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虹村那由多の奇妙な日常-第18編

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私は虹村那由多。M県S市杜王町のぶどうが丘高校に通う高校1年生だ。
現在私は地元のレストラン『トラサルディー』でウェイトレスのアルバイトをしている。
仕事は忙しいが、幼い頃からの顔見知りの店長や一緒にバイトをしている友人と、充実した日々を送っている。
……充実した日々を送っている、はずなんだけどなぁ……


なんか、トラサルディーで垓のアホがバイトしてるんですが。
「で? なんでお前がここにいるんだ?」
「は? んなの決まってんじゃん。『沙○の唄』を買う為だっつーの。姉ちゃんも馬鹿だなぁ」
白い目で見てやった弟にこんな返答をされて、私はどう思うべきなのだろう。エロゲを買う、という欲求をこうもストレートに出せる弟は救いようもなくイカレてる、と思うべきなのか。
それとも、親からもらった金を一切使わず、自分で金を稼いでエロゲを買おうとする弟を妙な点で親孝行なアホだと思うべきなのだろうか。

「いや、変な目で見ねーでくれってば! だってさ、キャッチコピーがすげーじゃんよあれ!
『それは世界を犯す恋』だぜ、『世界を犯す』! クラウザーさんだってやったことないんだぜ!?」
……だからなんなんだ。ってか、伏字にしろよ、おい。そしてショコラも「字がちがうよ~」だなんて突っ込み入れてんじゃない。何でお前がエロゲを知ってるんだ。

「……理由になってないから、それ。大体、この前買ったエロゲとその『○耶の唄』はどう違うのよ。ほら、あのスク水とかなんとかいうやつ」
「わかってねーなぁ、ねぇちゃんは! スクイズは『世界を犯してやりたくなる恋』だろーがよ!」
…………判らん。こいつが何を言いたいのかがさっぱり判らん。エロゲを知らない姉に熱く語るな、馬鹿。

「ハァ、もう何でもいいや。とりあえず仕事の邪魔さえしないでいてくれるんなら」
結局、私はほっとくことにした。ただでさえ「愉快なお客様」相手に日々血道をあげてるんだ、これ以上あれこれ考えてる気力なんてない。
とか思いつつ、
「ねぇねぇ那由多ちゃん、知ってる? 最近、ペリエマンって正義の味方がこの町に現れたらしいよ」
「んにゃ、知らない。どんなのだ?」
「えっとね、確か頭に『DF』ってマークを付けた甲冑みたいな恰好をしててね、空飛んでね、そして争いの現場に現れてね、『争イナド非生産的ナ虚シイ行為ダ。マア、コレデモ飲ンデ頭ヲ冷ヤストイイ』と言って、手にしたペリエを押しつけて帰ってくヒーローなんだって。最近ではファンクラブまで出来てるらしいよ?」
「ペプシマンより役に立たなさそうなヒーローだなぁ、それ。ぶっちゃけ無意味な事しかしてないじゃん」
仕事の合間にショコラと駄弁ってると、不意にドアの外で何かが倒れる音がした。

「ん? なんだろ……って、えええっっっっっっっっっっっ?!」
ドアを開けたら驚いた、なんせ女の子が目を回して倒れてんだもの。うはー、行き倒れだなんて初めて見たぞ、おい。
「だ、大丈夫ですか?!」
あわてて駆け寄ってくるショコラが揺すぶるのに、ようやく意識を取り戻したのか女の子は顔をあげて、
「お、お金は払いますから……、ご飯を食べさせてください……」
と、レストラン相手にわざわざ言うべきでもないことを言い出した。


十分後、念願の料理にありつく彼女の姿があった。なんか、栄養失調以外は特別健康上の問題はないようなので、今回はオーバーな治療はないらしいのがありがたい。垓のアホはバイトのくせにどこにも姿が見えない、あいつ後で〆る。
とか、呑気なことを思っていた私は当然知らない。まさかこの後にあんな地獄が待ってるなんて……。
「わーい、久しぶりのご飯だ、いっただっきまーす! もぐもぐ……、ハムハム……、バリバリ……、ジャバジャバ……、ムヒームヒーでしーでしー……、ティウンティウンティウン……、テケリリテケリリ……、ヤッダーバァアァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア……」

