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メアリ・ジェントル

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Ash #1 : A Secret History

699 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/08/06 04:44
メアリ・ジェントル「アッシュ#1:秘められた歴史」
凄い! これは凄い! 15世紀のヨーロッパ史から突如消えた
「バーガンディ王国」とそこで活躍したとされる女傭兵「アッシュ」に
関して、新文書を発見したラトクリフという歴史学者が、過去の文献と
つきあわせながら、新たな翻訳書を出版する、という設定の外枠の物語と、
その学者が編集者に送る翻訳の中身という形での内側の物語
(女傭兵アッシュを主人公とする15世紀欧州を舞台にした一種の改変歴史
SFファンタシイ)の二重構造で、両者が緊密に絡み合いながら、話が進行する。
この内側の物語は、最初はただの歴史ファンタシイのように見えるが、話が進むにつれ、
「ビシゴス人が北アフリカのカルタゴに作った国が、とんでもないSF的ハイテク兵器で、ヨーロッパを侵略する」
という、むちゃくちゃな話になっていく。
戦術コンピュータの「ゴーレム」、奴隷の交配で製造されゴーレムと
交信するテレパス、占領した領域の太陽を消してしまう技術など、
このカルタゴのテクノロジーがとんでもなさすぎ。
ファンタシイというより、はっきりSF寄りな内容。
しかも、これを取り巻く外枠の物語もとんでもなくて、カルタゴのあった
チュニジアに本物のゴーレムが見つかる一方、歴史書として参照していた
関連文献が、いつのまにかフィクションに分類変更されるなど、
内側の物語も外枠の物語も、何が事実で何が嘘なのか混沌としたまま、
謎が解かれるどころか次第にますます深まっていく……
結局、第1巻では、最後まで「何一つ解決されなかった」(笑)。
ここでやめるのは生殺しで体に悪い。第2巻以下も読むしかないではないか。
こんな変なメタフィクションは、いまだかつて読んだことがなく、
「第1巻」では全く話が完結していないので本来全部読んでから評価すべき
だが、2巻以降への極めて強い期待を込めて、9点で。
(マイナス1点は、第1巻で何も解決しなかった欲求不満分)

私が読んだのは米国版PBでしたが、英国版は同じタイトルで4巻分が
1冊の合本で(というか1冊の長編として)出ているようだ。
そっちを買えばよかった、トホホ……

891 名前: 名無しは無慈悲な夜の女王 04/11/30 21:53:18
Mary Gentle "Ash: A Secret History"読了

失われたバーガンディ王国の謎を紐解く伝説の女傭兵アッシュの
伝記を研究し、新文献を発見し追加して翻訳してまとめた本の合間に、
この本を出す前の翻訳者と編集者の電子メールのやり取りが
挿入されるという構成。
アッシュの伝記の部分は、改変歴史ファンタシイで、人物描写も
ストーリーもしっかりとしていて、それだけでべらぼうに面白い。
ところが、これがただの歴史ファンタシイではないことが
徐々に明らかになる……。
合間に挿入されるメール内容から、このアッシュの伝記に
出てくる遺跡類が、現実に発見され始めたことが分かる。
それは我々の知る歴史と明らかに矛盾する。
調査を進めるうちにこの学者は、この歴史が偽の歴史で
隠された本当の歴史が存在することを感づき始める。
この学者は編集者らと様々な仮説を議論するが、
それを裏切るような新発見が相次ぎ、次第に何が
現実で何がそうでないのかすら、曖昧になっていく。
そして、ある巨大な物理学的、量子力学的アイデアが
全体に仕掛けられていることがわかってくる。
ネタバレになるので、これ以上は書けないのが残念だが、
後半はバリバリのハードSF。
長さといい、面白さといい、変さといい、スケールの
大きさといい、こんな小説は今まで読んだことない。
ファンタシイ好きはハードSF部分に文句をいい、
SF好きはファンタシイ部分を冗長というかもしれないが、
両方好きな者にとっては、1冊で両方を満喫できる
本書は、最高という以外に言葉がありません。

10点
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