘よね。いろいろと」
ミ「君はほどほどにしておきなよ」
ス「そんな簡単な理由でいいんだよ。仲間ってそういうものだと思う」
ア「スレイ……」
ミ「仲間……か。そうだね。僕たちはもう仲間なんだから」
エ「ま、こうなると思ってたけど。ワタシもそうだったし。仕方ないわね」
ス「エドナ。今笑ってなかった?」
エ「………………グサグサっ!(傘でミボをつつく)」
ミ「痛っ! 何で僕なんだ!」
ア「ふふっ……」
ス「一緒に行こうアリーシャ。俺は人と天族が幸せに暮らせる答えを探しに。君は戦争を回避する答えを探しに。世界を一緒に回って、いろいろ識って、それぞれの答えを見つけよう」
ア「……なら、私ももっと強くなるよ。従士として君を支えられるように。君の従士だと胸を張っていえるように」
ア「君と共にペンドラゴに行き、鍵を見つけることをここに誓う!」
ス「ありがとう! じゃあ、これからもよろしく! アリーシャ!」手を差し出す
ア「こちらこそ……ありがとう、スレイ」同じく手を差し出して握手
エ「スタスタスタ……バサッ!」二人の間に入って傘を広げる
エ「雰囲気作りすぎ」
ミ「これからも一緒なんだから」
ラ「…………はい、そうですわ」
ス「ちょ、ら、ライラ!」
ア「ライラ様! これは、そういうものではなく!」
ス「ああ、もう! とにかくそういうことで! 行こうアリーシャ、一緒に。目指すはペンドラゴだ!」
ア「うん、一緒に行こう」
スレイ、アリーシャ、ミクリオが歩き出して、ライラとエドナが残る