 ちょっ、待てよ。今途中から明らかに飲食時に出るはずのない珍妙な擬音が差し込まれてなかったか? 貧乳具合で心が通い合ってる、どこぞの『まんけん!』一年なんかからしてみれば垂涎モノの擬音だぞおい。
 珍妙な擬音を垂れ流しながらの実にいい食べっぷりに呆れかえって見ていた私だったが、彼女はやっと人心地がついたのか、スプーンを止めて、
「あ、お礼を言うの忘れてた……。えっと、私は米沢って言います。料理が出来ないから、外でご飯を食べようとしたら、行く先々のお店で入店を拒否されて困ってたんです。入れてくれて本当にありがとうございます」
「あー、これはご丁寧にどうも。……けど、入店拒否ってどういうこと? お金はあるんでしょ? それに、コンビニにでも行けばいいじゃない」
「えーと、それには言うに言われぬ事情がありまして……」
と言いつつスプーンを口に運んだ時だった。
ズッガァァァァァァァァアンッ!!と、天から注がれた光線が、跡形も無くショコラを吹き飛ばしたのは。

「まだ死んでないよぉ……、キュウ……」
訂正、跡形はあった。吹っ飛んで床に頭をぶつけただけだった。なら、いいか……いやいやいやいや! よくないから! 何冷静に反応してるんだ私は!

「え? なに、なんなの?!」
 目の前でいきなり同僚がレーザーに吹っ飛ばされて気絶すりゃ、誰だってビビる。私だってビビる。
パニクッた私に米沢さんは、

「あちゃぁ……、やっちゃった……。えっと、これがいろんな店から拒否された理由なんです。
お父さんから遺伝したスタンド、『サテライト・ハドロン』の能力は『摂取したカロリーが一定値を越えると自動的にカロリーを衛星レーザーに変換し、ランダムな位置に射出する』ことなの。
だから、食べると自然と周囲の物をふっ飛ばしちゃって……。
たしか、お向かいの『性感手槍(セックス・ピストルズ)飯店』は店員さんをふっ飛ばしちゃったし、『ドノヴァン』で食べた時は、『ドゥ・マゴ』へとレーザーが射出されて、たまたま居合わせた『AC/DC』の女店員さんをふっ飛ばしちゃったんだっけ。おかげでこの四か所全部出入り禁止になったんだよね」
「チャーハンツ・クルヨーさんと▲様に何やってんのよぉぉぉぉぉぉッ!
もう女医時にスタンド取り替えてもらえよあんた! 柏先生の代わりにロンの飼い主やれよ、けどしつけしないのは勘弁な!
そして今すぐ店の修復代とショコラの治療費(ギャグだから気絶程度で済んでるけどさ)、あとお代払って帰ってください!」

冗談じゃない、んな危険人物の接客なんてお断りだ。矢継ぎ早にまくしたてた私は、次いでトニオさんからも何か言ってもらおうと振り返り、
「ナユタサン、オ客サマハDIOサマ(*DIO:イタリア語で神)デスヨ?」
天使のような笑顔で逆にこっちが諭された……、なんでや。いや、確かにこの人は暴帝的な貫録を発揮してるけどさ。おまけに、私の抗議なんて無駄無駄無駄ァな世界になったけどさ。しかも、お客さんは悪乗りして「すいませーん、お酒とキャビア急いでお願いしますー。スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするみたいにー!」とかぬかしてる。なら、飛行機に乗れよ。うちはレストランだぞコラ。

以下、私が神経をすり減らしながら接客をするところを見てもしょうがないから、その間に起きた被害についていくつか見ていこう。

1.
「『はろー・なすてぃ』ノ能力デヨミガエッタノハトモカク、マサカ『正義ノ味方』ニナルトハナ……。
消滅スルカシナイカナド、ぺりえヲ味ワエルカ否カノ違イデシカナイノダカラ、実ニ余計ナコトデアルトイウニ」
呟きながら、ビルの屋上に立つスタンドはペリエの瓶を取り出し、
ちゅどーん!
瓶だけが跡形もなく吹き飛ばされる。
「……シカタガナイ、モウ一本買ッテクルトシヨウ」


