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小話「‘時越えの錬金術師’アニエス」

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第18章 「‘時越えの錬金術師’アニエス」

18-1 小話「‘時越えの錬金術師’アニエス」

戦災孤児となったその女の子は、幼い頃に"拾われた"。
彼女のような存在は、このアスガルドにおいて珍しくないから。
今も、そして過去の大戦中も。
そして戦乱は一方で技術の進歩をもたらし、もう一方で人間性の破壊をもたらす。
人間性が破壊されている事を知らずか、それとも知りながらか『正義』『平和』という大義を掲げ、『殺人』という行為を覆い隠す。
人間とはそういうもの。

ミッドガルドの高名な『殲滅軍師ベルザイン』は、多くの孤児を養っていた。
彼の屋敷には、多くの召使いと、それ以上の子供たちが溢れていた。
『戦災孤児を多く集め、育てる。それが国益になる』
それが、彼の表向きの理由だった。
いや、最初は表も裏もなく、それが全ての理由だったのかもしれない。
けれど、最初からそうだったのか、それとも戦乱の狂気が彼を狂わせたのか。
『戦争で生き残る為の教え』は、やがて『効率的に人を殺す術』に変わった。

子供たちを立派な殺人機械に育て上げる。
人為的に肉体を強化し、戦争で四肢を失えばそれを機械化(オートメイル)し、相手を殺す事に精神的快楽を覚えさせる。
オートマターよりも安価で、驚異的な能力を持つ、『ベルザインの子供たち』は戦場では恐怖の代名詞となった。

様々な実験や投薬が為され、"孤児"は"実験材料"に成り下がった。
中には多くの相手兵士を屠る『英雄』になった者も居る。
中には実験に耐えきれず精神的異常をきたし、処分された者も居る。
中には特異な能力を身に付ける者も居る。

それが幸か不幸かは分からない。
『神の子』とさえ言われたその強大な力は、それまでの錬金術の常識を根底から覆すほどだった。
それ以上に人々を驚かせたのは、その若さ。
ゆっくりと成長し、そして肉体のピークにおいて、彼女は老いる事が無くなった。

それが幸か不幸かは分からない。
けれど、多くの人々はそれを妬み、羨ましがった。
そう、『殲滅軍師ベルザイン』さえも。
だから『神の子』は、すぐに『魔神の子』と呼ばれる事になった。
自分に無い長所を持つ者には、嫉妬を抱く。
それが人間だから。

彼女は、何度も切り刻まれ、様々な実験をされた。
けれど、その"不老"の能力は解明されなかった。
そして"不老"が叶わないものだと知った時、男は彼女を殺そうとした。
手に入らないのであれば、それを無いものとする。
人間ならば誰しもが考える事。
それが人間だから。

けれど、彼女は生き延びた。
『ベルザインの子供』たちの中には、"父親"のやり方に付いて行けない者も居たから。
慈悲、愛、仲間意識?それもまた人間だから。


『子供』たち同士で争いが起こった。
忠実に命令に従う者たちと、そうでない者たちとが争った。
その頃の事は・・・あまり記録に残っていないわ。
とにかく、生き残ったのは数人だけだった。
そしてその後、大陸は法王庁によって、一つに統一される事になった。


「・・・それで話は終わり。言ったでしょう?長くなるわりに面白くない話だって。」
高位の国家錬金術師の上着を窮屈そうに脱ぎながら、女性は言った。
未だ20代の中頃といった様子の麗人の整った表情には、わずかに疲れの色が見えた。
椅子に座ると、ウェーブのかかった髪が、わずかに揺れた。
「ええっ?アニエス様!その後、不老の少女はどうなったんですか?」
アカデミーの生徒らしき服を着た女生徒が尋ねる。
「さぁ?戦争で死んでしまったか、法王庁に異端として捕まったか・・・
案外、どこかでまだ生きているのかもしれないわね。」
子供に聞かせる母親のように、アニエスは微笑した。
「いいなぁ!ずっと若いなんて、最高じゃないですか!?」
男子生徒の言葉に、女子生徒が答える。
「私はそうは思わないなぁ。だって、ずっと一人ぼっちでしょう?」
生徒たちは勝手に議論を始めた。
「アニエス様、失礼致します。法王庁の依頼が・・・あなたたち!消灯時間は過ぎていますよ!」
唐突に部屋に入ってきた教師は、生徒の姿を見つけ声を荒げる。
「まあまあ。ごめんなさい。今日は私がこの子たちを呼んだのよ。だから、叱るのならば私にして。」
「アニエス様が、そうおっしゃられるのならば・・・あなたたち、部屋へ戻りなさい。」
アカデミーの教師、キスリングから逃げるように、生徒たちは走り出した。
「お休みなさい!アニエス校長先生!キスリング先生。」
生徒たちは、かばって貰った感謝のサインをウインクにして、部屋を後にした。

