神奈川県の赤線地帯
このコラムは、神奈川県横浜市と東京都町田市(正確には神奈川県相模原市)に存在する「赤線」と呼ばれる売春宿について書いています。先日、現地に行って撮影してきた写真も載せてあります。明らかにその筋の人々が目を光らせている場所で、見つからないように慌てて撮影したのでピンぼけしていますし、不快に思われる方もいらっしゃるかもしれません。そういった方は最後まで読まずにページを閉じることをお勧めします。
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1月12日、新聞に「横浜市中区黄金町などで売春宿として使われている飲食店を一掃するため徹底的に取り締まる」という、神奈川県警の強い決意のニュースが掲載されていました。京浜急行の黄金町駅~日ノ出町駅周辺のガード下は、知る人ぞ知る赤線地帯となっており、これまでも一斉摘発を何度か行っています。しかし、ほとぼりが冷めた頃になると人々が集まりだし、イタチごっこ状態。その状況を変えるべく、今回は本腰を入れて取り締まっていこうという考えのようです。
赤線とは、GHQが進駐軍兵士の婦女暴行や街娼の横行にたまりかね、日本警察と相談して「ここからここまでの中では売春してもかまわない」と地図に赤い線を引いたことによるもの。昭和33年の売春防止法施行まで日本で売春は合法風俗であり、赤線とはまさに合法的に本番行為をする場所が集まった地帯のことです。
「売春防止法が施行されたのなら、もう存在しないのでは?」と思った方も多いと思いますが、赤線地帯は今でも日本各地に存在しています。関東では横浜の黄金町、川崎の堀ノ内、東京の町田、関西では大阪の飛田新地や松島新地、信太山新地といったところが有名です。ただ、大っぴらに営業すると違法になりますから、表向きは「スナック」や「小料理屋」、「割烹」などの看板を揚げています。
ガラス張りのドアを街路に向け、中には1~2人が掛けられる申し訳程度のカウンターがお飾りとして設置されており、中から女性が前を通りかかる男性を誘っています。もし男性が応じればドアのカーテンを閉めて電気を消し、奥の小さなスペースで本番行為に及ぶという仕組み。横浜や町田では大体20分1万円、短時間で済ませることから別名「ちょんの間(=一寸の間)」とも。
売春婦として働いている女性はまず外国人。フィリピンやベトナム、マレーシアといった東南アジアから来たと思われる女性がほとんどで、ごくたまにロシアや東欧から来たであろう金髪の女性も見かけますし、日本人女性もごく少数いるとのこと。しかし、まず東南アジア系の女性が目につきます。
もちろん私は中に入って体験してきたわけではなく、あくまでも周辺を車で通ってきただけです。ただ、その辺一角だけ空気が重く感じられました。澱んでいると言ったほうが正確かもしれません。その理由を自分なりに考えてみましたが、生活がかかっているからではないかと思います。
ソープランドやファッションヘルスといった合法風俗で働く女性は、生活のためではなくバイト感覚の人が少なからずいます(借金などで仕方なく働いている女性も当然います)。しかし、赤線地帯で働く外国人はまず生活のためと思って間違いありません。体を売って金を稼ぎ、本国に住む家族に送金しているため、もし仕事を辞めれば家族が飢えに苦しむことに。合法風俗にはない重さがあるわけです。合法風俗はピンク色を主体とした外装で、明るいイメージを持つことも多くありますが、赤線地帯は何の飾りっ気もなく、そこも重さを助長しているのかもしれません。
写真1 |
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次に寄ったのが東京の町田。小田急とJRの町田駅から徒歩数分の場所にこの一角があります。最寄り駅は町田ですが、正確には神奈川県相模原市になります。駅からこの一角まで行く途中、川を渡るのですが、そこを渡れば東京都から神奈川県。東京都は条例が厳しいため、このような場所に建てられているわけです。
写真3 |
写真4 |
写真1、2、3は分かりにくいものですが、写真4は雰囲気が伝わりやすいのではないかと思います。毒々しい真っ赤な提灯に黒字で「たんぽぽ」や「蘭」の文字。今時そのような名前の飲み屋はありません。また手前にガラス張りのドアが写っていますが、その中に女性がいます。男性はこの細い通路を通り、女性を「品定め」するわけです。ここではこの2枚を撮影したところで警察官ではなく、刺繍が入ったジャージを着たその筋の男性と目が合ってしまったので即逃げ。心拍数が急上昇したことは言うまでもありません。ちなみに写真に写ってしまった男性は中から出てきたところでした…。
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私がこのような地域のことを知ったのはつい半年ほど前です。偶然、この近辺を車で通りかかった時に一緒にいた友人に教えてもらいました。その時に見た怪しげなネオンとあちこちに止まる黒光りする高級外車(その筋の人のもの)、肌も露な服装で男性を誘う女性の姿は忘れられません。
もちろんこのような現状が良いとは思いませんが、実は悪いとも思っていません。ここでの光景を見ると何が良くて何が悪いのか分からなくなるというのが正直な気持ちです。ただ1つだけ言えることは、丸ビルや六本木ヒルズといった最新の流行スポットで高級ブランドを買い漁ることも現実、生きるために体を売ることも現実ということです。どちらも日本で毎日、繰り返されています。
<参考記事>
http://watainu.net/
(わたくし犬でございます)