2.
「ん? 億泰、てめーどーしたんだ? しけたツラしやがって」
「……工場がいきなりレーザーで吹っ飛ばされた……」


3.
「でんちー、でんちー、電池はどこでしか~♪」
ちゅどーん!
「ぴきゃぁぁぁっ!」
ドタドタバタバタ
「何!? 何なの?! ……」(゚Д゚)…ポカーソ
「あー……、キャッツ。何があったかしらないけど、ちゃんと直しときなさいよ。
後、今度電池のつまみ食いをしようとしたら殴るからね」
「あらあら、屋根に穴が開いちゃったわね。困ったわぁ」


4.
 桐本琢磨は公衆便所の個室に入り、便座に座っていた。用を足す為に、ズボンはずり下げてあるが、その手には弁当箱と箸が握られている。よせばいいのに、こいつは上から入れるのと下から出すのとを同時にやろうとしていたのだ。
「やっぱり、トイレでの昼食は落ち着くな……。この臭いがたまらないぜ」
ちゅどーん!
突然、光が全身を包むのを感じた。どれ程時間が立ったのであろうか。目が覚めた時、琢磨は目にした。建物と壁が吹っ飛んだ便所跡地で、炭化した弁当箱と箸を手にしたまま、下半身剥き出しのしょうもない恰好で便座に腰を下ろす自身の姿を。頭は、女医時も真っ青の見事なパーマになっている。何があったのか判らず呆然と座り込んでいた琢磨であったが、その時になって付近で遊んでいたらしい幼女が近づいて彼をじろじろと見つめ、
「うわぁ、すっごくちっちゃい!」
鼻で笑って何処かへ駆けていった。幼さは、えてして残酷なものである。
「…………う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」

とまあ、こういう事があちらこちらで起きていたらしい。……そりゃ出入り禁止にもなるわ。
「ありがとうございましたー(二度と来るな!)」
 レーザーに戦々恐々となりながらの接客がやっと終わり、表情を引きつらせながら私は米沢さんを送り出した。さて、塩撒かんとな。

「那由多ちゃん、お疲れさまー。垓くんが賄いのご飯作ってくれたよー!」
「今頃になって起きてくるか……。ショコラ、それ卑怯じゃない?」
「えー、那由多ちゃんはレーザー直撃してないじゃない。そっちの方がよっぽど卑怯だよー!」
 今頃になって意識を取り戻したショコラと軽口を叩きながら厨房に入る。この臭いは、栗ご飯かな? 弟に大盛りにさせた茶碗を手にとっていざ一口……、ん? 栗なんて入ってないぞ?
「あれ? これ、栗ご飯じゃないの? なんか、妙に栗の花の濃厚な臭いがついてる割には普通っぽいご飯だけど……」

 言った瞬間、私は理解した。これは人肉クラスの食べるべき物ではなかった、ということを。なんせ、弟が思いっきり目を逸らしたんだから厭でも解る。
「…………何をした? 今なら、お姉ちゃん怒らないでいてやるけど」
「あー、と。なんつーかさ、その……、わりい! 姉ちゃんが命の危険に怯えながら働いてる間、トイレに籠ってリラックスした揚句、手を洗うのすっかり忘れてた!」

 吐いた。そんなモン食わされて吐かない訳がないだろこのクソボケが!
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ…………………………………………! お前、何してんだこの馬鹿ぁッ!」
「ま、待った待った! 動かしてたのは右手だけ! 俺が米といだのは左手! だからそんなに怒らないでくれって!」
「……で、左手はどうしてた?」
「やだなぁ姉ちゃん、昔から言うだろ? 左手は添えるだけ、って。もちろん、俺のこくまろミルクが変な所に飛び散らないように、亀さんの頭の辺りに」
「余計悪いわぁッ!」
ダボガァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!

本体名―虹村垓
スタンド名―イースタン・ユース(もがれて男性的に再起不能)

本体名―虹村那由多
スタンド名―リトル・ミス・サンシャイン(弟の××入りのご飯を食べた事を知って、精神的に再起不能)

本体名―虹村億泰
スタンド名―ザ・ハンド(勤め先がレーザーで吹っ飛び失業。社会的に再起不能)


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今回使用したスタンド
No.1065
【スタンド名】サテライト・ハドロン
考案者:ID:k+NhkX/kO様
絵:ID:uAMeLwoQ0様


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