「こほん。アニエス様、生徒を甘やかしてはいけませんよ。
ここでは、あなたは国家錬金術師ではなく、校長なのですから。」
キスリングは、わざとらしく咳払いをする。
「くすっ、ごめんなさい。何年か前を思い出していたから。
私に話を聞きに来て、教師によく怒られていた娘を。」
「そ、それとこれとは話が別です!」
何年か前の娘が、顔を赤くしながら反発した。
「くすくす。ごめんなさい。・・・それで、また国家錬金術師への依頼ですか?」
前半は優しい母親の顔で、後半は国家錬金術師の顔でアニエスが言った。
彼女は、国家錬金術師の仕事の方が本業なのだ。
「はい。・・・また異端審問官が派遣されるようですので。」
「分かりました。明後日までには人選しておきます。」
事務的な会話をやりとりしながら、アニエスは内心で呟く。


結局、私のやっている事はあなたと同じなのかもしれない。
人材を育成する振りをして、前途ある有望な人間を死に追いやるのだから。
でも、私は・・・


「・・・様、アニエス様!」
女教師の声で、アニエスは我に返った。
「ああ・・ごめんなさい。考え事をしていました。なに?キスリング?」
「いえ・・・アニエス様がお疲れのご様子ですから・・・。あの・・アニエス様。」
キスリングは一瞬躊躇い、そして話し始めた。
「私、アニエス様に感謝しています。
アカデミーや国家錬金術師制度があるおかげで錬金術師が異端と見られる事も減りましたし、安全に研究が出来る人も増えました。
だから、その、・・あまりご自分を責められては・・・駄目です。
国家錬金術師になった以上、危険は覚悟の上ですし、それ以上に、あなたに救われている人がいっぱい居ます。だから・・」

『父様、私、ベルザイン父様に感謝しています。だから、ご自分をお責めにならないで。』

昔の自分の姿が目の前にあると気が付き、アニエスは苦笑した。
そして、その時の自分がして貰いたかった事を思い出す。
アニエスはゆっくりとキスリングの頭を撫でた。
「アニエス・・・様?」
「ありがとう。元気になったわ。ううん、元気になるように頑張るわ。」
キスリングの表情が、ぱあっと明るくなった。


父様、私はあなたに永い命を貰いました。
それにどちらが本当か分からないけれど、あなたに幸せと不幸せを貰いました。
私はあなたと同じ過ちは犯さない。
少しでも多くの人たちを救いたい。
間違いもいっぱいあると思うけれど、もう少し待っていて下さいね。


国家錬金術師"時越えのアニエス"の激務は、未だ終わらない。

>レス
国家錬金術師になる為の、専門学校、アカデミーとかいう設定を作ってみたり。
錬金術の基礎を学び、わくわくどきどきなファンタジー学園生活が送れるですよ!
細かい設定等は、K村が作って・・・(妄想を他人にぶつけるのはよせ ?俺)
すごく安く、ハリポタに影響された俺。

以前、T塚君の錬金術師に依頼した"堅い女アニエス"をオフィシャルキャラにしようと、
俺の中の何かが叫んだので、書いてみた。
北天時代の彼女は、各地の『ベルザインの子供たち』を殺しながら旅を続けていた、という設定が降りて来ましたが、なにか?
贖罪で、国家錬金術師制度等を作った、ということを書いてみましたが、何か?

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